学生の「あなん愛」がいっぱい詰まった「おうちdeあなん」プロジェクト

著者
大正大学地域構想研究所 地域支局研究員(徳島県阿南市)
鈴江 省吾

例年、大正大学地域創生学部の2年生は「都市と地方の共生」を掲げ、1年次でお世話になった実習地をPRするため、大学アンテナショップ「座・ガモール(巣鴨)」や都内の各イベント会場等でそれぞれの特産品を販売する「地域マルシェ」を開催してきました。コロナ禍でこのような活動が困難となりましたが、学生たちは知恵を絞り、新しいマーケティング手法「クラウドファンディング」を活用して情報を発信し、返礼品を通して実習地のファンになってもらう「オンラインマルシェ〜ウェブde応援〜」というプロジェクトを立ち上げました。

阿南班でも4名の学生が実習で関わった人や企業、食材に思いを馳せながらこの企画をスタートさせ、支局としても現地に来れない学生のサポートを行いました。まず、学生たちの頭に浮かんだのが「ウト・ウークのハンバーグ」。高校生に地元企業を紹介する「ミライ企業冊子」の取材で出会った店主の木元靖博さんは、地元の食材にこだわり、何世代にもわたって家族で来てくれる店を目指す若き経営者です。実習の最後に「このハンバーグがあったから頑張れた!」と学生が惚れ込んだお気に入りの店でした。もう一つが西地食品の「すだちシロップ」。阿南を都内でPRするために先輩たちが立ち上げた「あなんフェス」の人気メニューで、炭酸水やヨーグルトで割るとすだちの甘酸っぱさが爽快です。

 

8月から、学生たちと共に木元さんとリモートで作戦会議を重ね、ハンバーグをメインに阿南を代表する食材で彩る食卓をイメージした「おうちdeあなん」のアイデアが膨らんでいきました。そして、肉厚で芳醇な椎茸が自慢の「しいたけ侍カレー」。混ぜて炊くだけで筍の香りが広がる「タケノコご飯の素」。阿南の新鮮な魚を凝縮した「じゃこ天」。香りが抜群でいろんな料理を引き立てる「ゆず」。ジャパンブルーとも言われる徳島特産の藍を使った「ハーブティー」。老舗「もみじや」からは阿波和三盆の和菓子とラインアップが揃い、青色LEDで有名な「光のまち阿南」にちなんで~食卓に光を~のサブタイトルも決まりました。

それから、学生が店主に電話をかけて各商品の特色や食品表示、賞味期限、納期などを確認し、「おうちdeあなん」のPR作戦開始です。まずは、写真撮影・・・ウト・ウークに商品を集め、リモートで学生とワイワイガヤガヤしながら撮影しました。そして大学や他の地域と連携しながらECサイトReady forにエントリーして、「学生がお世話になった地域にby返し」・・素敵な合同ポスターも出来上がりました。

 

さらに阿南班では4人が役割分担して独自のFACEBOOK、インスタグラムを開設し「おうちdeあなん」を継続的にアピール。支援をいただいた方には、即座にECサイトにお礼のコメントを投稿して感謝の気持ちを伝えます。また、地元阿南の人にも自分たちの取り組みを知ってもらいたいとメンバーが直訴して、徳島新聞にも大きく掲載されました。

(徳島新聞 2020年11月6日朝刊)

 

そうした努力と商品の魅力が合間って、期限内に目標50セットの支援を受けることができました。いよいよ発送です。学生とリモートでリストを確認し、支援いただいた方に阿南市のことをもっと知ってもらうために自分たちが制作したミライ企業冊子の他、観光や移住に関するパンフレット、またアンケート依頼文を添えます。おしゃれな箱に食材が中で動かないよう緩衝材を使って、仕上げは「おうちdeあなん」の黒いシールを貼って完成です。作業を学生にリモートで実況中継しながら観光物産館の職員にも協力をいただき、12月5日に全て発送を終えました。

 

数日経った頃、1枚の葉書が支局に届きました。「阿南の物産の品をありがとうございました・・・大正大学の若者たちのガンバリを思いながらエールを送ります・・」。

コロナ禍で一度も阿南に来ることもできなかった学生たちですが、支援していただいた人の思いはしっかりと伝わったはずです。今回の貴重な経験を糧として、学生たちと共に新たなチャレンジに取り組んで行きたいと思います。支援をいただいた皆さま、本当にありがとうございました。

2021.03.01