参加していた自治会等の活動の再開予定が立っていない人は約2割、ボランティア活動では約1割

著者
大正大学 地域構想研究所/社会共生学部 教授
塚崎 裕子

大正大学地域構想研究所は、社会的活動へのコロナ禍の影響を把握するため、昨年12月に調査を実施した。本調査は、コロナ禍前に自治会、町内会などの地縁的な活動やボランティア・NPO・市民活動に参加していた、全国に住んでいる20代以上の男女を対象に、インターネットを通じて実施した。864人(男性430人、女性434人)の方々にご回答いただいた。ここでは、本調査の概要と主な調査結果を紹介したい。
なお、本調査の詳しい結果については、地域構想研究所のホームページに掲載しているのでコチラ(→「コロナ禍の下における社会活動の状況についてのアンケート調査」を公開しました。)をご参照いただきたい。

調査の概要

1.調査の目的

本調査の目的は、コロナ禍が社会的活動に及ぼした影響について把握することである。なお、本調査で対象とした社会的活動は、「自治会、町内会などの地縁的な活動」、「ボランティア・NPO・市民活動」、「スポーツ・趣味・娯楽活動」の3つである。

2.調査対象者

本調査の対象者は、コロナ禍前に次の①、②の活動のいずれか、或いは両方に参加していた、全国に住んでいる20代以上の男女とした。但し、現在もこれらの活動を継続している場合も対象としている。

①自治会、町内会などの地縁的な活動(自治会、町内会、婦人会、老人会、青年団、子供会、消防団など)②ボランティア・NPO・市民活動(まちづくり、高齢者・障害者福祉、子育て、スポーツ指導、美化、防犯・ 防災、環境、国際協力活動など)

本調査の回答者において、コロナ禍前に「自治会、町内会などの地縁的な活動」と「ボランティア・NPO・市民活動」の両方の活動を行っていた人の割合は20.8%、「自治会、町内会などの地縁的な活動」のみ行っていた人の割合は55.0%、「ボランティア・NPO・市民活動」のみを行っていた人の割合は24.2%であった。(図1)
本調査では、調査対象者の条件としていないが、「スポーツ・趣味・娯楽活動(各種スポーツ、芸術文化活動、生涯学習など)」についても質問を行っている。スポーツ・趣味・娯楽活動を行っている人の割合は調査対象者全体の43.4%であった。

図1 調査対象者

3.回収サンプル数

回収サンプル数は、全体で864人であった。男女の内訳は、男性430人、女性434人であった。

4.調査時期・調査方法

本調査は2021年12月にインターネット調査(NTTコムオンライン・マーケティング・ソリューション(株)委託)により実施した。

主な調査結果

1.社会的活動へのコロナ禍の影響

新型コロナウィルス感染症の拡大によって、参加していた社会的活動は影響を受けたかと尋ねたところ、「大きく影響を受け、ほとんど(まったく)活動が行われなくなった」割合は、自治会、町内会などの地縁的な活動(以下、「地縁的な活動」)では57.9%で約6割、ボランティア・NPO・市民活動(以下「ボランティア等」)では48.3%でほぼ半数、スポーツ・趣味・娯楽活動(以下「スポーツ・趣味等」)では42.9%であった。コロナ禍により多くの社会的活動が大きな影響を受け、ほとんど(まったく)活動が行われなくなったことがわかった。とりわけ地縁的な活動において影響が大きかった。

図2 社会的活動へのコロナ禍の影響

2.社会的活動の再開に対する思い

新型コロナウィルス感染症の拡大によって、参加していた社会的活動が「大きく影響を受け、ほとんど(まったく)活動は行われなくなった」と回答した人に、ほとんど活動が行われなくなったときに活動再開についてどのように感じたか尋ねたところ、「早く活動を再開してほしいと感じた」割合は、地縁的な活動は20.3%、ボランティア等は31.4%、スポーツ・趣味等は36.6%であった。一方、「活動を再開してほしいと感じなかった」或いは「活動を再開したいと感じなかった」割合は、地縁的な活動は25.3%、ボランティア等は9.0%、スポーツ・趣味等は8.7%であった。

図3 社会的活動の再開に対する思い

3.社会的活動が行われなくなったことが生活の満足度に与えた影響

参加していた社会的活動が「大きく影響を受け、ほとんど(まったく)活動は行われなくなった」と回答した人に、ほとんど(まったく)活動が行われなくなったことがあなたの生活の満足度に与えた影響について尋ねたところ、「生活の満足度を下げた」割合は、地縁的な活動は29.6%、ボランティア等は47.3%、スポーツ・趣味等は60.9%であった。他方、「生活の満足度に影響を与えなかった」割合は、地縁的な活動は63.1%、ボランティア等は49.5%、スポーツ・趣味等は37.9%であった。

図4 社会的活動が行われなくなったことが生活の満足度に与えた影響

4.社会的活動の今後の見込み

参加していた社会的活動が「大きく影響を受け、ほとんど(まったく)活動は行われなくなった」と回答した人に、今後の活動の見込みを尋ねたところ、「活動再開の予定は立っていない」割合は、地縁的な活動は31.9%、ボランティア等は20.7%、スポーツ・趣味等は20.5%であった。「元の活動の一部のみ行う予定」の割合は、地縁的な活動は23.2%、ボランティア等は20.2%、スポーツ・趣味等は13.7%であった。「活動をやめた」割合は、ボランティア等は6.9%、スポーツ・趣味等は5.6%であった。

社会的活動が「大きく影響を受け、ほとんど(まったく)活動は行われなくなった」と回答した人以外も含めた、コロナ禍前より社会的活動に参加していた人全体からみると、参加していた社会的活動の再開の予定は立っていない或いは参加をやめた割合は、地縁的な活動では約2割、ボランティア等では約13%、スポーツ・趣味等では約1割であった。

多くの社会的活動がコロナ禍により大きな影響を受け、参加していた活動が未だ再開の予定が立っていない人や活動が縮小された人、活動をやめた人も多いことがわかった。再開の予定が立っていない割合においても、特に地縁的な活動が多く、この点でもとりわけ地縁的な活動が大きくダメージを受けていることがわかった。

図5 社会的活動の今後の見込み

5.社会的活動継続のために講じた措置

参加していた社会的活動が「影響を受けたが、何とか活動が継続された」と回答した人に、活動を継続する際に講じた措置を複数回答で尋ねたところ、地縁的な活動では、「飲食や懇親会だけやめて活動を継続」(46.1%)が最も多く、続いて「イベントなどの規模を縮小して活動を継続」(42.9%)、「活動の回数を減らし活動を継続」(42.5%)が多かった。ボランティア等では、「イベントなどの規模を縮小して活動を継続」(43.8%)が最多で、次いで、「十分な感染防止対策を施して活動を継続」(40.3%)が続いた。スポーツ・趣味等では、「十分な感染防止対策を施して活動を継続」(63.4%)が最も多く、「活動の回数を減らし活動を継続」(47.6%)が続いた。社会的活動の継続のために様々な措置が並行して講じられていることがわかった。

図6 社会的活動の継続のために講じた措置(複数回答)

6.まとめ

以上のように、本調査の結果、コロナ禍の影響を受けて、参加していた自治会、町内会などの地縁的な活動がほとんど行われなくなった人が約6割、参加していたボランティア・NPO・市民活動がほとんど行われなくなった人が約半数いることがわかった。また、参加していた地縁的な活動の再開の予定が未だ立っていない人が約2割、参加していたボランティア等の再開の予定が未だ立っていない人・活動をやめた人が約13%にのぼっていることも明らかになった。こうしたコロナ禍による社会的活動の停滞は、地域における支え合い機能や地域の活力の低下にもつながる可能性が高いと考えられる。いったん社会的活動が停滞すると、再開が非常に困難となる。それぞれの社会的活動において、活動の停滞を引き起こさないような工夫や努力が重要である。加えて、活動を継続している事例のとりまとめ・情報提供やオンラインでの活動が続けられるようなスキル習得のための講座の実施など、国や自治体等が中心となって社会的活動に対する支援を行っていくことも必要と考える。

2022.08.01