テクノロジーで人とまちの関係性をどう変わる?―大正大学生と企画した「藤枝とあなたをつなぐサービス ジブンドコ。」から考える

著者
大正大学地域構想研究所 地域支局研究員
天野浩史

大正大学関連事業法人でもある一般社団法人ミライヌでは、この秋、「藤枝とあなたをつなぐサービス ジブンドコ。」プロトタイプ版をリリースしました。この企画の立案からプロトタイプ版サイトの制作まで、ほぼ全て、現役大学生A(大正大学地域創生学部3年生)が取り組みました。今回の寄稿では、「ジブンドコ。」というプロジェクトを通じた知見から、テクノロジーで変化する人とまちの関係性について構想します。

Aは、学部1年次から実習や課外プログラムを通じて藤枝市に関わりを持ち、Google MAPを使って市内の写真を500枚以上撮影・発信を続けてきました。今年の夏頃から一般社団法人ミライヌにディレクターとして参画し、私と議論をしながら「写真・記憶・まちづくり」というテーマでコンセプトづくりに取り組み、「写真を見返して浮き上がる記憶が、まちと人のつながりを結びなおすのではないか?シビックプライド(まちへの誇り)の醸成につながるのではないか?」という問いから、「ジブンドコ。」を企画しました。

10月21日に写真と記憶の投稿を呼びかけ、2020年11月12日時点で、10代から70代まで様々な方から投稿をいただいています。

家族との時間の意味を自覚した桜の写真、コロナの影響で久しぶりに帰省してとった蓮華寺池、部活の仲間たちと語らった公園…。「この場所に対して、こんな思い出を持った人がいるのか!」と感じる写真、記憶を多くいただきました。ぜひ皆様も、一人一人の写真と記憶をご覧ください。

「ジブンドコ。」WEBサイト

 

その後、少ないサンプルながらも写真と記憶を投稿くださった方々にAがアンケート調査をしたところ、「藤枝への愛着を感じたか」、「改めて好きになったか」という設問に対して7割以上の方がポジティブな回答をされました。一方で「藤枝の一員であると感じたか」「今後も藤枝というまちに関わりたいか」という設問には、他の項目と比べ否定的な回答が目立ちました(2、3割が「そう思わない」「全くそう思わない」と回答)。

回答者の約半数が藤枝市「外」在住という状況を考えると、「今、藤枝に住んではいない」から、藤枝の「一員と感じない」のかもしれません。また、ポジティブな印象を持ちながらも、具体的な関わりの機会がないから「関わりたいと思わない」のかもしれません。様々な視点で解釈ができそうです。

さて、このプロジェクトや(中間ですが)アンケート結果だけでも、私たちは、テクノロジーとまちづくりのあり様を構想することができます。

コロナ禍によって、在宅ワークが増えたり、本社を地方に移転したりするなど、テクノロジー(オンライン)を活用して、場所を選ばず働くことができるようになっていくことは、多くのメディアなどで取り上げられていますが、さらに、リクルートなど大手求人メディアの多くが、地方での副業・複業特集やサイトが開設したり、NPO法人G-netの「ふるさと兼業」などソーシャルベンチャーが地方貢献型の兼業プロジェクトコーディネートを進めたりするなど、「今いる場所から、好きなまちでビジネスやボランティアに関わる選択肢」も生まれています。実際、私が代表を務めるNPOのプロジェクトでも、東京のマーケティング会社で働く方が静岡のNPOで広報戦略を考えたり、横浜の学生がリモートで編集取材したりするなど、オンラインツールやグループウェアを活用しながら、「自宅のデスクから静岡に関わる」という関わり方を実践されています。思えば、今回のAとのプロジェクトも、オンラインで東京―藤枝をつなぎ、議論や作業をしながら、サイトリリースを実現することができました。テクノロジーを上手に私たちが使えば、スマホひとつであらゆるまちのプロジェクトに関わることができ、加えてそういった関わり方を志向する人々が増えつつある社会になったのです。政府が推進する「関係人口」政策ともリンクし、今いる場所から好きなまちに関わる、というライフスタイルは常識になっていくのでしょう。

「地域貢献・地域活性化に関わるなら、移住」という物語がこの十年ほどで広がったと捉えれば、オンラインコミュニケーションにおけるテクノロジーの発達は、地域に想いを抱きながらも「移住未満」の人々のアクションを後押しし、「オンラインでいつでも、どこでも、好きなまちに」という新しい物語(関わり方)を生み出したといえます。そしてこの物語は、人がまちに関わる選択肢・機会は、工夫次第でまだまだつくることができるというメッセージでもあります。

「藤枝は好きなまちだけど、そこに住んでないから、一員という実感はない」と感じる方々に、私たちはどんな関わり合いの選択肢をつくることができるのか?

宿題でもあり、人とまちの関係性が変化する芽吹きでもあるこの問いは、関係人口の議論と融合しながら、これから多くの実践と検証が全国でより進んでいくのではないかと予感しています。

2020.11.16