地方圏市町村における外国人の状況

著者
大正大学地域構想研究所 教授
塚崎 裕子

外国人の受入れについては、一昨年4月から人手不足に対応するための新たな制度が動き出すなど、新局面を迎えている。現在、コロナ禍の下で人の移動が制限され、外国人の入国も限定的となっているが、人口構造の少子高齢化が進む日本において、長期的には外国人の働き手への依存度は今後ますます強まっていくと考えられる。外国人の受入れのこれからを考える一つの材料として、引き続き、地方という軸から日本に住む外国人の状況を考察する。

前回までに、近年の地方圏での外国人の急増は、大都市圏と異なり、主に技能実習生の増加によるものであること、そして、これまで技能実習生が少なかった地域を含め、全国的に技能実習生の活用の度合いは高まっていることを明らかにした。今回は、地方圏 における市町村に焦点を絞り、外国人の状況をより詳細にみていきたい。

地方圏市町村における住民に占める外国人の割合の推移

まず、ここでは、地方圏 1 に属する市町村を規模別に分け、市町村住民に占める外国人の割合の平均の推移(2012年 、2015年、2019年)をみた(図1)。

地方圏の住民に占める外国人の割合は、2012年は0.83%、2015年は0.94%、2019年は1.46%となっている。市町村の規模別に2019年の外国人の割合をみると、最多は10万人以上30万人未満の市町村で1.81%、最少は3万人未満の市町村で1.41%であった。2012年及び2015年においても、外国人の割合は、10万人以上30万人未満の市町村で最も多く、3万人未満の市町村で最も少なくなっている。

地方圏の住民に占める外国人の割合の変化をみると、2012年から2015年にかけて0.11%ポイント、2015年から2019年にかけて0.52%ポイント増えていて、ここ数年の伸びが著しいことがわかる。市町村の規模別でみても、いずれの規模においても、住民に占める外国人の割合が増加しており、特に2015年から2019年にかけての伸長が顕著になっている。2012年から2019年にかけての外国人の割合の増加幅で比較すると、最大は3万人未満の規模が小さい市町村で0.74%ポイント、最小は50万人以上の規模の大きい市町村で0.24%ポイントとなっている。

以上から、3万人未満の規模の小さい市町村は、他の規模と比べ、住民に占める外国人の割合自体は少ないが、外国人の割合の推移をみると増加幅は最も大きく、外国人の割合が急速に伸び、状況が大きく変化していることがわかる。

地方圏市町村における外国人の国籍

次に、地方圏の市町村における外国人の国籍別割合の推移(2012年・2015年・2019年)を市町村の規模別にみる(表1)。

全規模では中国国籍の割合がいずれの年も最も多くなっており、2番目は2012年、2015年はブラジル国籍、2019年はベトナム国籍となっている。しかし、市町村の規模別でみると、外国人の国籍の分布が規模によって大きく異なる状況がみられる。

10万人未満の市町村においては、2019年、ベトナム国籍が中国国籍を抜いて最多の割合となっている。2019年において、ベトナム国籍は10万人以上30万人未満の市町村では4番目、30万人以上では3番目に多くなっているが、10万人以上の規模の市町村においても2015年から2019年にかけてベトナム国籍の割合の顕著な増加がみられる。こうした背景には、前回までに触れたように、地方圏での近年の技能実習生の急増がある。 日本に在留するベトナム国籍の外国人の50.8%(2019年)は技能実習生であり、ベトナムは2016年から中国を抜いて最大の技能実習生の出身国となっている。

3万人未満の市町村においては、2012年、2015年に2番目に割合が多かったのはフィリピン国籍であった。日本に在留するフィリピン国籍の外国人の在留資格をみると、永住者が47.2%(2019年)を占めており、永住権を取得しているフィリピン人も多いと考えられる。

10万人以上50万人未満の市町村においては、2019年も引き続き2番目に多い国籍は、ブラジル国籍となっている。10万人以上50万人未満の比較的規模の大きい市町村においてブラジル国籍がベトナム国籍より多く、10万人未満の比較的規模の小さい市町村においてベトナム国籍がブラジル国籍より多いのは、主に従事している産業の違いによると考えられる。派遣労働者を含め、ブラジル国籍の外国人は大規模な製造業を中心に第2次産業で働いているのに対し、ベトナム国籍の外国人は第2次産業ばかりでなく、第1次産業でも多く働いている 2

50万人以上の市町村については、最大の割合が一貫して中国国籍という点は全規模と同様であるが、2番目に多いのが2012年、2015年は韓国・朝鮮国籍、2019年は韓国国籍となっている。日本に在留する韓国国籍の外国人の63.3%(2019年)は特別永住者であり、この中には特別永住者が多く含まれていると考えられる。

市町村規模別に各年で最も割合が多い国籍と2番目の国籍をみると、10万人以上の市町村では両方とも変化がないが、10万人未満の市町村において2015年に4番目或いは5番目であったベトナム国籍が他の国籍を抜いて最多の国籍になったという大きな変化が認められる。

まとめ

以上より、3万人未満の市町村において、他の規模に比べ、外国人の割合が急速に伸びていることや、10万人未満の規模の市町村において、ベトナム国籍の外国人が他の国籍を抜いて最多となるという大きな変化があったことがわかった。とりわけ規模の小さい市町村において外国人の状況に劇的な変化がみられる。

このような中、気がかりな数値がある。2020年の総務省自治行政局国際室の調査によると、多文化共生の推進に係る指針や計画を策定している自治体は全体で49%であり、特に規模が小さい自治体での策定率が低いことがわかっている。具体的に述べると、2020年現在の多文化共生の推進に係る指針や計画の策定率は、都道府県及び指定都市では100%、指定都市以外の市では71%、区では91%、町では28%、村では14%となっている。外国人との共生のための基本的な方針や計画を欠いたまま、実態のみ急速に変化を遂げ、外国人の状況に行政政策が追いついていない小規模自治体も少なくないことが推察される。

 

1 地域区分としては、三大都市圏のうち、東京圏は、東京都特別区、さいたま市、千葉市、川崎市、横浜市、相模原市及びこれらに対する通勤・通学10%圏(平成22年国勢調査)に含まれる市町村、名古屋圏は、名古屋市及び同市に対する通勤・通学10%圏(平成22年国勢調査)に含まれる市町村、大阪圏は、京都市、大阪市、堺市、神戸市及びこれらに対する通勤・通学10%圏(平成22年国勢調査)に含まれる市町村とし、これら以外の地域を地方圏とした。
 
2 関連した分析として、市町村規模別の外国人の割合に影響を与える要因についての分析(塚崎裕子(2020)「地方圏市町村における外国人の状況と関連施策」(『地域構想』第2号、p5-12、大正大学地域構想研究所))によると、10万人未満の市町村においては、第1次産業就業者数の割合が有意に影響を与えており、3万人以上の市町村においては、第2次産業就業者数の割合が有意に影響を与えていた。

2021.01.15