はじめに
令和7年10月、2つの大型台風が連続して伊豆諸島の八丈島を襲った。
50年ぶりの大型台風により、八丈町では住家・非住家あわせて1,600棟を超える建物被害が発生した(八丈町税務課情報)。
筆者は、内閣府登録の罹災証明コーディネーターとして八丈町に派遣され、住家被害認定調査及び罹災証明書発行を担当する八丈町税務課へのマネジメント支援を行った。
今回のレポートでは、筆者の目から見た八丈町の台風対応について簡潔に報告する。
派遣前段階
令和7年台風第22号が八丈島を襲ったのは10月9日(木)。翌10日(金)の午前中に八丈町税務課と東京都総合防災部、内閣府防災(被害認定担当)に筆者を加えたオンライン会議が開催された。
会議で八丈町税務課から問われたのは、数日後に襲来することが確実視されている台風第23号の通過を待たずに住家被害認定調査を開始すべきか、という疑問だった。筆者は、大型台風の第23号によって被害がさらに拡大する可能性が高いこと、調査員の安全確保などの観点から、第23号の通過を待って調査開始することを提案した。幸い、内閣府防災や東京都も賛同してくれたため台風第23号が通過してから調査を開始する方針が確認された。
なお、この日の夕方に罹災証明コーディネーターとしての八丈町派遣が筆者に打診され、決定した。この段階での関係者の意思決定は迅速かつ適切であったと考えている。
派遣当初のコーディネート
筆者は、10月15日の朝一番の飛行機で八丈町に入った。同じく東京都総合防災部の職員2名も現地入りして、八丈町税務課と住家被害認定調査等に係る方針等の検討に着手した。
この時点で心掛けたことは、第1に業務の全体像を共有し、先の見通しを持ちながら方針を定めていくこと、第2に八丈町の主体性を尊重することだった。
第1の点については、当面のスケジュール表(図-1)を作成して、業務の全体像を理解してもらうことに努めた。17日には被害認定調査の都応援職員(第1陣)が到着するので、調査の基本方針を速やかに決定し、研修の準備を進める必要がある。その他、罹災証明書の発行開始日、連動して必要となる各種支援策の受付準備の状況、などなど2日間で対応すべき課題は山積していた。

図-1 10/15検討資料(佐藤作成)
さらに罹災証明書の発行会場の場所・レイアウト、調査の申請状況に基づく都応援の派遣規模や期間の推計など、関係者間で課題やデータを共有しながら先を見通しながら対応した。
第2の点について、筆者は罹災証明コーディネーターとはアドバイザーであり、八丈町職員が担うべき仕事にまで手を出してはならないと考えていた。そこで、ミーティングの進行役や研修の司会、調査資機材の準備などは八丈町職員に担当してもらうことにした。罹災証明書の発行時期を決める際には、税務課長に庁内調整をお願いしたが、大変精力的に動いていただき17日には31日から発行開始するという町の方針を確定することができた。
当初から強く感じていたのは、八丈町税務課の受援力の高さである。筆者をはじめとして、東京都、内閣府に対して、わからないことは率直に問いかけ、理解ができれば粛々と処理していく。弁護士、不動産鑑定士などの専門職との連携についても被災者に役立つと分かれば要請し、柔軟に受け入れていく。こうした受援力の高さが、大きな混乱なく業務を進めていくうえで大きく役立っていたと感じている。
罹災証明コーディネーターの交代
次に、罹災証明コーディネーターの交代について述べておきたい。
筆者の派遣期間は10/15~10/22という短期であった。だが、八丈町での住家被害認定調査は緒に就いたばかりである。そこで、罹災証明コーディネーターが交代で八丈町に入ることとなり、11月の上旬までは切れ目なく罹災コーディネーターが派遣された。

表-1 罹災証明コーディネーターの派遣期間
八丈町には、3人の罹災証明コーディネーターが交代で派遣された。この交代制は結果としてよい効果をもたらしたと考えている。
2人目のF氏は、牧之原市などに罹災証明コーディネーター派遣され、風害による住家被害認定調査の経験を有していた。F氏の提案による外観目視によるローラー調査は被害の全体像の把握、罹災証明書発行の迅速化に大いに貢献した。3人目のⅠ氏も牧之原市での罹災証明コーディネーター派遣を経験しているが、何よりも珠洲市で数多くの被害認定調査を経験しており、特に非木造の調査に関する知見が豊富であったことは、調査班や税務課職員の大きな支えとなった。比較的近隣にいる筆者は、2回目以降はつなぎ的な派遣を受け持った。
筆者の知る限り、実災害で派遣された経験を持つ罹災証明コーディネーターは、この3人にとどまっている。今後、より多くの罹災証明コーディネーターが被災地で活躍できる環境を整えていくことが望まれる。
おわりに
以上、筆者の独断と偏見に基づいた雑感を述べさせていただいた。
八丈町では、住家被害認定調査及び罹災証明書発行は税務課が担当している。税務課職員は文字通り休みなく献身的に業務に取り組んでいた。その頑張りに加えて、罹災証明コーディネーターの派遣、東京都や内閣府の支援など、被災地の自治体を支える仕組みが整ってきていることを実感した派遣であった。
このレポートでは詳述していないが、筆者は今回の派遣を通じて業務処理の標準化、システム共通化、被災自治体の受援力の向上などについて深く考えさせられた。
八丈町の台風対応については、来年度の自治体防災・減災ワークショップで取り上げていきたいと思っているので、ご期待いただきたい。


