石川県での罹災証明書発行等の取り組み

著者
大正大学地域構想研究所 研究員
佐藤 和彦

1 はじめに

私は、令和6年1月17日の夜に金沢入りし、25日まで罹災証明書発行等に関する現地調査を行いました。その後もリモートで石川県庁や被災市町とつながり続け、罹災証明書の発行や生活再建支援の円滑化に向けたアドバイスなどを行っています。
石川県内では、17自治体が災害救助法の適用を受け、県内19市町のすべてに被災者生活再建支援法が適用されており、罹災証明書の円滑な発行が喫緊の課題となっています。
今回の地震では、能登半島北部の6市町(七尾市、輪島市、珠洲市、志賀町、穴水町、能登町)とその他の地域とで被災の程度に大きな差が出ています。交通経路、ライフラインの途絶などが続き、応援職員や支援者の宿泊先確保が難しいなどの事情を抱えた6市町では、今も困難な状況が続いています。
そうした中にあっても被災自治体関係者の皆さんは、被災者の皆さんに少しでも早く罹災証明書を発行し、生活再建の支援を実施できるよう懸命の努力を続けてきています。
本レポートでは、その一端をご紹介します。

2 罹災証明書発行の円滑化に向けた取り組み

①被災者生活再建支援システム(以下、「生活再建システム」)の活用

石川県では、全県でNTT東日本の生活再建システムを導入しています。このシステムは、京都大学などの研究者が開発し、住家被害認定調査、罹災証明書発行から、被災者台帳を活用した一人も取り残さない生活再建支援業務を一括してICTで支援するシステムです。
県内共通のシステムが導入されていたことで、これまでの被災地に比べて、被災市町間での業務処理手順(モバイル調査の採用など)の調整は比較的円滑に進んでいると感じています。さらに、大きなメリットとして、生活再建システムは全国約280の自治体が導入しているため、応援自治体の中にシステムユーザーが相当数含まれており、即戦力の応援が期待できることがあげられます。

②避難者に寄り添った申請方法

石川県内では、いわゆる「1.5次避難」「2次避難」など、自宅から遠く離れた避難所で避難生活を送っている被災者が数多く生じています。こうした事情を配慮して、通常は居住地の自治体に行う罹災証明書の申請手続きを避難先の自治体でも行うことができるという、柔軟な運用が行われています。そのために、県内共通の申請様式が用意されました。
この話を聞いた時私は、今回の災害特性を踏まえて、被災者に寄り添った大変すばらしい取り組みがされていることに、深く感銘を受けました。

③調査・発行迅速化のための新たな手法へのチャレンジ

県内では、罹災証明書発行の迅速化に資する新たな手法の活用が進んでいます。
例えば、被害が軽微な方々を対象とした「自己判定方式」の導入です。自宅の被害がごく軽く「準半壊に満たない(一部損壊)」ことに合意できる場合には、自治体による現場調査を省略して被災者が撮影した写真に基づいて罹災証明書を発行する方式です。調査を省略できる分、早めに罹災証明書を受け取ることができます。
また、一定範囲内の住家がすべて流失・焼失していると認められるエリアにおいて、戸別の詳細な調査を省略してまとめて全壊と認定する「一括認定」を導入した自治体もあります。
そのほか、最新技術であるドローンを活用した調査も始まっています。現地調査を実施することが困難な集落をドローンで空撮し、その写真データを用いて被害認定を行う試みです。被害認定作業は被災地外にいる職員や委託事業者が遠隔判定し、作業の効率化が図られました。

④石川県による被災6市町の被災者台帳作成支援

半島北部の6市町では地元を離れ県内外に広く分散して避難生活を送る方々が数多く発生しています。そこで、石川県では、県が広域避避難者の居場所や要配慮事項などを把握して被災者データベースを構築し、その内容を6市町に提供して被災者台帳の作成を支援する画期的な仕組みを構築しています。本邦初と思われるこの仕組みによって、遠い親戚宅に自主避難している人なども含めて、地元自治体がいつも居場所を把握できるようになります。そうなればどこに避難しても地元自治体とつながり続けることができます。孤立してしまう避難者や取り残される避難者を出すことなく継続的な支援を受けられる体制が整うことが期待できます。

3 おわりに

以上のとおり、石川県では厳しい状況の中にあっても、デジタル技術を生かした新たな手法の活用など、これまでにない柔軟な災害対応が進められています。
私は、引き続き石川県の取り組みに注目していこうと思いますし、一人も取り残すことが無い生活再建の実現に貢献できるようささやかながら貢献していきたいと考えています。
その中で得た成果については、引き続きこのメルマガやワークショップなどを通じて皆さんにご報告していこうと思っていますので、今後もご期待ください。

2024.03.01