私の運命を変えた「利尻島」との出会い

東京の利尻島fanから利尻富士町職員へ

利尻富士町企画政策課長 種谷 卓

岩垣みなみさんとは、彼女が大学2年生(跡見学園女子大学・観光コミュニティ学部)のときに本町のプロジェクトで来島した際に面識がありました。

その時は直接会話をする機会はありませんでしたが、ほんのり日焼けし、元気があって活発そうな印象であったことを覚えております。

そんな岩垣さんの利尻富士町への採用が決まったときは、まずは離島という地を職場として選んでくれてありがとうという感謝、そして溢れるバイタリティーと大学で培った知識・経験を離島で存分に発揮してもらいたいという期待を抱きました。

さて、岩垣さんが本町に奉職したときはまだ旧姓の森でしたが、私の課の部下の岩垣という伴侶を得たのも何かの縁と感じております。

岩垣さんは、大学ゼミで身に付けた観光振興のスキルを私が期待していた以上に発揮しており、3年間で既に町にとってかかせない人材として成長しておりますが、これからも先輩という厳しい目で、そして貴重な人材として温かい目で見守っていきたいと思っております。

今回は、そんな岩垣さんの成長した姿をご紹介いたします。
 


 私の運命を変えた「利尻島」との出会い

利尻富士町役場 岩垣 みなみ

私は「言霊」というのを信じていて、自分のやりたいこと・なりたい将来像等は言葉にして人に伝えています。

小さい頃から、雄大な自然とスケールの大きさに惹かれ、北海道での暮らしに憧れていた私は、大学2年の時、学部内で最も厳しいと有名な教授のゼミに入り、卒業後は北海道で暮らしたいと思っていることを常に周囲に伝えていました。

ゼミ活動で忙しくしていた頃、教授から「北海道利尻島でのプロジェクトに参加しないか」とのお誘いを受けました。もちろん二つ返事で承諾。この縁が私の将来を大きく変えてくれました。

私が現在暮らしている北海道「利尻島」は、日本の最北稚内から西へ約52㎞のところに位置する離島です。島の中央には日本百名山に選出された、標高1,721mの独立峰「利尻山」がそびえ立っています。リシリコンブ、ウニ等の海産物にも恵まれ、5月~10月には、利尻山の山頂から稚内や礼文島を望む360度の大パノラマや、青く澄み切った海での体験等、唯一無二の景色を楽しみに多くの観光客が来島されます。冬には利尻山でのバックカントリースキーが人気で、山頂から海に向かって滑る体験はなかなか出来ないと、海外からも観光客が来るほどです。

そんな自然に囲まれた利尻島へ、東京生まれ東京育ちの私が移住を決めるキッカケとなったゼミのプロジェクトでは、羽田空港から飛行機に乗って約2時間、そこから船に揺られて約1時間40分。日本最北の離島「利尻島」にたどり着くまで、決して短くはない道のりからスタートしました。
利尻島に到着し、私の目に飛び込んできたのは、目の前にそびえ立つ利尻山にキラキラと光る真っ青な海や広大な自然。私はその景色に圧倒され、今でもあの時の感動は鮮明に覚えています。

ゼミのプロジェクト

2泊3日という短い滞在期間でしたが、私を利尻島の虜にするには十分な時間だったと思います。滞在期間中は島の方々の案内のもと、サイクリング体験や花折り昆布づくり、美味しい海鮮、島の方々と交流しながらのバーベキュー、至れり尽くせりの3日間でした。特に滞在中に出会った若者の、「島を良くしていきたい。そのためにこんなことをしたいんだ。」という熱い想いは、私の心に深く刺さり、自分もこの島の一員として利尻島を観光で盛り上げていく力になりたいと強く感じました。

帰島するときには、カラフルな紙テープでお見送り。「いってらっしゃい!また来いよ~!」の言葉に、「いってきます!また来るよ~!」と返事を返し、泣きながら利尻島が見えなくなるまで手を振り続けて島を離れました。

利尻島への想いが消えることはなく、翌年にはホテルの短期アルバイトで来島。約ひと月の滞在の中で、島での生活や仕事を実際に経験し、前回よりもさらに多くの島民と関わる機会が増えました。滞在期間中、ホテルでのアルバイトの他に、昆布漁師さんのもとで昆布づくりのお手伝いをさせていただいたのは、東京から来た私にとって、とても新鮮で他では出来ない最高の経験でした。

昆布漁師さんのもとでお手伝い

その後も冬時期を含め数回利尻島を訪れ、狭い地域だからこその人と人との繋がりの深さや、島を想う若者の熱意と活気、自然に囲まれた生活に魅了され移住を決意し、大学卒業後、2019年に利尻富士町役場に就職しました。

役場の仕事と言えば、各種手続きや電話応対、様々な支援等、事務仕事が多いイメージがありましたが、私の所属する産業振興課は、事務仕事ももちろんありますが、夏の時期は外作業が比較的多く、お祭りの企画・運営、島外のイベント参加等によるPR活動や利尻山の登山道整備、観光施設整備のための草刈りや塗装作業等、利尻島に就職したからこそ学べることが多くあり、毎日忙しくもやりがいのある充実した日々を送っています。

町のPR活動

仕事外でも、冬の時期は高齢者宅の除雪ボランティアや、夏には外来種の駆除活動、港の清掃活動等、東京に住んでいた頃には想像も出来なかった様々な経験を仲間と共にさせてもらっています。

利尻島へ移住して3年。利尻島での生活は時間に追われることがなく、自分の時間を大切に過ごす事ができています。生活リズムも安定し、ストレスを感じることも減って心に余裕ができました。

休みの日には友達と一緒に山葡萄狩りや野イチゴ狩り、サイクリング、釣り、サップ等、利尻島の自然を存分に楽しみながら遊んでいます。今年からスノーボードも始め、日々新しいことにも挑戦しています。

サップ体験

最後に、私の暮らす利尻富士町は、地域のみんなで助け合いながら生活する、優しさと活気にあふれた町です。移住者も多く、この町をもっと盛り上げていきたいと活動する若者も多くいます。私はこの町に移住をしたことで、新しい出会いもあり、活動の場、また人間関係の輪も広がったと感じています。何か一つでも違う選択をしていたら出会えなかった利尻島。大学生時代、利尻島に来る機会を与えてくれた大学の教授、また、利尻島への移住を後押ししてくれ、移住後も気にかけてくれる利尻島の人達にはとても感謝しています。

これからも利尻富士町の一員として島を盛り上げていくために、日々様々なことに挑戦していきたいです。
 

2022.02.15