著者
大正大学 地域構想研究所 研究員
小川 有閑
BSR推進センターでは、新型コロナウイルスの流行が寺院活動に及ぼす影響を把握するためのウェブ調査を2021年12月1日から22日にかけて実施した。すでに2020年5月、12月に2回の調査をおこなっているが、1年経ってどのような変化が生じているのか、あらためて報告をしたい。なお過去の調査結果ならびに3回目の単純集計については以下をご参照いただきたい。
■調査結果
・寺院における新型コロナウイルスによる影響とその対応に関する調査①
・寺院における新型コロナウイルスによる影響とその対応に関する調査②
・寺院における新型コロナウイルスによる影響とその対応に関する調査③
■単純集計
・第1回単純集計結果
・第2回単純集計結果
・第3回単純集計結果
定着する小規模化、広がる簡素化
葬儀の変化について1回から3回の結果を比較してみると、「会葬者の人数が少ない」が88%、93%、94%と微増となっている。初めての緊急事態宣言発出中の第1回の調査時は一時的な現象の可能性も考えられたが、長引く感染拡大のなかで、葬儀の少人数化も定着しつつあるように思われる。全国と東京を比較しても、少人数化に差異は見られないことから、新型コロナウイルス感染拡大によって、知人や近隣住民、仕事の関係者を招く一般葬から、家族・近親者のみでつとめる家族葬への移行が全国的に一気に加速したのであろう。コロナ収束後に一般葬に回帰するのか、家族葬が主流になり続けるのか、地域差も考慮に入れながら注視していきたい。
一方、第1回、第2回で地域差が顕著に出た項目が「一日葬などの簡素化が行われている」であった。全国では2回とも41%であったが、特定警戒指定された首都圏(1都3県)と関西(大阪・京都・兵庫)を比較すると、第1回で73%と23%、第2回で80%と27%と大きな差異が見られた。通夜を省略する一日葬などが首都圏で顕著に見られ、関西圏と50%の開きがあったのだ。第3回調査では、全国で51%、1年で10%の増加と目を引く結果となっている。そこで首都圏と関西圏を比較してみると、今回は首都圏80%、関西圏45%となり、その差は35%。関西圏で18%上昇しており、1年で簡素化がかなり進展しているようだ。大阪では一時期、東京を上回る感染者数や死亡者数を出すこともあり、そのような深刻な感染拡大が葬送儀礼の簡素化に影響を及ぼしたとも考えられる。第2回までは顕著に高かった首都圏が変わらないなかで、全国平均が10%上昇しているということは、関西圏をはじめ、首都圏以外の地域でじわじわと簡素化が進展しているということであり、感染拡大が葬送儀礼に及ぼす影響は時間をかけて現れるということでもあろう。
法要でも小人数化が定着か
法要についての変化をみると、葬儀と同様に「参列者の人数が少ない」が3回にわたり90%前後の高い数値を示している。大人数が集まることのリスクが広く認識されるなかで、法要の小人数化も定着していると見てよいだろう。
リスクの懸念という点では、「法事後の会食が少ない」にも影響の大きさが現れている。故人の思い出を共有したり、久しぶりに会う親族の交流の場として、法要後の会食の持つ意味は大きいのだが、飲食時の感染リスクについて強く注意喚起されるに従い、会食を中止したり、持ち帰りの折詰に変更したりする例が増加している。
少人数化、会食減少が進む中で、法要の中止・延期の割合は低下しつつある。これは十分な感染対策をすれば、法要が感染リスクの高い場とはならないということが認識されてきているということであろう。現今の感染状況を考えると、法要の軒数が戻りつつあるということと、少人数化・会食減少は表裏をなすものなのかもしれない。
次回は寺院関係者が檀信徒から受ける相談内容、寺院関係者が抱える不安などについて報告をしたい。