養老 孟司

  • 本屋の店先

    私が大学生だった頃、ということはつまり六十年ほど前、本屋に行くのが楽しみだった。いまでもあちこちの本屋さんの店先が目に浮かぶ。 私は鎌倉で生まれ育ったから…

  • 持続可能性

    生物多様性や持続可能性という総論には反対はないであろう。こういう言葉自体がいわば反対が出ないように創られている。だから国連や政府官庁の用語にもなる。 それ…

  • 新旧の街並み

    江戸末期の横浜の写真を見て、びっくりしたことがある。なまこ壁に瓦屋根、みごとに統一された街並みである。現代のまったくてんでんばらばらと言っていい街並みを見つけて…

  • 後継ぎ問題

    世の中にはどうしようもない問題というのがある。現代の日 本でいえば、まず人口の減少。実際には、人口全体ではなく、十五歳から六十五歳の生産年齢人口の減少である。そ…

  • ファッションという表現

    ファッションには縁もゆかりもない。そう思って生きてきた。 さすがに人前に出る機会が多いから、身なりを放置しておくわけにもいかない。そこで登場するのは女房で…

  • 人それぞれ

    世間並み、人並みという表現がある。日本の世間では、こうした暗黙の標準が生きている。これは暗黙だから、べつに明確な基準として定められてはいない。 五体満足と…

  • 地酒

    地酒はうまい。外国に行くと、とくにそう思う。その土地で飲まれている酒を飲めばいいのである。 チェコに行ったときに、なんとかいう食前酒を飲んだ。名前も忘れて…

  • 図書館とは

    図書館は苦手である。国立国会図書館に手続きをしておけば、仕事上は便利だとわかっている。でもやらない。東京大学の図書館に登録しておけば、昆虫の文献を入手するのに都…

  • 建築の葬式

    昨年、つまり平成30年9月15日、お茶の水の日本大学で「建築の葬式」という行事が行われ、私も参加させていただいた。ネットを見れば詳細はわかると思うが、簡単な趣旨…

  • 歌と記憶

    八十歳を超えると、友人、知人のお葬式が増える。それはまあ、やむを得ない。どうせいずれは当方の順番が来る。 手作業をしていると、耳が空いてしまう。慣れた作業だと…

顧問・教授・研究員