高度プロフェショナル制度─何が問題なのか

脱時間給導入の是非が争点に

 終盤を迎える通常国会、「働き方改革関連法案」のゆくえに注目が集まる。「高度プロフェショナル制度」(高プロ)という脱時間給導入の是非が大きな争点である。
 「高プロ」は、職務範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象に、残業などの労働時間規制の適用を除外するものだ。対象は、コンサルタントなど高度の分析力、企画力、構想力が問われる職種に限定される。働いた時間ではなく仕事の成果に着目した報酬制度(脱時間給)である。

 労基法は、法定労働時間、法定休日を超えたとき25%以上の割増賃金の支払いを求める。ただ働き手の裁量範囲が広く、専ら企画力、構想力が問われる仕事の場合、こうした時間比例型の賃金では、成果を伴わず賃金支払いだけが嵩むような事態が起こりうる。時間ではなく成果に応じた賃金にすべきというのが雇う側の論理である。
 一方、労働組合や一部野党は、残業代を払わないための制度だと強く批判。改善すべき長時間労働をむしろ助長することになりかねず、法案からの削除を主張する。

対象範囲の拡大には慎重な対応を

 この両者の意見、少し冷静に考えてみると完全に対立的ではない。想定する労働者像にズレがあるからだ。企画力、構想力はどのような仕事でも必要だが、仕事の種類によっては専らそれを問うものがある。そして今、こうした仕事群が拡大しているのは誰もが認めるところだろう。
 高プロは、このような働き方に限って労働時間と賃金の紐づけを外すもので、働き方の新たな選択肢として制度を設ける趣旨は十分理解できる。裁量的な働き方ができる分、その方がありがたいという働き手も少なくないはずだ。

 問題は、対象範囲のなし崩し的拡大への懸念である。労基法の時間比例型の賃金・働き方は、今日でも大多数の労働者にとって大切なルールである。それだけに、不適切な対象範囲の拡大を防止することが重要になる。本人の同意、年収要件(1075万円以上)などは既に法案に盛り込まれているが、国会審議の中で、歯止めの具体的措置についてさらに議論を深めてほしい。

そして最も重要なのは、実際に働いた時間をきちんと把握し、健康を損なうことがないようにすることだ。高プロなど裁量的な働き方ほど、健康確保措置の重要性が高いことに留意したい。

(地域構想研究所 教授 金子順一)

2018.06.01