地域に根差した事業、地域人材育成「こども学」

大正大学地域構想研究所は、奄美大島内の自治体である奄美市、宇検村、龍郷町、大和村と広域地域自治体連携コンソーシアムに加盟しており、奄美市中心市街地にて、平成30年2月19日から大正大学地域構想研究所奄美支局を開局して様々な活動を行っています。
(奄美支局 松田美和子より)

地域人材育成「こども学」

その一つとして、地域人材育成を目的とした「こども学」を開催しています。こども学は、小学校3年生から中学3年生のこどもを対象とした人材育成事業で、平成30年4月から12月の期間中に全10講座、計14回を実施し、合計183名の子どもたちが参加してくれました。

相手への思いやりを育む「こころの育成」を目的とした「こころ学」、キャビンアテンダント、アナウンサー等の憧れの仕事体験を学ぶ「キャリア育成」の「しごと学」、遊ぶことで他者との関係性構築や癒しを学ぶ「あそびの育成」を目的にした「あそび学」と、それぞれの目的に合わせて3つのテーマを柱としています。読み書きなどの学びではなく、体験型の学習を中心としています。講師の方々には、奄美大島在住の方を中心に依頼し、企画運営に携わっていただきました。また、募集告知には、連携コンソーシアムの各自治体の教育委員会から学校へ配布のご協力を頂き、開催がスタートしました。

全10講座のうち、その内の一部をご紹介いたします。「こころ学」では、奄美に根付く、目には見えなくても気持ちと気持ちがつながって生まれる『結いの心』からヒントを得て、誰かを思って花束をつくる、フラワーアレンジメントを開催。講師をして頂いたH.O. PROJECTの栄田先生から「お花には命がある。お花をあげるということは、その命をあげるのと一緒だよ。」と、教えてもらいました。講座終了後に、参加した子どもが、落ちていた花を一生懸命に拾っています。不思議に思って聞いてみると『生きているお花を拾っています!』と返事が返ってきて、とても感動しました。講座を開催して一番に感じたことは、こどもの素直さと、その吸収力は大人の想像をはるかに超えるということです。第一回目の事業ということもあり、どんな内容になるのか不安もありましたが、参加したこども達の毎回の反応が、大人の気持ちを払拭してくれました。

 

「しごと学」のプログラムで6月に開催をした、奄美大島のラジオ局「あまみエフエムのおしごと」で、こども達が30分間の生放送を体験しました。「うがみんしょ~らん!」と、元気に奄美大島の方言で「こんにちは」と発声します。事前に準備した原稿を、大きな声で堂々と読み上げる姿は、とても頼もしいです。3回にわたる複数回受講の講座でしたが、最後には「もう、講座は終わりですか?来週はないの?」と質問をしてくる参加者もいたくらい楽しい講座となりました。

 

こども達がより楽しく体験ができるように、講座に合わせて制服を用意しました。例えば、「キャビンアテンダントのおしごと」は、制服もエプロンも本格的です。制服を着ることで、こども達もより真剣になり、「成り切る」ことができます。一つ一つの仕草から姿勢まで、真剣そのものです。参加をしてくれた子どもの保護者の方から「講座から帰ってきたら、将来の夢はキャビンアテンダントになるって話していたよ」と教えてくれました。

 

鹿児島県建設業青年部奄美支部の方々による8月開催「建設のおしごと」では、観光案内の看板を製作しました。「こども達に奄美の地図に残るお仕事を実感してもらいたい」と企画段階から、講師の方々の熱意が発展して、今回の講座実施を鹿児島県庁の担当者まで相談をしてくれました。講師の方々のおかげで予想を超えて内容の濃い講座となりました。講座の当日は、コンクリート車の手配をしていただき、本物の材料を使って、セメントの土台を作ります。看板内にあるイラストは子ども達の作品を掲載。最後は、野外イベントに招待をしていただき、除幕式までしていただきました。現在では奄美市内の公共施設に設置されています。

 

南日本放送の現役アナウンサーの方を講師に招いて開催をした「アナウンサーのおしごと」では、アナウンサー体験をしました。また、南日本放送様に取材をしていただき、ラジオ番組「あまみじかん」で放送、そして当日の講座の様子をニュース番組のトピックスとして近隣地域をはじめ鹿児島県内に放送されました。

 

参加したこども達からは、「いくつも違う講座を参加して、どれも楽しかった」「将来はキャビンアテンダントになりたくて参加した」「家族の誰かが病気になったら看護師さんのお仕事で学んだように優しくいてあげたい」など感想をもらいました。保護者の方からも熱心に空席状況の問い合わせなども頂きました。初年度にもかかわらず、たくさんのこども達が参加してくれたことは、連携自治体をはじめ、ご後援、ご協力をしていただいた講師の方々のおかげです。奄美群島では、高校を卒業して9割近くが進学や就職のために地元を離れます。本事業が、早い段階でのこども達の将来を考えるきっかけに少しでもなれたらと思いを込めて、そして奄美の地域人材として活躍する日を楽しみにしています。

2019.03.15