大正大学地域構想研究所の「地域の支え手」プロジェクトでは、少子高齢化が進む中、地域の支え手をどのように確保していくべきかをテーマに、自治体の少子化対策、女性や高齢者、障がい者、外国人労働者への取り組みがどうなされているのかを調査・研究してきた。昨年度は、全国の自治体の中で、人口増加をしている自治体の首長インタビューを実施する中で、少子化対策をどのように進めてきたのか、そこに共通する理念や考えはあるのかを探った。
1.インタビュー対象
インタビューは、人口によって対象を変え、首都圏など若者の流入などによる社会的現象が人口増加を下支えしている地域は除いた。そして、以下の6つに絞り、現地に赴くか、オンラインでのインタビューを行った。富山県舟橋村(約3000人)、北海道東川町(約8000人)、長野県南箕輪村(約15000人)、山梨県昭和町(約2万人)、岡山県総社市(約7万人)、兵庫県明石市(約15万人)である。
※東川町インタビューは2月28日に実施したため、今回のレポートにはまだ反映されていない。
2.インタビュー結果からわかったこと
(1)人との関わり
富山県舟橋村では、地域の人々の関わりを仕組化したことがある。地域活性にさほど意識が高くない移住者や村外の人でも村と自然とかかわれるような仕組みや仕掛け、サポート体制が確立している。それが地域の図書館や子育て支援センターである。こうした場所に村外からの利用者も多く訪れ、活気をもたらし、近隣からの移住のきっかけとなっている。
(2)子育て支援から教育の充実へ
山梨県昭和町や長野県南箕輪村では、早くからの子育て支援が現在の人口増加につながっている。昭和町は35年前、南箕輪村ではおよそ20年前から保育園料の減免を始めている。口コミでそのことが伝わり、若い世帯の流入が徐々に増えたという。しかし、子育て支援策はすでに飽和状態になっている。そのため、現在は小学校以降の教育に力を入れている。昭和町では、実践的な英語教育や土日の児童館などでの学修サポート体制の充実などが図られている。南箕輪村では、今後体育教育の充実により知徳を伸ばすことや大学受験のための塾代や受験料へのサポートなど独自の支援を打ち出していくという。
(3)誰にでもやさしいまちづくり
岡山県総社市と兵庫県明石市では、子育て支援策に加えて、障がい者やLGBTQ支援にも積極的に取り組んでいる。総社市の片岡聡一市長は、「人口増加の要因は弱者対策」と言い切る。障がい者雇用を進める中で、例えば、発達障害の子どもたちの抱える課題をどう解決しようかという話になる。雇用とその前提となる教育はつながっているのだ。障がい者の方々が住みやすい街は健常者にとっても住みやすい街となり、「暮らしやすさ」を求めて、移住者は増えてきている。
3.まとめ
およそ1800ある自治体の中で、人口増加を続けている自治体は250ほどあるが、そのほとんどが都市部に集中している。一方で、人口3000人でも、15000人でも人口が増えている自治体が存在する。そこには、県庁所在地の隣といった立地条件などだけではない長きに渡る子育て支援だけではない理由があった。「地域の支え手プロジェクト」の詳細な調査結果については、2021年度の紀要に掲載予定であり、そちらもぜひお読みいただければ幸いだ。
あかしこども広場・親子交流スペースハレハレ
左から村木太郎 教授(地域の支え手PJリーダー)、明石市市長、筆者
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