第13回鴨台盆踊りと新たな展開

著者
大正大学 客員准教授
齋藤 知明

巣鴨で最も多世代が集まるお祭り

今夏も大正大学で第14回鴨台盆踊りが開催されます。日にちは7月5日(金)、6日(土)(詳しくは公式サイトをご覧ください)。それに先立ち、今回と続く次回では、1万人もの来場客があった昨年の第13回鴨台盆踊りとその後の顛末を振り返ります。
鴨台盆踊りは、戦前から断続的に実施されてきた歴史ある行事です。2011年から東日本大震災犠牲者の慰霊追悼と地域振興を目的に毎年7月初旬に継続して行われ、昨年で第13回を迎えました(過去の鴨台盆踊りの記事はこちら)。
コロナ禍のため、2020年は完全オンライン、2021年は現地参加者を制限しての現地+オンラインのハイブリッド型で開催しました。2022年は久々の現地開催で、マスク越しながらも12,000人を超える人が来場。市民はお祭り、イベントを欲していました。
そして、昨年は2019年以来マスクもなく飲食の販売もある開催で、2日間で延べ約10,000人が楽しみました。大学で大学生が中心となって運営し、さらには大学生自ら櫓の上や櫓の周りで踊る盆踊りは他に例がなく、親しみやすいお祭りとして地域の子どもたちが積極的に踊りの輪に加わるのが特徴です。
そのような鴨台盆踊りも再開から13年が経ち、さらに新たな局面を迎えました。テーマを「共感・共動・共躍」とし、近年著しく発展を見せているAIに対して、人間しかできないことはないかを学生たちが考えつくしてイベントを企画・運営しました。その上で、大学周辺地域だけでなく、さまざまな地域の団体・学校と連携したことが特筆されます。ここでは、本番と本番後の2回に分けて、第13回の展開について紹介します。

大学生だけで踊りの先導を

第13回での大きな変化は、櫓の上にたち先導して踊るのが学生のみになったという点です。これまで、日本舞踊の先生と地域の盆踊りサークルのみなさまから12年間、盆踊りの指導および先導をしていただいていました。しかし、昨年からはそれらの方々が一線を退かれ、学生が櫓の先導の中心を担うことになりました。
鴨台盆踊りは「サービスラーニング」の後継である「地域プロジェクト」という授業を履修した学生が運営します。他の授業と異なり重複しての履修が可能ですが、第13回の学生は初めて受講した学生が多く、これまで盆踊りを踊った経験も少ないのが現状でした。昨年はこの点が最も大きな不安要素だったのが正直なところです。
しかし、学生たちは特に臆することなく盆踊りを練習し身につけていきました。踊りに関する中心的役割を担う実演管理班を中心に自宅で動画を見ながら学びつつ、週に1度学生たちで教え合う練習会を実施。本番では、学生たちは櫓の上での先導や、周囲で踊る人たちを案内する役などをシフトを組んで展開していました。何度か踊りを間違うことがありましたが、その際は地域の方々に教えてもらい、すぐに持ち直していました。自分たちで課題を見つけて、スケジュールを逆算しながら解決していく様子に、この授業で学んでほしいことが詰まっていたと思います。

万博音頭、関東初披露!

本番の盆踊りの面でもう一つ挙げる今年の特徴は、万博音頭を関東で初披露したことでした。2025年に大阪で開催される大阪・関西万博を盛り上げるために、さまざまな万博音頭がつくられています。第13回鴨台盆踊りでは、第10回鴨台盆踊りから交流を深めている大阪府枚方市の盆踊り団体・スターダスト河内さんが、万博首長連合会主催のもと制作した「#万博音頭 交野節編」が披露されました。
交野節は、関西でよく踊られる河内音頭の原型とも言われ、死者を弔う念仏踊りとして始まったのが起源という説があります。その節や振り付けを基底にして、全国47都道府県の美味しいものを歌詞に詰め込んで、新しく#万博音頭としてつくられました。5月からスターダスト河内さんとweb上で振り付けを練習し、6月には、東京で開催された万博首長連合会の第3回総会にて、一緒に#万博音頭の初披露をさせてもらいました。
一方で、#万博音頭は、全国各地の自治体・地域の特性を歌詞にいれこんで、アレンジすることが可能です。今回は豊島区バージョンをつくろうと学生のなかでチームをつくりました。歌詞をつくるにあたり、豊島区の歴史や文化、自然などを徹底的に調べました。この活動を通して、地域のことを学ぶ大きな機会となりました。「#万博音頭 交野節編 豊島区バージョン」については、こちらの動画をご覧ください。
そして本番では、交流が始まって4年目にして初めて、スターダスト河内さんが鴨台盆踊り会場に直接来場して、一緒に盆踊りを踊りました。さらに、1日目は交野節の生歌、2日目は#万博音頭 交野節編の生歌で盆踊りを踊り、会場の興奮はさめやらぬ状況でした。

高校生や子どもが多かった第13回

もちろんこれまで培ってきた、鴨台盆踊りらしい雰囲気も残った部分もあります。たとえば、高校生の参画。第12回から、大学近隣の高校が出店や舞台パフォーマンスなどで関わってもらいました。昨年は一昨年の3校から5校に増えて、たくさん盛り上げてくれました。
また、小学生や未就学児の子どもたちが多く参加してくれるのも大きな特徴です。これまで1日目はアンコールは特になかったのですが、昨年は子どもたちによって自然に発せられるなど、楽しくて安全安心な夏のお祭りとして定着しているのだと実感しました。
おかげさまをもちまして、第13回鴨台盆踊りは無事終了。しかし、本番だけで終わらなかったのが昨年の大きな特筆される点でした。本番後、鴨台盆踊りは西巣鴨の土地を離れて展開していきます。(次号につづく)

2024.06.03