コロナショックの影響で人口はどう変わったか

著者
大正大学地域構想研究所 教授
小峰 隆夫

総務省は2022年(令和4)4月に、2121年10月1日時点での人口推計を発表した。これによって、2021年の人口の姿がどうなっていたかが判明した。
全体の姿を見ると、これまで進行してきた人口変化が、さらに続いていることが改めて確認される。その理由として、第一に総人口の減少が挙げられる。
2021年の総人口(外国人を含む)は、約1億2550万人で、前年より0.51%減少した。人口が減少するのは、11年連続である。
第二は、高齢化の進展だ。65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は28.9%となった。これは、統計を取り始めた1950年(昭和25)以来の過去最高の数値である。
第三は、少子化の動きだ。2021年の年少人口(15歳未満)は1478万人で、25万人も減少した。こちらは過去最低である。

コロナで出産を控えた結果出生児数は大幅減少に

次にコロナ後の2020年、2021年の動きに注目すると、次のような特徴が見られる。まず、人口の減少テンポが加速した。人口減少数は2020年までは20 万人以下だったが、2020年は40万9000人、2021年は64万4000人へと一気に拡大した。
この人口の変化は、出生数と死亡数の差である「自然増減」と、国境を越えた人の出入りに伴う「社会増減」に分けられる。自然減を見ると、2019年の48万5000人減から、2020年は50万1000人減、2021年は60万9000人減へと減少数が拡大している。これをさらに、出生児数と死亡者数に分けてみると、出生児数は2020年が24万人、2021年は40万人の減少、死亡者数は2020年が8万人の減少、2021年が68万人の増加となった。
新型コロナウイルス感染症による死亡者数は、累計で約3万人だから、死亡者数にはあまり影響していないはずだ。それ故、出生児数には、コロナで出産を控える動きがあったことが影響していそうだ。
では、地域別の人口変化を見てみよう。
人口の増減率を都道府県別に見ると、2021年に人口が増えたのは沖縄県だけであり、その増加率は0.07%である。
残りの46都道府県は、減少となった。2020年には埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、福岡県が人口増加だったのだが、2021年には減少に転じた。東京都が人口減少となったのは、1995年以来、26年ぶりのことである。
この都道府県別の人口増減を自然増減、社会増減別に整理したのが下の表である。

コロナ前との比較のため、2019年も掲げておいた。それによれば、2019年には人口増加が7都府県あったが、2021年には沖縄県だけになった。その沖縄県も2019年は自然増・社会増だったが、2021年には自然増・社会減となった。
2019年には、13の都府県で社会増だったが、2021年には7府県に減った。そのうちネット(正味)での人口増加は、2019年に7都府県あったのが、2021年にはゼロとなった。
その結果、2021年には自然減であり、社会減でもあるという地域が、2019年よりもかなり増えた。地域ごとに見ても、コロナ後の人口の姿が厳しいものとなっていることがわかる。

従属人口指数が高くなると経済的には成長力を低くする

最後に、生産年齢人口について見よう。
生産年齢人口は、15~ 64 歳の層を指す。働いて経済・社会全体を支える年齢層だ。少子化が進展すると、人口ピラミッドの若年層ほど人数が減っていくので、ピラミッドは次第に逆三角形になっていく。
すると、やがては人口に占める生産年齢人口の比率が低下する。これが、本連載でしばしば紹介している「人口オーナス」である。
15歳未満の年少人口と65歳以上の老年人口は、生産年齢人口に支えられているということで「従属人口」と呼ばれている。
この従属人口と生産年齢人口の比率(生産年齢人口が分母)は、従属人口指数と呼ばれている。さらに従属人口指数は、年少人口を分子とする「年少従属人口指数」と、老年人口を分子とする「老年従属人口指数」に分解できる。
前者は生産年齢層が年少人口を支える負担で、後者は老年人口を支える負担となる。この比率が高いほど、生産年齢人口の負担は重いことになる。また、従属人口指数が高いことは、働き手が相対的に少ないことであり、経済的には成長力を低くする。
この従属人口指数を都道府県別に見ると、次のことがわかる。まず、従属人口指数が高い上位5県は、秋田県、愛媛県、島根県、山口県、宮崎県で、これは主に老年従属人口指数が高いことによるものだ。
生産年齢人口に相当する人々が経済力の高い都市部に流出し、残った老年人口を限られた人数で支えなければならないわけだ。
逆に、従属人口指数の低いのは、東京都、神奈川県、愛知県、埼玉県、大阪府である。いずれも大都市圏だ。これらの地域は老年従属人口指数が低いという特徴がある。
大都市圏では生産年齢層が自地域にとどまり、且つ他地域から流入してくる。同時に地方部より高齢化が進んでいない。
こうして大都市圏は、豊富な働き手が集まって経済力が高まり、ますます人を引き付けることになっているのである。

(『地域人』第82号掲載)

2022.11.15