アイランダー高校生サミットの挑戦

著者
大正大学地域構想研究所 特命教授
山本 繁

サミットの話の前に

大正大学(以下、本学)と公益財団法人日本離島センター(以下、日本離島センター)は、持続力ある離島地域社会の発展と人材の育成を目指し、2021年12月に包括連携協定を締結している。
ご存じの通り、本学は全国112の自治体と連携し、人材育成や社会実装を中心とした地域創生に資する教育・研究活動を行っている。その中でも本学の特色である、地域創生学部の学生等による地域実習の舞台として、佐渡、淡路、奄美などの離島での実績を積んできた経過がある。
一方、公益財団法人日本離島センターは、北海道から沖縄県まで、離島振興関係4法の指定有人島を有する全国136市町村で組織され、離島の自主的・創造的な振興活動の推進、支援に関する事業を行っている。
それまでも両者の協力関係は見られていたが、さらなる連携を深め、離島創生・地域創生に資する活動を共に進めていくために連携協定が締結された。
協定の内容は、離島に係わる調査研究、研修事業、人材育成など、5分野からなる。

昨年度、試行プログラムを実施

協議の末、連携協定後の第1号プロジェクトとして、離島の高校生を対象にした人材育成事業が選ばれた。
そこで、2022年12月11日(土)、両者の共同主催という形で「アイランダー高校生サミット2022」が試行開催された。
当日、北は利尻高校(北海道)から南は八重山高校(沖縄)まで、11校・35名の高校生がオンラインで参加し、島の高校生同士による交流と、島の課題と可能性をテーマにした未来志向のグループワークが行われた。
なお、我々は開催に際し、以下のような効果が期待できるのではないかという仮説を立案していた。

<期待できる効果(仮説)>
①出身地域以外の高校生と出会い、交流することから期待されること

・「離島」を共通点として他者と出会い、繋がれることの実感
・多様な高校生が他の離島にいることを知って生まれる高校生活に対する意欲の向上

②大学生や大学教員と出会い、交流することで期待されること

・高校での学びに対する意欲の向上(高校での学びが大学での学びにどうつながっているのか、など)
・一般的な大学及び大学生に対する理解の深まり、大学進学意欲向上、進路研究

③高校生同士でプロジェクトを企画・発表することから期待されること

・離島が持つ魅力や可能性、離島間で繋がることの意味・価値などに気付く
・高校卒業後に向けた生徒同士のネットワーキング

④その他

・将来、出身地域にUターンし、離島の活性化に貢献する時に役立つ心(マインド)と知識・技術の獲得

試行プログラムでの気付き

事後のアンケートでは、サミットへの事前の「期待度」が「7.17点(10点満点)」であったのに対し、事後の「満足度」は「9.48点(同)」であった。おそらく日本初の試みだったということもあり、参加するまではどのような場なのか想像しにくい面が多分にあったように思われる。その一方で、事後の満足度は大変高いものとなった。
その要因としては、普段なかなか出会うことができない他の離島の高校生との出会いや共創的グループワークから大いに刺激を受けていたことがアンケート結果(記述欄)から伺えた。また、本サミットにディスカッションのファシリテーターとして参画してくれた7名の本学地域創生学部生の貢献がかなり大きく寄与していたように感じている。
このような結果や気付きなどを踏まえ、翌年度から本サミットは試行段階から本格実施段階に移行することになった。

アイランダー高校生サミット2023に向けて

アイランダー高校生サミット2023は、年年度のサミットと比べて、少なくとも3つの点で大きく違う。具体的には以下のとおりである。

<2022年度からの変更点>
①規模の拡大(35名⇒100名)
②日数を倍増(1日間⇒2日間)
③実行委員会形式(高校生・大学生が企画・運営の主体)

特に大きな変更は、③の実行委員会形式を取り入れる点にある。既に2023年春から実行委員は活動を始めているが、昨年度ファシリテーターをつとめてくれた本学の大学生3名に、昨年度のサミットの参加者であった高校生6名、合計9名による実行委員会が立ち上がっている。実行委員長は、新島(東京)で生まれ育ち、現在本学の地域創生学部4年生である菊地琉生さんがつとめる。月2回程度、オンラインで会議を重ねながら、12月のサミットに向けて企画や準備を進めている。

実行委員、東京に集まる~ドキドキの記者会見

そういった中で、この8月には大きなイベントがあった。「東京会議」と「記者会見」である。

実行委員会のミーティングの様子

「東京会議」とは、普段は全国の離島で暮らす実行委員の高校生たちが東京に集い、本学を会場にサミットの準備を一気呵成に進める場である。8月1日から4日にかけて行った。

「記者会見」は、サミットのPRを行うための記者会見で、8月3日に文部科学省の記者室を借りて行った。

文部科学省での記者会見の様子

昨年12月のサミットからオンラインでは何度も顔を合わせてきた実行委員の高校生・大学生たちだったが、初めての対面、しかも3泊4日。そして文部科学省で、多くのメディア関係者を前にして行った記者会見……。
「こんなに楽しいことが人生であるなんて!」
「夢のような時間だった」
とは実行委員の高校生の言葉である。
楽しいだけではなく、成果や手応えもあった様子だった。
例えば、記者会見の成果としては、読売新聞の教育面を始め、既に20を超えるメディアで本サミットが取り上げられた※1。
高校生の親世代である40代以上の大人が企画するよりも、離島で暮らす高校生や離島に愛着がある大学生が企画・実行した方が高校生のニーズ・ウォンツに合ったサミットになるだろうし、サミットを開催するに至るプロセス自体を教育プログラム化できるだろうといったことを考えた結果、実行委員会形式を取り入れることになったが、その狙いはこれまでのところ、とても上手くいっているように感じている。メディア関係者を含む多くの大人が、この動きを応援してくださっているようにも。

今後の展開

9月23日から参加受付が開始され、12月9日と10日の2日間、オンラインでサミットは開催される。本格開催の1年目である。その先の展開は、現段階で2つ考えられる。
1つは、サミットの内容と規模を発展させていくこと。より質の高いサミットを、より大規模に開催する、ということになるだろう。
もう1つは、サミットを起点に、離島の高校生を対象にした他のプログラムを展開していくことである。例えば、私・山本は本学でアントレプレナー教育を担当しており、離島の高校生にアントレプレナー教育を提供するのも1つのアイデアだろう。あるいは、国際交流も1つのアイデアだろう。海外の離島で暮らす高校生と、日本の離島で暮らす高校生が交流する機会を作る、という意味である。
ただし、連携協定による第1号プロジェクトは、まだ端緒に就いたばかりである。様々な方の声を集めながら、着実な次のステップを見つけていければと考えているところである。まずは素晴らしい実行委員に恵まれた今年度のサミットを成功で終わらせたい。

※1 メディア掲載例
北海道新聞デジタル
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/888184
西日本新聞me
https://www.nishinippon.co.jp/item/o/1113909/
47NEWS
https://www.47news.jp/9676869.html

2023.10.16