鴨台盆踊り、3年ぶりの実地開催!

著者
大正大学 心理社会学部 専任講師
齋藤知明

7月8日(金)、9日(土)開催!

 新型コロナウイルスの流行が本格的に始まった2020年から世界各地・全国各地であらゆる移動・活動が制限されました。特に、実際に対面でおこなわれる行事・イベントは軒並み中止となりました。また、祭りに関しては、中止ではなく神事のみの縮小開催、あるいはオンラインでの代替開催が各地で見られました。

 大正大学の鴨台盆踊りは2011年から開催され、今では大学祭(鴨台祭)に次ぐ来場者を数えます。最後の実地開催となった2019年の第9回鴨台盆踊りでは2日間で合計約6,700人が盆踊りを楽しみ、巣鴨三大盆踊りの一つとまで形容されました。その特徴は全国で唯一、大学生が社会貢献の理念や方法を学ぶことを目的とした授業で、地域と連携しながら盆踊りの企画運営を実施する点にあります。

 実施自体が危ぶまれた2020年の第10回鴨台盆踊りはオンライン開催、コロナ禍2年目の2021年の第11回鴨台盆踊りはオンラインとごく小規模の対面での活動を組み合わせたハイブリッド開催として展開しました。コロナ禍においても諦めずに継続して盆踊りを社会に提供する学生たちの様子は、多くのメディアにも注目されました。

 2022年は感染者数の拡大が止まらないものの、ワクチンの普及やウイルスの弱毒化の実態から、各地で行事・イベントの実地開催が再開されています。鴨台盆踊りも、授業が開始された4月当初から7月8日(金)9日(土)の実地開催を目指し、実行委員の48名の学生が目下準備に邁進中です。ここでは、実地開催に向けての理念や準備の様子、それによる地域の反応についてお伝えいたします。

第12回鴨台盆踊りのメインポスター

「ハレろ、街も世界も!」

 3年ぶりの実地開催となる第12回鴨台盆踊りのテーマは「ハレろ、街も世界も!」としました。これは、実地開催に向けて天気が晴れてほしいという願いに加えて、祭りができなかった3年間におけるハレの日として、そして、コロナ禍が晴れてほしいという思いを込めています。

 また、過去2年間はオンライン開催が中心となり、なかなか大学周辺の地域の方々は参加できませんでした。2011年に鴨台盆踊りを始めた目的の一つに、地域振興がありました(その他にも、東日本大震災被災地の復興祈願)。今回の実地開催にあたり、やはり「街」とのつながりを大事に原点に回帰しようとなりました。

 さらに、今年に入ってからのウクライナ危機によって故郷や家族を失い辛い想いをされている方が多くいます。「世界」という文言には、そのような社会不安も晴れてほしいとの強い意味が含まれています。

 そのような理念で開催される第12回鴨台盆踊りの目玉は大きく2点あります。一つが「子ども屋台」です。実地開催を目指すのであれば、感染対策も十分に行わなければいけません。例年、盆踊りのやぐらの周囲にはたくさんの屋台が並ぶのが鴨台盆踊りの特徴の一つでした。今年は、感染対策のために食事を伴う屋台を設置せずに、代わりに子どもが心から楽しめる屋台を多く準備することになりました。

 コロナ禍での活動制限によって子どもが受けたストレスは計り知れません。ここ2年、野外での遊びや運動、イベントをなかなか経験できなかった子どもたちに、ぜひ大いに楽しんでもらいたいと考え、「子ども屋台」を充実させる予定で動いています。

 もう一つが「高校生の参画」です。社会貢献活動を学びながら運営される鴨台盆踊りですが、さらなる地域連携の一環として、大学の近くにある高校の高校生と大学生とが協働を図ります。現在大正大学では高大接続に力をいれて、高校・大学で協力しながら社会で活躍する人材を育成することを目指しています。そのため今回は、高校生と大学生が、直接的に連携してお互いの知識や関心を共有できる大きな機会として捉えています。

6月に開催された第10回鴨台祭での告知

街の勇気

 鴨台盆踊りの実行委員会は「サービスラーニング」と「地域課題解決実践論」の授業を履修している学生によって構成されます。4月はリーダーシップと盆踊りの由来に関する学習、5月は「子どもが楽しめる企画」「効果的な広報」「感染対策を施した環境整備」などのテーマを設定してのリサーチを中心に授業を展開しました。顔合わせから本番まで3か月を切るなか、急ピッチで企画運営を進めていかなければならないのですが、運営に向けて自分達でしっかりと仮説を立ててきました。

 5月の後半からようやく実践に移行。2年間、地域の方と接点を持てなかったため、まずは近隣町会や商店街への挨拶回りから始めました。鴨台盆踊りが始まって以来、毎年町会や商店街の方々にお世話になっていたこともあり、私も学生と共にご挨拶に伺いました。

 当初は、感染状況も落ち着かない現状であるにも関わらず大規模イベントをすることに対して、何かしらの苦言を呈されるのではないかと緊張していました。今春実施される予定だった街のイベントもまん延防止等重点措置により、みたび中止となった矢先での訪問でもあります。

 しかし、そのような不安は杞憂に終わりました。どの方も盆踊りの開催を非常に好意的に受け止めてくれました。そればかりでなく「自分達からイベントを再開することがなかなか難しいなか、大学が率先してイベントを始めてくれてありがたい。地域が励まされる」と、とても嬉しい言葉もいただきました。近隣の幼稚園に挨拶に行った際も、子どもたちがとても楽しみにしていると言われました。

 鴨台盆踊りが地域に根付いていることを実感するとともに、地域に対する大きな責任を痛感した瞬間でした。本番当日まで残り1か月を切り、学生たちは必死に準備に力を尽くしています。実は、実行委員のなかに3年前の実地開催に関わった学生は一人もいません。しかし、誰もそのことに対して言い訳もせずに、コロナ前と同じような盆踊りを目指すのではなく、時代を新たに創る地域行事をつくろうと試行錯誤しています。そのような学生の活動とともに、ニューノーマルな鴨台盆踊りを見に、ぜひとも遊びにきてください!

学生による地域への挨拶回りの様子

 

2022.06.15