盆踊りでつながる地域と大学の夏

著者
大正大学学修支援センター 専任講師
長谷川 隼人

はじめに-今年も来場者1万超

7月4日(金)・5日(土)に「第15回鴨台盆踊り」を開催し、11,150名の方々にご来場いただきました。開催にあたりご支援・ご協力を賜りました関係者の皆さまに、心より感謝申し上げます。今回は、地域貢献、学生による価値創造、旅する盆踊りの3つの視点から、鴨台盆踊りの特色について紹介します。

真言宗豊山派学生会による太鼓演奏(左上)、当日の様子(右上・左下・右下)

地域に貢献する盆踊り-周辺地域の子育て世代にマッチ

鴨台盆踊りは、地域社会への奉仕活動を通じて学びを深めるサービスラーニングとして、地域に親しまれる盆踊りとして発展してきました。今年度の来場者アンケートからは、30~40代の子育て世代を中心とする幅広い世代、なかでも西巣鴨や滝野川など大学周辺地域にお住みの方が多く訪れていたことが見てとれます。また、運営にあたった学生たちへの感謝とともに、盆踊りを楽しみ、温かく応援してくださる声が多数寄せられました。以下はその一例です。

「去年、そして今年も一生懸命にすばらしい場を企画・おもてなしいただき本当にありがとうございました!子どもも大変喜んでいました。近所在住ですがこのように交流と思い出をいただける大切な場となっています。一期の出会いに感謝とともに学生の皆様のこれからのご活躍とすばらしい未来を心から願い応援しています」

今年度も豊島区および北区からのご後援を賜り、当日は両区長にもご来場いただきました。こうした地域の皆さまからのあたたかなご支援とご協力のもと、地域に愛される一大イベントとして、定着してきたことを実感しています。

学生が価値創造する盆踊り-履修者は約60名

現在の鴨台盆踊りは、サービスラーニングを発展させた「地域プロジェクト」という授業(1・2クォーター、2単位)を履修する学生によって企画・運営されています。今年度は、学部・学科を超えた2年生以上の約60名が履修し、過去最大の規模となりました。
わずか3か月という準備期間の中で、1万人を超える来場者を見込むイベントを成功に導くためには、ミッションの共有、パンフレットの制作、地域への広報活動、Webコンテンツの企画・発信、出店団体の調整、会場環境の整備、協力団体やボランティアとの連携、演目の準備など、多岐にわたるタスクを学生同士が協働して進める必要があります。
履修生は、まず前年度の活動をふり返るところからスタートし、社会的インパクトを高めるためのリサーチを実施します。今年度は、地域との関係をさらに深めるべく、大学周辺の保育園・学校・区民施設・町会を一つひとつ訪問し、広報活動を兼ねたヒアリングを行いました。また、各地の盆踊りの特徴や、効果的なSNS活用の手法についても調査を重ねました。こうした丁寧で多角的なリサーチ活動の積み重ねが、新たな発想と実践的な学びにつながっています。
たとえば、今年度は、飲食需要の分散に向けて近隣飲食店と連携し飲食店マップを作成。外国人来場者向けに英語対応のSNS投稿、大正大学創立100周年に向けた校歌総踊り、アルゼンチンタンゴとコラボしたBon Tangoなど、新たな取り組みがうまれました。同時に、今年度のコンセプトを考えてチラシやパンフレットづくりや広報活動、本学の高大接続事業に参画する高校6校との出店や連携企画の調整、盆踊りの練習や浴衣の着付け、当日の進行準備なども進めていきます(詳細は、前回の研究レポートをご参照ください)。
これら多様なタスクを円滑に進めるには、進捗管理とサポートを担うメンターの存在が欠かせません。今年度もTA(ティーチング・アシスタント 以下TA)1名、SA(スチューデント・アシスタント 以下SA)7名、教職員4名、顧問2名が支援し、学生同士が協働しながら学び合う体制が築かれました。SAにとってもメンターとしての経験は貴重な学びとなる一方、履修生の中からもSAを志すものが生まれます。このように、鴨台盆踊りは学生間の成長と挑戦の循環によって支えられているともいえます。

教職員100人総踊り(左上)、Bon Tango練習風景(右上)、第15回記念企画トークショー(左下)、集合写真(右下)

旅する盆踊り-大阪・関西万博に出場

鴨台盆踊りは、踊りを通して結んだ縁を活かして、様々な場所での活躍の幅を広げてきました(詳細は、これまでの研究レポートをご参照ください)。
今年度は、これまでゲストとしてお招きをしていた大阪の盆踊りチーム「スターダスト河内」に、7月13日(日)の大阪・関西万博「夢洲万博祭り」にお声がけいただきました。このイベントには、鴨台盆踊りを履修する学生と「盆踊りサークル 踊月」の学生が参加しました。
当日はブルーインパルスの飛行のもと、群青の法被をまとった学生たちが1時間にわたり12曲の盆踊りを披露しました。万博会場に東京音頭や巣鴨音頭などが響き渡るなか、笑顔をまじえつつも凜とした姿で踊る学生たちの姿がとても印象的でした。この後も、山形県の「さかた中町盆踊り」や離島の「飛島盆踊り」の企画や実演に関わっていきます。このように、鴨台盆踊りを経験した学生たちは、縁で結ばれたところに旅をして、踊りの力で地域の方々と心を通わせながら、新たな学びとつながりを紡ぎ、そして地域一体に笑顔を提供していきます。今後とも鴨台盆踊りの応援をよろしくお願いいたします。

第15回鴨台盆踊り夢洲Ver.の様子

2025.08.01