コロナ禍など、災害時の応援隊としての「関係人口」を考える

著者
大正大学地域構想研究所 主任研究員
中島 ゆき

「コロナ 支援 通販」のキーワードが急上昇

このコロナ禍の中で、これまで以上に多くの方が何らかの地域支援の行動を起こしています。その代表的なものの一つに「コロナ支援」を目的としたお取り寄せなど、地方商品の購買促進が挙げられます。

ヤフー・データソリューションでは、緊急事態宣言後に「お取り寄せ関連の検索が増加」したという調査結果を公表しています。

注目したいのは、単に在宅によりお取り寄せニーズが増えたというだけでなく「コロナ 支援 通販」というキーワードが急上昇ワードにあがっていることです。
「緊急事態宣言などによって行き場を失った食材、食品を購入したいというニーズ」があったとのことです(同HPより転載)

台風や地震そしてコロナと、毎年発生する災害に対して

今回は、新型ウィルスによる外出自粛という未曽有の事態となりましたが、ここ10年だけをみても、一定期間避難所が開設されるような規模の災害が毎年、日本のどこかで起きています。そのため、災害対策や人々の意識も大きく変わってきていると言えます。
こうした環境下で、人々は自分一人で災害から身を守ることが大変難しいこと、地域の中のコミュニティの重要性、さらに地域間の助け合いの必要性が増してきていることを実感してきているのではないでしょうか。

こうした環境の変化が、「困っている人を助けたい」といった理由で支援行動が喚起され、冒頭で紹介したような「コロナ 支援 通販」検索が上昇することに現れてきているのではないかと考えています。

災害時の応援隊としての「関係人口」の可能性

さて、皆さんはコロナで困っている事業者、地産者などを支援することを目的として、この数か月で通販で買い物をしましたか?
私は、かなり多くの商品を購入しました。その際、まず真っ先に購入したのは友人のお店のお取り寄せ、そして、お仕事を通じて知り合った地域の物産商品です。
私と同じように購入行動を起こした人は多いのではないでしょうか。

今回、この行動を自分自身で振り返り「関係人口」の持つ可能性の広がりを感じました。
以前、この研究レポートで「関係人口」という文言は、この第2期の戦略の中で、「東京一極集中の是正」に向けた取り組みの一つとして新たに明文化されて登場してきたという背景を書きました。
「関係人口」創出に向けた課題と視点について」

「移住した『定住人口』でもなく、観光に来た『交流人口』でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です」(総務省による定義)
このような定義がされている「関係人口」ですが、このコロナ禍において、地域の災害時の応援隊としての「関係人口」という位置づけを、新たに見据えてみることも可能性があるのではないかと思っています。

65.4%の自治体が「関係人口」を戦略の目標に設定している

ちなみに、本研究所で全国の自治体(1741自治体)を対象としたアンケート調査(回収数 710/回収率 40.8%)を3月に実施しました。その中で関係人口の取組みについて聞いていますので、ここで一部をご紹介します。

関係人口に関する取組みを4月から新たにスタートする「2期 地方版総合戦略」(以下、2期戦略)の中で、目標設定として入れたかどうかをたずねたところ、2期戦略を策定し終えた自治体では、65.4%の自治体が「目標設定している」という回答でした。また、これから2期戦略を策定する予定である自治体では、22.7%が「目標設定する予定」と決めており、「未定」が68.0%という結果でした(図1)。

 

また、実際にどのような取組み内容を目標設定としているかをたずねたところ、最も多かったのは「特産品などを応援する制度(※1)」で48.6%、次いで「民泊、農業泊、移住体験など」が33.8%、「会員組織化(※2)」が28.3%という結果でした(図2)。
前述のように災害時の応援隊としての「関係人口」という位置づけで考えた場合、「会員組織化」はその可能性を広げるのに大いに役立つと思われます。これまでは、地元出身者や仕事関連などで関係の深い人に対してふるさと住民票の発行などをすることが会員組織化の代表的な取組みでした。あるいは、現地での割引クーポンを配布することを目的としたファンクラブ会員という取組みも散見されています。
今後は、こうした会員組織化をより深く地域の応援隊として位置づけていくことが重要でしょう。例えば、今回、コロナ支援として通販を購入してくれた人とは、お礼を含めwithコロナとなった後の現地の様子を報告するなど、双方向の関係性が一つ深まる取組みに転嫁していくことが可能そうです。(もちろん既にそのような取組をされている地域も増えてきています。例えば、既にオンライン報告会などの取組みを独自に行っている団体も出てきているます。)
その上で、専用のWEBサイトや案内役(コンシェルジュ)の設置、会報、ニュースレターの発行などを上手く活用していくことで、一連の活動が内容を深め、最終的にはお互いが災害時の応援隊にもなるといった関係性を深める事につながっていく可能性があると考えています。
先の記事(「関係人口」創出に向けた課題と視点について」)では関係人口の深さに言及しています。応援隊として居住地以外の地域との関係の深さを増していくこと。それは、今、日本が全国的に抱えている災害多発の不安感に対して、地域間互助の関係性を構築することにもつながり、今後ますます重要になってくるのではないかと思っているこの頃です。
コロナが落ち着く、地域を移動できる時期になりましたら、このあたりの調査を深めていきたいと思っています。

2020.06.01