「集いの場」づくりから学ぶこと

著者
大正大学地域構想研究所助教
髙瀨 顕功

コミュニティカフェ実施報告(続)

講義と研究を掛け合わせ、多様な人々が顔を合わせ、互いを知る「集いの場」としてのコミュニティカフェ(前回記事参照→援助希求を発見する「集いの場」づくり)を5月から開催してきましたが、6月9日(第3回「本が読みたくなる!楽しいしおりづくり!」)と6月23日(第4回「おもしろマラカスづくり!みんなでシャカシャカ♪」)の回をもってひとまず終了しました。

しおりづくりは、カラー用紙にマスキングテープやシールでデコレーションしたり、ペンで絵を描いたりしたり、思い思いにデザインした後、ラミネート加工してしおりにするというものです。一方、マラカスづくりは、ペットボトル容器を再利用し、中に様々なサイズのビーズを入れ、外側を飾り付け、最後にみんなで演奏するという体験も交えた企画でした。いずれの回も家族での参加が多く、子どもがワークショップを楽しむ中、ママ友同士の憩いの場にもなっていました。

しおりづくりのワークショップ

 
アンケート調査では、来場者のうち男性が約2割であるのに対し、女性が約8割と圧倒的に多く、年齢層の内わけは、10代以下、20代、40代がそれぞれ2割ずつ、30代が3割、70代が1割ということがあきらかになりました。これは、子ども連れのお母さん方が多く参加していたことによります。今回のカフェ開催にあたって、大学周辺の幼稚園や保育園、子育て支援を行う区民ひろばなどに開催のチラシを置かせていただきました。それに合わせて、カフェでは、子どもでも楽しめるワークショップが企画されました。企画の内容とターゲットが一致したからこそ、こういった来場者層になったのではないかと思います。

また、同じアンケート調査では、来場者はリピーター(2回目以上の参加)が多いこと、初めての参加する方のなかには、「人から聞いてコミュニティカフェを知った」と回答する人が多いこともあきらになりました。このことから、コミュニティカフェを運営する際に、1)ターゲットに合わせた企画、2)継続的な開催、3)地域ネットワークにおける「口コミ」効果を考える必要があるという結論に至りました。なお、前回課題となっていた「互いを知る場」に関していえば、リピーターが友人を連れてくるケースが多く、ふらっと立ち寄った人と交流する仕掛けを作るには至りませんでした。これらの知見は、今後RISTEXで取り組んでいる「集いの場づくり」に生かしていきたいと思います。

「集いの場」が「学びの場」に

コミュニティカフェの社会実験は、初回こそ教員(齋藤知明先生と私)の企画でしたが、2回目以降は講義を受講する学生の企画によるものでした。企画・運営に携わった16人の学生のなかには、履修とは別に自主的に参加する学生もおり、地域社会との関わりのなかに学びを求める意識の高さがうかがえました。

とはいえ、企画・運営に関しては素人の集まりです。前日までに何をどれだけ準備したらいいのか、当日は誰が何を担当するのか、物の用意から人の動き、さらには接客の仕方まで、試行錯誤の連続でした。そこで、毎回のカフェごとにリフレクションシートを用意し、自分の役割、目標や課題、次回への改善点などを記入することで、やりっぱなしにならない学習の機会となりました。

様々な学部学科から集まった学生は、全部で3グループに分けられ、企画・運営の責任班、サポート班、自由参加班に分かれ、全ての回で役割をこなしました。また、異なる立場で関わることで、運営側だけでなく来場者目線での課題にも気づくことができました。

体験をもとに課題を発見し、改善策をだし、グループで話し合い、実施して検証するというPDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Act:改善)サイクルを各回通じて行うことで、学生たちにとって、コミュニティカフェの場は質の高いアクティブラーニングの場になりました。普段、講義で一緒になることのない他学科の学生と対話する機会ともなり、学生たちにとっても大きな学びとなったようです。

カフェオープン前の打ち合わせ学生たち

2018.08.10