SUPを核に関係人口の拡大を目指す「阿南愛が紡ぐSUPタウン創造事業」

著者
大正大学地域構想研究所 地域支局研究員(徳島県阿南市)
鈴江 省吾

SUPとはStand Up Padleboard(スタンドアップパドルボード)の略称で、ボードの上に立って一本のパドルで海や川辺などの水面を進むスポーツです。サーフィンボードより安定感があり、初心者の方はもちろん子供から大人まで楽しむことができ、近年では体幹を鍛えるエクササイズとしてSUPヨガも女性に大人気となっています。

自然豊かで多様なビーチを有する徳島県阿南市では、SUPで人を呼び込もうとする「SUPタウンプロジェクト」をスタートさせ、昨年は総務省の関係人口創出・拡大事業を活用して、SUP体験会、台湾など外国人を対象にしたモニターツアー、PR動画作成などを実施し、大きな反響を呼びました。

そして、本年度はさらなるステップとして、海や川、地球環境の保全に意識の高い県外のマリンスポーツの愛好家たちとSUPを通じて交流し、地域経済への波及を視野に入れた新しい事業をスタートさせます。本事業は、前年に続いて総務省からモデル団体として採択され、大正大学阿南支局の地域ソリューションパートナー「株式会社すだっち阿南」も阿南市からの委託を受けて運営をサポートすることになりました。

事業のコンセプトは、SUPを通じて生まれた交流を「環境に配慮した持続可能なまちづくりへの協働」へ深化させ、さらに関係人口による創業を支援して地域経済を活性化させようとするもので、数年後のSUP国際大会開催を見据えたプレイベントも実施いたします。

その主人公が、本事業に賛同する県外在住の個人会員ESCA(エスカ:EARTH SHIP CREW ANAN)と市内の事業所ESPA(エスパ:EARTH SHP PARTNER)で、7月から市HPやSNSで募集を開始いたしました。今後、ESCAの皆さんには「空き店舗を活用した街中SUP拠点整備」「ビーチクリーン」「プラスティックゴミ回収」「竹SUP作り」「国内有名選手によるSUP大会」等のイベントに地元SUP愛好者等と共に参加してもらい、継続的に阿南を訪れる熱烈ファンになってもらいます。さらに、「大好きな阿南で事業を起こしたい」という人には中小企業診断士らが創業相談に応じます。

一方でESPAは環境保全活動の実践で企業ブランディングを高め、ESCAを特典サービスで支援したり、ふるさと納税の返礼品への参画を通じて“サステナブルなまち”阿南市の取り組みを全国にPRする一翼を担います。

昨年は大正大学阿南実習生全員がSUPを体験し、一番の思い出となりました。筆者自身も数年前からカヤックフィッシングを始め、阿南の美しい海岸に魅了されています。

コロナウイルスの影響で3密回避が必須となり、働き方を含めて今後のライフスタイルが大きく見直される中、阿南の美しい海でSUPに乗って思う存分に自然と密に触れ合い、さらに地元愛好者と一体となって豊かな環境を保全していこうという「阿南愛が紡ぐSUPタウン創造事業」は大きな可能性を秘めていると感じています。昨年6月に政府が取りまとめた「第2期まち・ひと・しごと創生戦略」にも「関係人口の拡大で、地方へのひと・資金の流れを強化する」の項目が新たな視点として盛り込まれました。SUPフィールドとして、マリンスポーツの仲間づくりの場として、そして新たなビジネスの拠点として、移住先として・・・そんな期待が大きく膨らみます。

阿南支局では今回の事業のみならず、今後は大正大学地域構想研究所の知見を生かした「関係人口の現状や評価、展望の調査研究」などを通じて、阿南市の地域創生をサポートしていきたいと考えています。

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2020.08.03