先月(4月26日)の総務省からの発表によると、住民基本台帳人口移動報告によると東京の3月の転入超過(※1)が3万3340人になったとのこと。
また、今年の1月には「東京が9カ月ぶり再び転入超過」になったとの発表もあり、これで東京の転入超過が連続3ヶ月。
コロナ禍で地方への人口移動が進み、東京の転入超過に歯止めがかかってきたのではないかという見方が強まっていた中、一転、コロナ前のような転入超過のレベルまで戻るのではないかとの予測もでてきました。
この3月の結果でマクロ的な人口移動の方向性を予見するのは、やや不確かではあります。
一方で、今年の人口移動の結果を待つにはまだまだ先が長い。
ということで、年次結果を待たずにこの3月の月次時点の経年変化を捉えることで、コロナの影響で東京の転入超過は緩和されつつあるのか、あるいはコロナ前に戻ってきているのか。本論では、予見は難しいまでも実体を整理し現状の確認を行ってみたいと思います
まず、東京の転入超過の状況を中期的な統計で確認しています。
(図1)は2012年3月から、最新の2022年3月までの10年間の東京都における転入超過数の推移を示したグラフです。最も人口が移動する3月のみ転入超過数が突出して増加しますが、それ以外は4月9月が若干数が増え、7月12月が若干減るものの、概ね3,000人前後で推移してきたのがコロナ前の傾向です。
(図1)
コロナの影響で数値に変化が最初に現れたのは2020年5月。東京で初めての転出超過となり(転入超過がマイナスになること)、当時ニュースでも大きく報じられていました。記憶に新しいかと思いますが、これは4月7日に東京他7都府県に出された第1回緊急事態宣言の後の動きと言えます。
その後、6月に一時期微増となりますが、7月に転出超過数2,144人と、東京でこれまでにない人口流出がでてから、以降8ヶ月連続の転出超過となる事態が2020年、2021年と続きました。
そこで、着目される3月時点の変化を確認したのが(図2)です。
2013年3月の転入超過数3万808人を100としたときの指標です。
(図2)
この指標でみると、地方創生元年の2015年が128、2020年の136まで微増傾向であり、東京一極集中の是正が一向に進まないと言われた所以です。
対して、緊急事態宣言が何度も出された翌年、2021年は95と急激な減少に転じたのが明らかです。
そして、今年3月は108と2014年以前の水準に戻っています。
今年はコロナ以外にも経済的な影響の大きい出来事が多く、各家庭の生活にも大きな変化がでてくると予想されています。これが居住地域の変化にどの程度影響がでてくるか。このまま、この水準で進むか、あるいはコロナ前の東京一極集中の是正が進まない状態に戻るのか、今後の動きが着目されます。
ちなみに、筆者は本論では東京の転入超過の経年を整理しましたが、これをそのまま地方移住と直接的に結びつけて考えている訳ではありません。専門家の多くは、東京の転出超過の数値は地方移住が促進されているというよりは、近隣三県への移動が増加している結果であり、純粋な地方移住とはいいがたいとの見方も多く、筆者もこの意見に賛同しています。
余談になりますが、地方移住の問題は、統計上のマクロ的な数値を俯瞰しつつ、どちらかというと各地域の具体的で詳細なミクロの数値の把握がより重要になってくると考えています。
筆者は、現在本研究所のシティプロモーションプロジェクトで、地域の関係人口や移住者の実態調査を多く行っています。こうした立場では、マクロの数値を確認・把握しつつ、現場でミクロの視点で調査を進めることで、より様々なことが見えてくると考えており、常々、マクロとミクロの両方を意識したいと思っていることです。
(※1)人口移動の算出について
転入超過数は住民基本台帳人口移動報告により毎月、各自治体の人口の動きが把握されている報告になります。
転入超過とは、市区町村又は都道府県の転入者数から転出者数を差し引いた数で、プラスの場合はその地域は転入超過。マイナス(-)の場合は転出超過を示します。
同報告では、移動者の数を「移動者」「日本人移動者」「外国人移動者」の3分類で計上していますが、本論では「日本人移動者」の数値を用いて現状把握をしました。
多くの報道では、「移動者」を発表しておりますので、若干数値がズレている場合はその違いによります。
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