突然ですが、皆さんは“休学”についてどのような印象を持ちますか? 経済的理由、精神的な事情、学習意欲の低下など、ひとえに休学といってもさまざまな背景があります。ですが、私はそのどれにも当てはまらない、「挑戦のために進んで休学を選んだ」タイプです。行き先は、新潟県南魚沼市でした。
どうも、現在新潟県南魚沼市で地域おこし協力隊として活動している田中晴樹です。兵庫県出身で、島根県海士町を経て大正大学地域創生学部に入学し、大学4年生に進級すると同時に休学し、南魚沼市での活動を始めました。私が大学を休学してまで南魚沼市に移住した理由は、よりリアルな“地域”で挑戦し、憧れの存在に早く近づきたかったからです。

新潟県南魚沼で街歩きをする筆者
“地域コーディネーター”に憧れて、走り出した4時間
私は高校生のとき、とある地域コーディネーターが地域のさまざまな人や情報をつなげてくれたことで、「まちづくり」に深い興味を持ち、自分が日々成長している実感を得ました。これをきっかけに、地域の人と人をつなぐ地域コーディネーターという存在に強く憧れ、自分もそんな存在になって地域で活動したいという想いを持つようになりました。
しかし、大学進学と同時にコロナ禍に直面し、地域での学びや活動の機会が制限されてしまいました。さらに、大学3年生に進級し就職活動が始まっても、自分が憧れる地域コーディネーターになるにはどのような道を進めばよいのかが見えず、不安を感じていました。そんなとき、「もっと現場でコーディネーターとしてのスキルや経験値を高めたい」と思っていた私に、南魚沼市のコーディネーターの方が「地域おこし協力隊に興味ない?」と声をかけてくれたのです。この一言がきっかけとなり、私はその後、わずか4時間で休学を決断しました。
南魚沼市には地域実習をきっかけに何度も訪れており、特に中間支援組織である一般社団法人愛・南魚沼みらい塾と深くつながっていたことから、どのような団体でどのような活動をしているかも理解していました。休学という選択はとても大きく、同級生と一緒に卒業できない寂しさもありましたが、地域内の中高生と地域、首都圏の若者と地域などをつなげる役割を担っている点が、私の目指していた姿と重なったことから、即決することができました。
現場で育つ、私の「やってみたい!」
地域おこし協力隊として一般社団法人愛・南魚沼みらい塾で活動を始め、今年で任期最後の3年目になりました。これまでさまざまな活動に取り組んできました。
例えば、南魚沼市の中高生の「好き」や「やってみたい!」に伴走しながら探究を支援する社会教育事業。また、全国の大学生を対象に、「働く」と「余暇」を地域で体験しながら南魚沼市と関わりを持ってもらう「ふるさとワーキングホリデー」という移住体験プログラムにも携わっています。
さらに、大正大学地域創生学部には「地域実習」という科目があり、地域創生の現場での取り組みを学び、研究に活かす実践的なプログラムが用意されています。私自身もこの実習を通じて南魚沼市と関わりを持つようになり、現在は現地で学生を受け入れる側として関わっています。
このような取り組みの中で、自主的に力を入れてきたのが「情報発信」です。南魚沼市との関わりが、私にとって休学や地域おこし協力隊など、人生を変える大きな転機となったように、私自身の発信を通じて「やりたいことはあるけれど、それを実現する場所が見つからない」と悩んでいる人たちの背中をそっと押すことができればと考えたのです。

南魚沼市の社会教育事業YouKeyプロジェクトの様子
学びは教室の外にもある
地域おこし協力隊として活動を続ける中で、私の中にはさまざまな変化が生まれました。特に実感しているのは、「学ぶ」という行為の意味の広がりです。
大学の講義で得られる知識ももちろん大切ですが、地域というリアルな現場で人と関わりながら悩み、考え、行動することで得られる学びは、また別の次元にあると感じています。
また、休学という選択を通して、「同じ時期に卒業しない」ことへの不安や焦りもありましたが、それ以上に「自分が進みたい道を明確にできた」ことが、今となっては大きな財産になっています。情報やチャンスが溢れる時代だからこそ、自分自身で「何を選ぶのか」を決める力がますます重要だと感じています。

地域実習を現地南魚沼でアテンド中
「究学」という、新しい休学のカタチ
地域おこし協力隊の任期も終盤に差しかかる中、私はこの南魚沼での経験を活かし、今後も地域に根ざした活動を続けていこうと考えています。先日には一般社団法人yukinowaという法人を新たに立ち上げ、移住や観光をテーマに、地域と若者をつなぐ事業をこれからも南魚沼市を中心に取り組んでいきます。
また、この3年間を通して「休学」という言葉の意味も、私の中で大きく変わりました。単に学びを止める“休む”ではなく、自分の関心をとことん深める“究める”という意味での「究学(きゅうがく)」という在り方です。実際、南魚沼では私の後にも休学して協力隊として挑戦する学生が続いており、まさに“究学の聖地”のようになってきています。
現在は大学に復学し、南魚沼での経験を学びに還元しながら、より深い実践と探究を続けています。もしこの記事を読んで、「何かやってみたいけど、一歩が踏み出せない」と感じている人がいたら、ぜひ“現場”に出てみてください。きっと新しい自分と出会えるはずです。

南魚沼で一緒に活動する仲間と(左端が筆者)