コロナ禍の地域支援活動は、関係人口者で約4割

著者
大正大学地域構想研究所 主任研究員
中島 ゆき

新型コロナウィルスの収束がなかなか見えない中、昨年に引き続き、多くの人の地域間移動が制限されている日常です。

昨年は、積極的に「関係人口創出・拡大」事業に取り組む予定であった自治体も多かったのではないでしょうか。コロナによる影響で直接訪問の交流の実施は難しかったものの、オンライン移住者交流会やオンライン体験ツアーなどで様々な工夫が各地で見られたのも特徴でした。

コロナの影響でも「何らかの関わりを継続している」傾向に

昨年、国交省では関係人口者のコロナの影響についての調査を行っています。それによると、「地域との関わり方に変化はない」が約4割(図表1の)、次いで「地域への訪問の頻度が減少した」が約3割程度(図表1の)という結果になっています。また、「地域との関わりを自粛または休止した」は1割以下(図表1の)という結果です。

この調査からは、訪問の頻度は少なくなっても関わりが継続していること、また、直接訪問を自粛していてもオンラインでの関わりや、クラウドファンディング、物産購入などの方法で地域との関わりを継続している姿が明らかになりました。(図表1の

※出所:国土交通省「地域との関わりについてのアンケート」(直接寄与型、人数ベース) 令和2年9月実施【速報値】より(図内赤〇数字は筆者加筆)
※調査結果は「速報値であり、今後の検討(異常値棄却、定義の見直し等)により、数値を見直す場合がある」ものとのことです。(「 」内 国交省「第3回ライフスタイルの多様化と関係人口に関する懇談会 事務局説明資料」より転載)

コロナ禍の地域支援活動者は、関係人口者で約4割

研究所では、昨年8月にコロナ禍における地域への応援活動についての調査を行いました。前回の記事(コロナ禍など、災害時の応援隊としての「関係人口」を考える)では、災害時支援隊としての関係人口者の活躍が可能性としてもあるのではないかと考えていたため、今回のコロナ禍でどのような行動が見られたのかを知りたかったからです。

その結果、今回のコロナ禍で地域への応援活動を何か行ったかという設問に対し「何かしら行った」と回答した割合は、関係人口者では39.5%、非関係人口者では17.1%と、関係人口者の行動率が高いことがわかりました。(図表2)

ちなみに、具体的にどのような応援活動を行ったかを尋ねたところ、最も多かったのは「特産品や名産品を積極的に購入」で33.0%、次いで「募金をした(クラウドファンディングを含む)」が18.9%など(以下、図表3参照)の結果でした。

「何をしたらいいか、わからない」という関係人口者も

また、同調査では実際の関係人口者30人にヒアリング調査を行いましたが、その際に(図表3)の内容でコロナ禍の応援活動について聞きました。その結果、ほとんどの方は「何らかの応援を行った」と回答いただきました。

一方で、「何もしなかった」との回答も複数聞かれたのですが、詳しく聞くと「とても気にかかってはいるのですが、具体的に何をしたらいいのかがわからない。迷惑になるんじゃないかという気持ちもある」というコメントがあがってきました。

「逆に、地域から〇〇して欲しいです~」といった情報が入ったらどうですか?という問いに対して、「そうなったら、必ず行動すると思います」という回答であったことが印象的でした。

地域からの具体的な・・・・発信。

これがあることは、関係を深めたくても動けない人の背中を押す可能性あるのではないいか、また、どのような具体的な・・・・情報であったら良いのかなど、今回の調査で重要な示唆が得られました。

今年は、情報発信や情報の質についても調査していきたいと考えています。

 

<調査の概要>
調査タイトル:地域との関わりについての調査
調査目的:首都圏居住者の移住意向や地域との関わりに対する意識など
調査対象:東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県に居住する18歳以上の男女
調査方法:インターネット調査
調査実施時期:2020/8/24~26
調査結果:701名が回答、回答者の内訳は以下の通り

※調査結果の詳細報告は2021年3月末頃報告予定

 

1 「日常的な生活圏や通勤圏・通学圏以外で、定期的・継続的に関わり、訪問している地域がありますか。」という設問に対して「ある」と回答した人を関係人口者、「ない」と回答した人を非関係人口者としてクロス集計を行っています。同分類の定義については、国交省調査「地域との関わりについてのアンケート」(令和2年9月実施) の分類に準じている。

2021.01.15