仏教教団の新型コロナウイルスへの対応

著者
大正大学 地域構想研究所 研究員
小川有閑

緊急事態宣言を受けて拝観停止

新型コロナウイルスの流行は、私たちが経験したことのない事態となっています。その影響は、生活の様々な分野に及んでいますが、寺院も例外ではありません。今回は仏教教団が教団内外に向けて、どのような対応をしているのか紹介したいと思います。

公益財団法人全日本仏教会のホームページでは、「新型コロナウイルス感染症への加盟団体の対応」を随時更新しています。こちらを見てみますと、多いのは、所属寺院に向けては、教団事務所機能の短縮・休止などの通達、一般に向けては、本山の拝観時間の短縮・停止の案内となります。

教団は包括法人、各寺院は被包括法人という包括関係にあり、各種登録業務が停滞せざるを得ない状況がうかがわれます。また、教団主催の研修会等も軒並み中止・延期となっています。

本山の拝観規制や行事中止は、緊急事態宣言発令前から始まっていましたが、発令後はより厳しい対応となっています。たとえば、京都の知恩院(浄土宗総本山)は、2月28日の時点で、5月までの行事の中止・縮小を発表していましたが、参拝は、予防対策を求めつつも通常通りでした。感染拡大が続く4月12日に、翌日からの庭園拝観の停止や精進料理の提供停止を発表、16日に京都府にも緊急事態宣言が出されたことを受け、26日から当分の間の閉門を決定しました。

このように参拝者の多い、観光名所となっている各本山では拝観停止の対応を取っていますが、町の寺院はどうすれば良いのでしょうか。個別の檀信徒からの法要の依頼は数か月前から決まっていますし、通夜・葬儀は不要不急ではありません。そこで、葬儀や法事に関して、教団から何らかの指針が出されているかを見てみましょう。

法要ガイドラインの作成

早くに指針を示したのは、真言宗豊山派。4月2日、宗務総長と僧侶であり医師でもある2名の豊山派僧侶の3名連名にて、「法要時の新型コロナウイルス感染拡大を防止するための指針」が公開されました。この指針は、全日本仏教会からの「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する葬儀・法要等についてのお願い」(4月7日付)においても、参考にすることが促されていますので、以下、その項目を紹介してみます。

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1. 法要時に檀信徒へマスク持参・着用を厳守してください。
2. 寺院職員の手洗い・手指消毒を厳守してください。
3. 入り口(玄関・本堂等)に手指消毒液を設置してください
*設置不可能な場合は石鹸で手を洗い、30秒以上流水で流す
4. 法要参加者に手洗い・手指消毒を促してください。
5. 同日内に複数の法要を行う場合は、共同使用の部位・物品は1日複数回の消毒を行ってください。
6. 法要終了後の会食は避けてください。
7. 感染リスクを下げるために以下 3つの「密」を避けてください。
① 換気の悪い「密閉空間」を避けるため、30分に1度5〜10分程度の換気を行う。
*換気が不可能な場所では法要を行わないこと。
② 多数の人が集まる「密集場所」を避けるために、収容の50%以内の参加人数を上限とする。
*法要参加者の間隔を1メートル以上確保する。
③ 間近での会話や発声をする「密接場面」を避けるために、対面による会話を可能な限り避ける。
*法話を行う場合一定の距離(2メートル以上)をあけて行うこと。この際、檀信徒はマスクを必ず着用とする。
8.上記事項を説明の上、不安を抱える檀信徒に対して、法要・通夜・葬儀の延期を提案してもよいでしょう。
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法要は数人から数十人と参列者の幅も広く、一律に中止とするのが良いか、迷う寺院も多いと思われます。また、檀信徒の側も、迷う人は多いようです。その点で、豊山派が出したガイドラインは具体的でこれをクリアすれば、法要が可能という判断がしやすいでしょう。「8」の延期の提案を寺からするという項目も、檀信徒への配慮がなされているといえます。一度申し込んだ法要は予定通りしなければいけない、延期や中止は菩提寺に言いにくいと思う檀信徒も少なくありませんから、寺の側から提案することでハードルが下がるはずです。

豊山派のほか、浄土宗(4月9日)、日蓮宗(4月14日)、真宗大谷派(4月17日)が法要・葬儀のガイドラインを発表しています。

危機に向き合うメッセージ

見えないウイルスの脅威は、多くの人たちに底知れぬ不安を与えます。そのような時に私たちはどう日々を生きるべきかと仏教に基づいたメッセージを出している教団もあります。天台宗、浄土真宗本願寺派、臨済宗妙心寺派、曹洞宗、日蓮宗などが、宗務総長や貫主などの名前で発信をしています。緊急事態にある社会に対してのメッセージ発信は、宗教教団の重要な社会的責任ですので、機会をあらためて、どのようなメッセージがどのように発せられたのか確認をしてみたいと思いますが、たとえば妙心寺派はYouTubeで小倉宗俊管長の「新型コロナウイルス感染症に対するおことば」を公開しています。このようにYouTube等を利用したメッセージの発信や法要の配信も今後増えていくことでしょう。すでに法要の配信をスタートしている教団もありますし、個々の寺院でも試みているという話を耳にします。

今回、新型コロナウイルスへの教団レベルの対応状況を見てきましたが、BSR推進センターでは、各寺院レベルではどのような影響があり、どのような対応がなされているのかを調査することにいたしました。その結果については「地域寺院」等で発表する予定です。

2020.05.01