関東地震とはどんな地震だったの?次はいつ来るの?

著者
大正大学地域構想研究所 客員教授
加藤 照之

1923年(大正12年)9月1日に関東地震が発生してから100年。ちょうどよい節目として、今年は関東地震に関連していろいろな防災イベントが企画されているようである。本稿では、この地震がどんな地震だったのか、次の関東地震がいつくるのか、最近の研究成果などを紹介しつつ、我々がどうすべきか、考察したい。

「関東地震」とはどんな地震だったの?

地震が発生したのは午前11時58分、各家庭では昼食の準備をしていたころだったのであろう。当時はまだ竈や七輪などで火を使って炊事をしていたことなどから、多くの場所から火の手があがった。 廣井(2023)によると、東京区部で発生した火災は134件にのぼり、焼失した面積は43.6%に達した。とりわけ悲惨であったのは本所にあった陸軍の被服廠跡に集まった避難民に火災旋風が襲い掛かり4万名に近い方々が亡くなったのである。関東地震では火災による死者が東京都内に集中したため、東京の被害が特に強調されているように感じられる。しかしながら、この地震の震源(破壊が開始した場所)は神奈川県西部にあり、相模湾を中心とする地域が震源域であった(図1)。

図1:大正関東地震による被害(震度)分布と震源断層面

(震源断層面はフィリピン海プレート上面の震源域を長方形で示している.★は破壊の開始点、矢印は破壊の進行方向。(武村,2003,に加筆))

破壊の領域はプレート境界である相模トラフに沿って長さ約130㎞、幅70㎞でマグニチュードが7.9の巨大地震であった。このため、相模湾周辺地域が震度7となり、地震動による被害は神奈川県の方が大きかった。表1は神奈川県、東京都とその他の県の被害の比較を示しているが、火災による死者数では東京都が、住家全壊による死者数では神奈川県が、他県に比べ最大であることがわかる。相模湾沿岸では最大で9mの津波も発生し、多くの死者を記録した。これらを合わせ、関東地震による死者は10万人を超え、日本の歴史上最大の地震となった。

表1:大正関東地震による被害 (諸井・武村,2004)

次の「関東地震」はいつ来るの?

関東地震は相模トラフ沿いに発生したプレート境界型の地震であるが、このような地震は100~数百年程度で繰り返されることが知られている。大正時代の関東地震のひとつ前の地震は、1703年の元禄時代に発生したもので、この地震に関しては建物被害や津波の記録が多く残されており、相模トラフ沿いのプレート型巨大地震であることがほぼ確実である。
元禄関東地震の前の地震はよくわかっていなかったが、最近の研究によって、古文書等の記録や津波堆積物の調査などによって次第に相模トラフ沿いの地震がわかるようになってきた。これらにはかなり不確実なものもあるが、“そうかもしれない”から“かなり確実”と考えられる地震としては、878年元慶(がんぎょう)、1293年正応(しょうおう)、1433年永享(えいきょう)、1495年明応(めいおう)などの地震がある(例えばIshibashi, 2020)。
これらの地震の繰り返し周期は、元慶から大正の地震まで、それぞれ415年、140年、62年、208年、220年となり、平均間隔は209年、標準偏差は±117年となってかなり幅が広い。政府の地震本部では、地震発生の物理過程を加味して「現時点から30年以内に地震が発生する確率」を「確率予測」として用いており、これを用いて「2023年から数えて30年以内に発生する確率」は19%である(Satake, 2023)。上述したいくつかの古い地震にはある程度不確実な地震も含まれているため、これらを除くと上記の「確率予測」の値は10%以下にまで減ってしまう(Satake, 2023)。
これらのことを考えると、次の関東地震が来るまではまだ間があると考えてよいかもしれない。しかしながら、これから数十年を経過するとこの確率は格段に上がってくることが予想される。また、我々を襲う地震は関東地震だけではない。M8クラスよりは小さいがM7クラスの地震が東京を含む南関東で30年以内に発生する地震の確率は70%とかなり高く、いつ起きてもおかしくないだけでなく、起これば場所によっては関東地震よりも大きな被害が出ることが昨年の東京都による首都直下地震の被害想定(2022)でも推定されている。我々としては、首都直下地震に備えることが、さらにその先に発生するであろう次の関東地震に対するよい準備となるに違いない。

文献
廣井悠,2023,関東地震の火災被害に関する教訓とそれから100年後の現代都市に与える示唆,地震ジャーナル,75,43-52.
Ishibashi, Katsuhiko, 2020, Ancient and medieval events and recurrence interval of Great Kanto earthquakes along the Sagami Trough, Central Japan, as inferred from historiographical seismology, Seismol. Res. Lett., 91, 2579-2589, doi: 10.1785/0220200073.
諸井孝文・武村雅之,2004,関東地震(1923年9月1日)による被害要因別死者数の推定,日本地震工学会論文集,4,21-45,2004.
Satake, Kenji, 2023, Recurrence and long-term evaluation of Kanto earthquakes, Bull. Seismol. Soc. Am., XX, 1-16, doi: 10.1785/0120230072
武村雅之,2003,関東大震災,鹿島出版会,139pp.
東京都防災会議,2022,首都直下地震等による東京の被害想定報告書.

2023.09.01