石狩市・厚田区での暮らしと未来を見つめる「愛着」

著者
大正大学文学部 3年生
桝田 玲那

8月1日から30日までの間、私は北海道石狩市が実施するインターンプログラムに参加いたしました。長期間のようでいてあっという間に過ぎた1ヶ月、文字通り毎日朝から晩まで大忙しだった1ヶ月を通して、ありがたいことに大変大きなものを得ることができました。

私のインターンは、6月のオンラインによるオリエンテーションから準備が始まりました。食住を保証していただきながら石狩市で暮らす1ヶ月に心からわくわくして応募したはいいものの、参加決定から活動開始までにかけて「市のインターン」という重みに、緊張と不安がないまぜになっていきました。
しかし、活動が始まると、漠然とした不安など感じる暇もなくなりました。

インターンでは、関係各所へのご挨拶と区内見学に始まり、2〜3日ずつ就労体験や課題解決のための活動日、そして休日を過ごしました。活動や生活を通して感じたことをもとに、最後にテーマの課題解決へのご提案を発表するまでが1ヶ月間の流れでした。
就労体験では、厚田産業が管理する厚田海浜プール、厚田キャンプ場、道の駅のテナント「一純」の3か所で受け入れていただきました。夏場に観光客の多い場所で、期間限定雇用のリゾートバイトで人員を補っているとのことでした。確かに現場の割合はリゾートバイトの方が多くを占めているようで、各地を渡り歩く方々の興味深いお話を伺うのも楽しかったです。

美しい厚田の風景

就労体験や事業者の方々への取材を通して発見された課題を活動日に抽出し、どのようなご提案にしていくかを考えるのも重要なことでした。これがとても難しく、市役所の職員の方々のお話を伺い、現状の石狩の行政的なすがたやこれまでの取り組み、今後活用したいものを明確化していきながら方向性を探っていきました。

休日は、インターン生4人で石狩市や札幌市、小樽や定山渓の観光へ出かけました。はじめまして同士ながら幸運なことに波長が合い、毎日面白おかしく暮らすことができました。このインターンで多くの学びがありましたが、それは基盤の生活面に負担がなかったこと、そして尊敬できる3人に囲まれたことの上に成り立ったと思えます。

小樽の街並み

宿泊先である八幡二にて朝と晩にいただくごはんは、毎日驚きと喜びのある本当に美味しい楽しみでした。北海道名産の食材が豪華に使われ、さらに夕食は毎回メニューが異なるので、過ごしているだけで北海道を満喫できるのです。私たちは頭があがりませんでした。

毎日のご馳走

初日に歓迎交流会を開いていただいて以降、市役所の方をはじめ区内見学会で出会った方、就労体験でお世話になった方、みなさんどなたも大変なお気づかいをいただき親切にしてくださいました。バーベキューやカラオケ会、お祭りにお誘いいただいたり、車で遠方に連れて行っていただいたり、一緒に花火をしたりしました。いつもとても居心地のよい空間でした。

花火の思い出

また、取材やお話の中で何度か挙がった「厚田や北海道が好き」という言葉が、今でも心に残っています。フレーズとしてはよくあるものかもしれません。しかし、私にとっては、このインターンにおいてとても強く響くものでした。
それこそが、私が北海道での1ヶ月で得たもののうち、最もお伝えしたいひとつに繋がるものなのです。
石狩市インターン活動の中でたくさんの方に支えていただき、関わっていただき、私は「目の前にいる人々のために、石狩市や厚田区のためになにかしたい、なんとか貢献したい」という気持ちに目覚めました。

恥知らずなことに、私はこれまで人や地域の「未来」のために「どうにかして」力になりたいと本気で思ったことがありませんでした。単純に誰かを喜ばせたいだとか、感謝を伝えたいと行動することはあれども、自分以外を動機に必死になって手を伸ばすことは人生でそうなかったのです。
もしかしたらこれが「自分ごと化」と呼ばれるものなのかもしれません。それは、「自分が動くことでなにかが変わるかもしれない」といわざるをえない立場と、「それなら1番最高に良い結果をもたらしたい」と考えさせられる状況や感情によるものです。
その感情は、厚田の人々と楽しい時間を過ごしたこと、沁みるほどの親切を受け取ったこと、そして住む場所への「愛着」を垣間見たことで動かされた感情です。この情動を知ることができただけで私にとっては、大学生活における大きな収穫であり、大正大学の大学生でよかった、果ては生きてきてよかったと思えるのです。

妥協することなく作り上げた活動報告会は、関係していただいたたくさんの方にお声掛けし、お越しいただきました。みんなで撮った写真や動画を使いメンバーが作ってくれた動画は、思い出が次々に脳裏に浮かぶ素晴らしいものになりました。
ご提案のスライドは、見返すともっと良くしたい点がいくつも見つかります。それに、制度として、あるいは厚田に長く住むという視点として、課題は多くの面から挙げられるでしょう。石狩市や厚田にとって良い一歩になりうるかさえ分かりません。
しかし、このインターンを通して厚田の地域のことが好きな人口が1人増えました。難しいことではありつつも、今回私の得たものをさらに誰かに波及させていくことは、今後のひとつの目標といえるでしょう。

活動報告書

2024.10.01