持続可能なまちづくりを目指す~学生インターンシップ事業~

石狩市役所
企画経済部商工労働観光課
商工労政担当
主事 瀬渕 志織

インターンシップのはじまり

石狩市企画経済部商工労働観光課では、平成29年度から道内外の大学生を受け入れ、地場企業活性化に向けたインターンシップ事業を実施しています。

石狩市は札幌市の近隣ということもあり、多くの市民が大型店の利用へ流れてしまうため、個店では新規顧客の獲得が困難なことが商店街としての課題でした。こうした商店街を活性化させるような新たなきっかけを作りたいといった思いから、この事業が立ち上がりました。

平成29年度から3年間は、市内中心部の花川地区にある商店街を活動場所とし、個店での就労体験やヒアリング、商店街の夏祭りでの出店や、個店同士をハシゴするイベント企画といった活動を行います。こうした活動を通して、学生たちが現場の実情を肌で感じることで、課題等を明らかにするとともに、商店街をさらに魅力的にするためのプランを提案しました。

「まちゼミ」実施の様子

活動の中では、「個店同士の関わりが薄い」や「商店街としての情報発信が少ない」などの課題が挙げられました。それらの課題を解決するために、商店街に関わる若者を増やそうと、地元の子どもが商店街に関わる仕組みづくりや、店主が講師となって市民に専門知識を教える「まちゼミ」の実施など、様々なプランが出されました。

これらの提案をきっかけとして、令和元年度より、商店街自らが主体となって「まちゼミ」を実施しています。こうした企画の実施は、新たな顧客の獲得をはじめ、商店街の賑わい創出に寄与しています。

新たなインターンの形へ

令和2年度からは、過疎化や高齢化が進む市内北部の厚田区・浜益区に場所を移し、地場企業の活性化に向けた活動を行っています。

受け入れ先の担い手不足解消にもつなげるため、学生は就労体験を主体として活動します。その中で地域の実情や課題を把握し、若者の視点や発想で課題解決のためのプラン作成を行うというものです。

昨年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により事業を中止しましたが、今年度は、感染症対策を徹底して、大正大学の学生2名を含む、7名の大学生を受け入れました。

学生が地域の状況をより身近に感じられるよう、上記の両地区に2週間ずつ滞在しながら、果樹園での収穫作業や「道の駅石狩」での接客、キャンプ場や海浜浴場での作業など、地域の魅力が溢れる就労先で活動を行いました。

インターンシップの様子(果樹園)

活動を通して、学生たちは「自然環境の良さ」や「人との繋がりが強い、地域内で助け合う文化」といったことを地域の魅力と感じていたようです。逆に課題としては「情報量の少なさ」や「地域の認知度の低さ」、「買い物の不便さ」などが挙げられていました。

本市は平成17年に石狩市、厚田村、浜益村が合併しています。そこで学生たちは、各地域の特色を上手く融合させようと、本市を欧州連合(EU)になぞらえ、3つの地域が個性を保ちながら石狩市全体としての統一感を出すため「IU作戦」を提案しました。

具体的には、廃校を活用した「山村留学」や、道の駅への「観光情報局の設置」、市内3つの地域での周遊を促す「共通貨幣」など、地域の課題や特性を捉えた特色ある提案がなされました。特に「共通貨幣」に関しては、移動距離に応じて割引率が変わるクーポン券を発行するというもので、本市が南北に約70kmと広大であるといった特徴を踏まえた、若者らしい斬新なアイデアに感心しました。

インターンシップ報告会の様子

持続可能なまちづくりを目指す

本事業では、事業者が学生と交流する中で刺激を受け、事業者が自ら主体的に取り組む機運を醸成することで、地域の活性化を図ることを目的としています。

実際に学生からの提案を受け、地域の事業者から「自社のホームページを利用した情報発信をもっと工夫していきたい」、「地域に根付いた経営と地域発展について取り組みたい」、「地域の方々との交流が必要」との声も多く挙がっています。

今後も引き続き、学生から提案された内容をもとに様々な取り組みを行うことで、市内外の老若男女が緩やかに連携する持続可能なまちづくりを進めていきたいと考えています。

インターンシップの様子(道の駅)

2021.10.15