まちづくりを推進する為の私の活動方針

著者
大正大学地域構想研究所研究員
菅原 達也

私の活動は地域を廻り、観光開発や観光振興を中心に地域を変えていくように啓蒙をしていく事が大きな役割の一つです。近年、地域づくりにおいて『合意形成』という言葉が多用される傾向にあります。

『合意形成』をウィキペディアで調べると「ステークホルダー(多様な利害関係者)の意見の一致を図ること。特に議論などを通して、関係者の根底にある多様な価値を顕在化させ、意思決定において相互の意見の一致を図る過程のこと」との記載があります。つまり地域に大きな新しい行動を起こす場合は合意形成が大事だと言う事です。

一方、地域では『合意形成』を行う前提で意識改革が必要不可欠になっています。これが地域に気づきやインパクトを与える『イノベーション』であります。今やイノベーションは時代の合言葉であり、その概念に対する誤解も蔓延しています。イノベーションは技術進歩ではなく、「創造的破壊」(Creative Destruction)という行為です。

最初にイノベーションに注目したのは、経済学者であるJ・シュンペーター(Schumpeter, 1947 )であり、その後C・クリステンセン(Christensen 1997)は「破壊的なイノベーション」という概念によって、イノベーションの古典的定義に立ち戻りつつも、経営が置かれている今日的な課題に注目してイノベーションの本質を再発見しました。シュンペーターの「イノベーションの類型」には新消費財、新生産方法、新輸送方法、新市場、新産業組織形態があり、イノベーションは社会のあらゆるところに革新を求めるのです。

シュンペーターはイノベーションを論文において、「現状の均衡を創造的に破壊して新しい経済発展をもたらすもの」と定義し、「馬車を何台つないでも、機関車にはならない」と説明しています。外からの刺激に対して普通に返すのか、あるいは創造的に返すのか、その差が「イノベーション」に当たるということ。そして、想定外の創造的な対応がダイナミックな変化をもたらす過程を「イノベーション」と呼んでいます。

創造的破壊は資本主義における経済発展そのものの要諦であり、これが起こる背景は基本的には外部環境の変化よりもむしろ企業や社会(地域)の内部にあるということ。つまり、持続的な経済発展のためには、絶えず(企業内や地域内で)創造的破壊を行うことが重要になります。

私が地域活動の中で、まず最初に行う講演は「イノベーション」に関する講演です。その際、例として使うのは歌舞伎界で中村勘三郎が行った改革です。この改革は色々なイノベーションを起こしました。

中村勘三郎の『MKT』と言う言葉がイノベーションを表しています。Mは(守るの頭文字)歌舞伎の伝統を受け継ぎ、Kは(壊すの頭文字)伝統という古いしきたりを壊し、他舞台でも公演できる体制にしました。浅草の歌舞伎小屋を舞台に庶民感覚でも楽しめる環境を作ったのです。そして最後にTは(作るの頭文字)で新しい公演の機会をニューヨークで上演し、絶大な評価をもらいました。このように中村勘三郎の改革が歌舞伎界にイノベーションを起こしたのです。

私の地域活動での役割は地域に『イノベーション』を起こすような環境の構築と、そのイノベーションを『合意形成』によって定着させていくシステムを作る事です。
地域は『イノベーション』と『合意形成』を絶え間なく続けていく事で変わっていくのであって、資源が多いか少ないかという事ではないのです。

2019.02.14