大正大学能登半島地震災害ボランティアについて

著者
大正大学経営マネジメント本部施設課 課長
坂本 大輔

はじめに令和6年1月1日能登半島地震にて被害に遭われた皆様に謹んで御見舞い申し上げます。
この度、白土副学長を団長とした教職員8名、学生有志24名により6月5日から6月9日までの5日間、珠洲市寺家地区において現地活動を行いました。
学生有志の参加動機は多岐にわたり、過去に被災経験のある方、日頃からボランティア活動に取り組まれている方、震災のニュースを契機に行動を起こした方など様々でしたが、各々の強い意志と使命感を強く感じました。

現地活動は、大正大学の活動を全面的にご支援くださいました翠雲寺様での物故者追悼の法要から始まりました。その後、翠雲寺活動班と海岸清掃班の2班編成で活動を展開いたしました。
追悼法要では、鴨台会渡辺常任理事にご導師を務めていただきました。参加学生一同が初めて大正大学勤行式を手に経本を開き、目を閉じて心を落ち着かせる姿からは、参加者の共同意識が感じられ、この瞬間から活動に対する真摯な姿勢が醸成されたように思います。

【追悼法要に緊張しながら参列するボランティア学生】

私は海岸清掃班で活動に同行しました。この海岸清掃は単純な「ゴミ拾い」ではありません。津波で流された家財等が海辺に打ち上げられ、それらを重機で集積した状態であり、さらに不法投棄が横行して新たな不安材料となっていました。これら種々雑多な集積物を適切に仕分けて処理可能な状態にすることが、海岸清掃班のミッションでした。
活動初日は引率者が方向性を示しながら作業に当たりましたが、2日目からは学生同士で積極的に話し合い、海岸清掃班リーダーの大澤さんを中心に具体的な目標を定め、全体を見渡しながら効率的に取り組みました。この自主的な行動と協調性の高まりは、学生たちの成長を如実に示すものでした。
また、同班の遠藤さんが「おもちゃを瓦礫のように扱い投げてしまった。どんな状況でも持ち主の大切な物である」と反省された姿には、私自身も深く気づかされる部分がありました。同様の声が他の学生からも上がったことは、学生たちの共感力と倫理観の高さを示すものとして強く印象に残りました。
膨大な瓦礫撤去という肉体的、精神的に厳しい作業でしたが、「単純作業」に陥ることなく、各自が自らの想いを忘れずに取り組む姿勢が他者の共感を呼び、チーム大正大学一丸となって活動に励むことができました。さらに、海岸清掃においては珠洲市出身の同窓生である地形さんに合流いただき、暑さで疲れが始めたタイミングでしたが一層士気が高まりました。

【海岸清掃班における仕分け活動】

総括

この現地ボランティアを通じて、学生たちの心の成長過程を考察すると、以下のような段階を経ていると思われます。
初めは、社会的責任感から生まれた「使命感」に基づいて応募し、現地の情報を綿密に調査しました。そして、実際に被災地の状況を目の当たりにし、一時的な「不安感」を抱きましたが、追悼法要を通じて各自の「確固たる思い」へと昇華させました。その後、具体的な活動を通じて「共同意識を形成」し、最終的に被災地活動メンバーで設定した目標を達成することで「自己効力感」を高めるに至りました。
これら一連の経験は、学生たちの社会の一員としての自覚を深め、積極的かつ主体的な意識を育むことにつながりました。そして、この心の成長過程を間近で見守った我々教職員もまた、学生たちから多くのことを学び、新たな気づきを得る貴重な機会となりました。
参加学生たちは、単に瓦礫を撤去するだけでなく、リーダーシップ、共感力、チームワーク、困難への対処能力、社会的責任感、そして自己効力感を養う機会を得ました。これらの経験は、彼らの人格形成に大きく寄与し、将来の社会人としての成長の礎となったと確信しています。
被災地の人々の苦しみに寄り添い、自己を超えて他者のために行動する経験は、本学の建学の精神「智慧と慈悲の実践」そのものであり、学生たちがこの精神を体現する姿に深い感銘を受けました。
今回の活動を通じて得られた学びと成長は、参加者一人一人が無心で行動に移すことができ、彼らの人生に大きな影響を与えるものと確信しています。さらに、この経験は彼らを通じて周囲の学生たちにも波及し、大学全体の意識向上につながることが期待されます。
最後に、この活動に対して多大なるご支援とご協力をいただいた、理事長、学長をはじめとした執行部の皆様、大正大学鴨台会の皆様、および関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

2024.11.15