昨年12月に改正入管法が成立し、今年4月には人手不足に対応するための新たな受入れ制度が動き出した。本稿では、前回に引き続き、我が国のこれからを考える一つの材料として、地方という軸から日本に住む外国人の状況をみる。
都道府県別の第1次・第2次産業の有業者数に対する技能実習生の割合
これまでみてきたように、地方圏での在留外国人の急増は、主に技能実習生の地方圏における増加によるものであった。今回は技能実習生の活用がどのように地方圏に拡大してきたのかみてみたい。
技能実習生の職種としては、ビルクリーニング、自動車整備、介護等、第3次産業の職種も対象となっている。しかし、中心となっている職種は、前回にみたように、食品製造関係職種、機械・金属関係職種、建設関係職種等、第1次及び第2次産業の職種なので、ここでは、第1次産業及び第2次産業の有業者数の和に対する技能実習生の割合を技能実習生活用の指標と考えて都道府県別に比較することとする。技能実習生数のデータは在留外国人統計から、第1次及び第2次産業の有業者数のデータは就業構造基本調査から得て、時点としては2012年と2017年を取り上げた。
全体的な傾向をみると、全ての都道府県において、2012年に比べ2017年の第1次産業及び第2次産業の有業者数に対する技能実習生の割合は増えている。
2012年に技能実習生の割合が最も高かった県が岐阜県(2.74%)、次いで福井県(2.01%)、香川県(1.96%)となっている。岐阜県、福井県は、いずれも繊維・衣服製造業が盛んな県であり、繊維・衣服製造業が牽引して技能実習生の活用が進んだと考えられる。2017年時点では、技能実習生の割合が最も高かったのは、香川県(3.24%)であり、広島県(3.21%)、岐阜県(3.02%)が続いた。
2012年と2017年を比較して、技能実習生の割合の増加が最も著しかった県が香川県(1.28%ポイント増)であり、次いで広島県(1.26%ポイント増)、熊本県(1.04%ポイント増)となっている。西日本の県において技能実習生の割合の伸びが特に大きい傾向が認められた。(図1)
(資料出所) 法務省「在留外国人統計」(2012年、2017年)及び
総務省「就業構造基本調査」(2012年、2017年)を用いて筆者作成
技能実習生活用の地域的拡大
次に、日本地図を第1次産業及び第2次産業の有業者数に対する技能実習生の割合で色分けして、技能実習生の活用の状況をみる。
2012年に技能実習生の割合が1.5%以上であった県は、①四国・中国地域に属する県(香川県、広島県、愛媛県,徳島県、岡山県)、②中部地域に属する県(岐阜県、福井県、富山県)、③その他の地域に属する県(三重県、茨城県)の3つのグループに大きく分けることができる。大まかな傾向としては、2012年時点で中部、四国、中国地域に属する県において、技能実習生が積極的に活用されていたことがわかる。
同じように2017年時点の技能実習生の活用の状況をみると、技能実習生の割合が2.0%以上であった県は、香川県、広島県、岐阜県、愛媛県、三重県、茨城県,福井県、岡山県、富山県、徳島県、石川県で、2012年において技能実習生の活用に積極的であった県において、さらにその活用が進んだことがわかる。
他方、技能実習生の割合が最も少ない段階にある県は、2012年と2017年とで共通しており、岩手県を除いた東北地方の県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、京都府、大阪府、和歌山県、沖縄県となっている。但し、これらいずれの都府県においても、技能実習生の割合は2012年の0%-0.5%から、2017年には1段階高まり、0.5%-1.0%となっている。
技能実習生の活用が2012年から2017年にかけて地域的に広がっていく様から、技能実習生の活用が盛んな地域が近接する地域に影響を与え、活用が盛んな地域を核としてその周辺地域に技能実習生の活用が徐々に広まってきたことがみてとれる。 (図2)
以上をまとめると、①元々技能実習生の活用が盛んであった中部、四国、中国地域において、さらに技能実習生の活用が進展したこと、②技能実習生の活用が少ない地域を含め、全国的に技能実習生の活用の度合いは高まっていることがわかった。