政府は本年6月、「骨太の方針2018」において、外国人労働者の新たな受入れの方策を打ち出した。中小・小規模事業者をはじめとした人手不足への対応として、従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていくしくみをつくるとのことだ。人手不足への対応を前面に出して外国人の新たな受入れを行うのは従前なかったことであり、外国人と我が国との関係は新たな局面を迎えたといえる。
本稿では、新たな局面を迎えた外国人と我が国の今後を考える一つの材料として、地方という軸から日本に住む外国人の状況をみてみたい。
ここ5年で地方圏に住む外国人人口は1.26倍に急増
法務省在留外国人統計によると、昨年末時点で、約256.2万人の外国人が日本に住んでおり、全人口の2.0%を占めている。ここ10年の日本に住む外国人の人口の推移をみると、リーマンショックによる景気後退や東日本大震災等の影響もあり、2012年まで減少し、その後増加に転じている(図1)。
都道府県別に外国人の人口をみると、東京都が約53.8万人と突出しており、次いで愛知県が約24.3万人、大阪府が約22.8万人と、都市部に人口が集中していることがわかる(図2)。
次に、ここ10年で在留外国人人口が最少であった2012年を100として、三大都市圏及び三大都市圏以外の地方圏の4つの地域(注)に分けて、外国人人口の10年間の変化をみてみる。2009年に増加した首都圏を除いた、3地域において外国人人口は2012年まで減少し続けており、全ての地域において2012年に外国人人口が最少となっている。その後いずれの地域においても増え続け、首都圏は2014年、大阪圏と地方圏は2016年、名古屋圏は2017年に2008年の水準を回復している。ここ5年で増加が著しかったのは、首都圏であり、2017年と2012年の比でみると1.35倍となっている。首都圏に次いで増加率が大きかったのが地方圏で1.26倍、名古屋圏の1.21倍が続き、大阪圏は1.11倍にとどまった。(図3)。
ここ10年で外国人の首都圏への集住の度合い高まる
2017年の三大都市圏・地方圏の外国人人口の分布をみると、首都圏41.2%、大阪圏15.8%、名古屋圏13.4%、地方圏29.6%となっている。三大都市圏で合わせると約7割となっており、地方圏の人口は3割を切っている。総務省人口推計によると、三大都市圏に住む日本人は2017年51.8%と約5割なので、外国人の方が日本人よりも三大都市圏に集中して住んでいる実態がある。
ここ10年の外国人人口の分布の変化を追うと、首都圏に住む外国人の割合は36.4%から41.2%へと4.8ポイント増えた一方、大阪圏は17.1%から15.8%、名古屋圏は15.3%から13.4%と、それぞれ1.3ポイント、1.9ポイント減った。地方圏の人口も31.2%から29.6%へと1.6ポイント減少しており、総じて首都圏への集住がこの10年間で進展したといえる。
2008年と2017年の日本人の4地域の人口分布を比較すると、首都圏において1.2ポイント増加し、地方圏で1.3ポイント減少し、大阪圏、名古屋圏はほぼ同じ水準を保っている。外国人、日本人いずれも首都圏への集住が進んだが、外国人の方は地方圏に加え、大阪圏、名古屋圏も減少しており、日本人と比べてさらに首都圏への一極集中の度合いが高かったことがわかる(図4)。
以上をまとめると、外国人の約7割は三大都市圏に住んでおり、地方圏に住む外国人は約3割にとどまる。三大都市圏及び地方圏のうち、首都圏だけがこの10年で人口分布の割合を高め、他の地域は割合を減少させた。外国人人口がここ10年で最少だった2012年と2017年を比較すると、地方圏の2017年の外国人人口は2012年の1.26倍と最も増加率が大きかった首都圏に次いで急増している。