自治体防災・減災ワークショップの狙い
地域構想研究所の防災・減災プロジェクトでは関東大震災から100年を迎える今年、全国の自治体職員の皆さんと共に、防災・減災について考える連続ワークショップを企画しました。
激甚化・頻発化する風水害、迫りくる巨大地震など、防災・減災は自治体にとって重要な課題となっています。その一方で、災害対応の最前線に立つ自治体職員の皆さんにとって、十分な知識・経験や対応のノウハウを得ることはなかなか難しいのが現状ではないでしょうか。
本ワークショップでは、罹災証明書発行、個別避難計画作成、流域治水など防災・減災を巡るホットなテーマを取り上げながら、年4回シリーズで開催し、職員の皆さんが自治体の壁を越えて情報交換・意見交換する機会を提供していきたいと考えています。
第1回ワークショップ
第1回目のワークショップは、7月4日(火)の15時~17時にZoomによる完全オンライン方式で開催しました。
当日は、全体で60人の方にご参加いただきました。そのうち自治体職員は4都県、15市区町村の24人にご参加いただき、盛況のうちに行うことができました。
ワークショップは、本研究所の片山善博所長の挨拶で幕を開けました。
そして、最初の話題提供者として、被災者生活再建支援の第一人者である林春男京都大学名誉教授にご登場いただいて「生活再建支援の全体像」と題して講義をしていただきました。林教授は、阪神・淡路大震災を契機として生活再建支援に欠かせない罹災証明書の迅速・公平な発行を支援するパッケージ(ICTシステム&調査ツール&研修キット)の開発に中心的な役割を担ってきた方で、パッケージ開発に込めた熱い思いをクールに語ってくださいました。
2人目の話題提供者は、林教授が開発したパッケージを導入している茨城県防災・危機管理課の大関裕之様です。大関様からは、パッケージの有効性を実感した事例として、つい先日の台風第2号による大雨で6月2日から3日にかけて浸水被害が発生した取手市の事例などが紹介されました。平成28年度以降、県と県内市町村が協力して取り組んできた成果として、6月6日には県内市町村の応援職員が現地入りして約700棟の住家被害認定調査を開始し、早くも2日後の8日には罹災証明書の発行を開始するという円滑な対応ができたことが報告されました。
そして、最後の話題提供者として、林教授が開発をリードし、その後様々な地震や風水害の現場で磨き上げられてきたパッケージ「被災者生活再建支援システム」についてNTT東日本の伴野淳志様から紹介していただきました。住家被害認定調査及び調査結果のデジタルデータ化、罹災証明書発行、被災者台帳整備、生活再建支援の実施まで一気通貫でサポートするシステムであることが紹介されました。さらに、新たな機能として調査計画作成のサポート機能の充実が図られていることも報告されました。
以上の話題提供を受けて、参加者による討議を行いました。まず、事前に寄せていただいた質問への講師の皆さんの回答から始め、参加者からご質問やご意見をチャットで寄せていただきました。参加者から出された「このシステムを生活再建だけでなく災対本部の情報収集などにも活用できるか?」という質問に対して、NTT東日本の伴野様から避難者や避難所、防災施設管理の機能はクラウドサービスでカバーしているなどの回答がされました。
第1回ワークショップの評価と今後の展開
7月7日時点での速報値ですがアンケートでは、全般的には好意的な評価をいただきました。
特に茨城県様の事例報告は好意的な評価が8割を超えました。
頂いたご意見を参考に第2回目以降では、討議の時間を増やし、ブレイクアウトルームを活用して少人数で意見交換する時間を確保するなど、工夫して行こうと考えています。
ワークショップを閉じる前に、参加者の皆さんに今回のテーマについて引き続き意見交換を続けることを提案させていただきました。幸いアンケート結果で、参加希望者がいることが確認できましたので、改めて意見交換会を企画し、募集したいと思っています。しばしお待ちください。この意見交換会が自治体間での情報交換や交流のきっかけとなり、被災者生活再建業務の標準化、システム共通化の一助となるよう、努力を続けていきたいと考えています。
なお、本ワークショップの第2回目は、令和2年7月豪雨で大きな被害を受けた球磨川流域で取り組んでいる「流域治水」をご紹介し、意見交換をしたいと思います。8月後半の開催を目指して鋭意企画中です。ご期待ください。
最後に、講師の皆様、地域構想研究所スタッフの皆様の多大なるご協力に感謝し、参加していただいた皆様に心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
引き続き、自治体防災・減災ワークショップをよろしくお願いいたします。
片山所長の挨拶
講師・参加者と記念撮影