2月28日、第6回目となる「あなん未来会議」が阿南市役所市長公室で開催されました。
この未来会議は、各分野の専門家が集い、長期的な阿南市の未来や人材育成について意見交換を行う阿南市独自の取り組みで、阿南市と大正大学の連携協定に基づく研究事業の一つとして平成27年にスタートしました。大正大学地域構想研究所阿南支局が事務局として企画運営を行なっており、市内高校生が「まち」や「自分」の未来について意見交換する「高校生ミライ会議」や委員による「特別講演会」も実施しています。
今回は、初参加となるカーレーサーの井原慶子委員をはじめ、東京からTV会議での参加となったスポーツジャーナリストの二宮清純委員とIT企業社長の佐藤道明委員を合わせた8人の委員が出席。大正大学からは山中昌幸専任講師が委員として、さらに地域構想研究所の川井係長と阿南支局長の鈴江が会議のサポートを行いました。
冒頭、表原市長から「本市の持つポテンシャルをどう活かしていくのか、専門的な見地から様々なご意見をいただきたいとの挨拶があり、それぞれの委員から順に発表を行いました。
<徳島県阿南市 市長 表原立磨氏>
佐藤委員から、産業革命と教育の歴史を辿る動画を交え「AIで社会が変わるのに教育は昔と変わっていない。AIが苦手な分野こそ必要な人の力。欧米で注目される科学的根拠に基づいたSEL教育」。二宮委員からは、「オールインワンのスポーツ施設の合理性と今回浮き彫りになった感染リスク。ラクビーW杯のワンチームに込められた補欠・非正規という言葉の意味。地域愛で人口流出を阻止するスポーツクラブの力。企業とスポーツの融合」。JALの坂本委員からは「人を呼ぶにはまず地元の人が喜ぶまちづくりを。旅の目的となりうる宿泊施設とは。キャンピング広場や廃校の活用、自転車のシェアリング」など。
<日本航空株式会社 徳島支店長 坂本優子氏>
井原委員からは「先進国では高校からは文科省じゃなくて経産省。産業構造の変化に対応できる人材の育成。自ら推進してきた“ 未来の教室 ”と教育。教えない授業と先生の役割。企業が高校生のアイデアに投資する時代に」。経営コンサルタントの高橋委員からは「阿南市での3年間の事業支援で経営者のやる気や地域資源の融合が形になってきた。企業・地域・行政とお互いの顔が見えることが大切」。勢井委員からは「富岡西高校で授業を行い、48歳で起業して病気になっても諦めなかったことを生徒と共有。自社の新素材が海外から注目される。阿南にはいい会社がたくさんあり、学校と企業や行政が連携することで阿南の未来が見えてくる」。山中委員は「地元企業の認知度が地域への愛着やUターンにつながるデータを紹介。高校生×企業のマッチングをサポートするプラットフォームの必要性。若者が地域とともに創る時代へ。淡路島で大学と企業を巻き込んだ“島まるごとラボ”を計画中」。床桜座長からは「災害時の避難を担うシームレス民泊。関係人口を呼び込む壁画再生プロジェクト。津波対策としてのパーソナル通知システムの実践モデル」の発表がありました。
<写真左:床桜英二氏 写真右:勢井啓介氏>
意見交換では、AI時代に対応した新しい教育、地域・企業・行政の支援、出前授業からアウトプットへのステップアップ、生徒が地域課題の解決方法を発案できる場、自立分散的に活動する多様なアクターの必要性などについて活発な議論がありました。
特に二宮委員からは“イノベーションからブリコラージュへ”と題して、「冷蔵庫のあり合わせ食材でも素敵な料理が作れるように、再生工場と言われたノムラ野球のように、今ある資源を最大限に活用することこそ地方が生き残る道であり、さらに単体でなく、産業・自然・スポーツなどの融合を阿南は目指すべき」との力強い提言がありました。
<株式会社スポーツコミュニケーションズ 代表取締役 二宮清純氏>
最後に床桜座長から、「SDGsで持続可能なまちを創るには人材の育成と確保が不可欠。そのためには面白い人が集まる空間が必要で、そこは東京にいてもコミットできる、子供達も参加して地域への愛着につながっていく、そんな場となるプラットフォームを動かす民間の中間的な地域組織を作るべき」とのまとめがありました。
支局では、今回の会議、高校生ミライ会議、特別講演会等の状況を基に大正大学地域構想研究所のサポートを得ながら研究成果報告書を作成しました。これらの成果は市の施策等に検討・活用されることとなります。