寺院における新型コロナウイルスによる影響とその対応に関する調査

著者
大正大学地域構想研究所 研究員
小川有閑

コロナ対応に苦慮する寺院

新型コロナウイルス対策として、「三密(密閉・密集・密接)」を防ぐということが掲げられました。三密になる可能性のある多くの業種で営業休止、イベントの中止・延期などの対応が取られましたが、寺院もその例外ではありません。特に3月22日・23日に愛媛県内で執り行われた通夜・葬儀にて集団感染が発生したことは(3月31日に発表)、葬儀・法要という葬送儀礼が三密になる場(感染リスクの高い場)であることを強く意識させる出来事でした。

前回お伝えしたように仏教教団はこうした状況に対して、法要における感染対策のガイドラインを策定・発表をしていますが、個々の寺院でそのすべてに対応できているかというと、実際は難しいのではないかと推察します。どこまで対策を取ればよいのか、戸惑っている寺院は少なくないでしょう。

また、軒並みイベントの中止や延期、縮小開催が決定されているのと同様、葬送儀礼も延期や縮小化がはかられています。コロナ以前から、葬送儀礼の小規模化・簡素化が進んでおり、仏教界からはその傾向を危惧する声が上がっていました。新型コロナによって今はやむを得ないと考えられている葬送儀礼の中止や縮小化が、もしかするとその傾向をさらに強めるのではないかという懸念が新たに生じているようです。

そこで、BSR推進センターでは、コロナ禍のなかで、寺院はどのような影響を受け、どのように対応をしているのか、現状把握と対応策を集約するためのWEB調査を行うことにいたしました。

不安の高まる中での社会的責任

本調査の目的は主に以下の5点となります。

①葬儀等の儀礼の簡略化が進んでいたなかでの今回のコロナ禍によって、今、大きく儀礼が変容する転換点にあるかもしれないという仮説に立ち、コロナによる影響とそれへの対応を把握する。

②宗派ごとにガイドライン等が出されていますが、個々の寺院では感染予防や檀家ケアに苦慮しているのが現実だと思われるので、現時点での実践知・経験知を集約して、それをシェアすることで各寺院の参考にしてもらう。

③同様に現時点で個々の寺院が抱える不安や課題を集約、可視化する。

④檀信徒等を対象とした地味で地道な活動(不安にある人々へのメッセージ発信)こそ個々の寺院・僧侶の社会的責任として収集していきたい。

⑤回答者に追跡調査を実施し、今回の変化・対応、また課題が中長期的にどう変遷していくのかを追っていきたい。

①、②に関しては前項で述べていますが、③はそれ以外にもどのような不安や課題を寺院が抱えているのか収集し、仏教界全体で共有することで、一人で悩むのではなく、みんなで解決策を見出す一助としたいという狙いがあります。④はBSR(仏教者の社会的責任)を考えた際に、どうしても押さえておきたい設問です。不安や苦悩にある人に光明を与えるのが宗教の役割だとすれば、今、出口の見えないコロナ禍への不安、感染の恐怖、錯綜する情報への混乱のなかにある人々に、信仰に基づいた何らかのメッセージを伝えることは、まさしく仏教者の社会的責任と言って良いものと思います。前回、各教団がメッセージを発表していることに触れましたが、実際に教団のHPを確認している檀信徒はどれだけいるのか、その宗派の檀信徒に確実に届いているのか、定かではありません。それよりも、寺院と檀信徒という関係性の中で伝えられるメッセージの方が、確実に届けられることでしょう。⑤は追跡調査を実施してこそ、このコロナ禍が儀礼に与えた影響が見えてくるという考えに基づいています。

危機に向き合うメッセージ

本調査の期間は5月7日から5月27日までとし、地域寺院倶楽部会員や有縁の寺院関係者への調査協力の依頼状送付、Facebook等のSNSによって協力依頼を呼びかけました。結果的に517名もの回答をいただくことができました。選択式の回答は単純集計、記述式の回答は当センターで分類をさせていただき、地域構想研究所のホームページに公開をしておりますので、是非ご覧ください。

回答データからは、法要の延期や葬儀・法要の参列者の減少という形で新型コロナの影響が出ていることが明確に表れました。それと密接に関係する形で、今後、葬送儀礼の簡略化・縮小が進み、法要文化が衰退し、寺離れが加速してしまうことへの不安を回答者の多くが抱えていることも明らかになっています。

一方で、300人以上から、何らかのメッセージを発信しているという回答があり、その内容も不安との向き合い方や、情報に惑わされず、差別をしない心の持ち方を仏教に基づいて伝えるものが多く、各寺院が社会的責任を果たしている様が伝わってきます。不安が高まる社会にこそ仏教・寺院が果たせることがあるという意見も少なからず見ることができ、悲観だけでなく希望も感じることができる結果ではないかと考えます。

 

2020.07.15