「勤務間インターバル制度」の導入が企業の努力義務に

労働時間に関する新たなルールの登場

6月末、働き方改革関連法が成立した。この法律は、政府が提唱する働き方改革を推進するため、8本の労働関係法を束ねて改正したものだ。労働時間制度、同一労働同一賃金など内容は多岐にわたる。改正法は2019年4月から、順次施行される。

法案審議を通じて注目を集めたのは、罰則付きの残業時間上限規制と高度プロフェッショナル制度。その陰に隠れた印象はあるが、「勤務間インターバル制度」という、労働時間に関する新ルールも導入された。これは、次の勤務までの間、すなわち前日の終業と翌日の始業の間(インターバル)に、働き手の健康と福祉に配慮し、あらかじめ決められた休息時間を付与する措置である。今回の法改正で、その導入が企業の努力義務となった。

下の図に具体例を示した。1日の所定労働時間を8時間、休憩を1時間とし、始業を9時とすれば、残業がなければ18時で終業となる。翌日の勤務も9時始業とすれば、インターバルは15時間である(ケースA)。

しかし残業ありのケースでは、インターバルはその分短くなる。ケースBは残業5時間とした例。この場合は23時が終業時間になり、翌日9時までのインターバルは10時間に減る。あらかじめ決められた休息時間を仮に11時間とすれば、1時間不足が生じる。しかし、その分翌日の始業時間を1時間繰り下げ10時始業でよいとするのが、勤務間インターバル制度の一つの典型例である。

 

勤務が変則的になりがちな職場ではいち早く導入を 

残業でインターバルが短くなっても、通勤や食事・入浴の時間はほとんど減らしようがない。インターバルの減少で最も影響を受けるのは睡眠時間。当然のことながら、働く人の健康やしごとへの悪影響が懸念される。短い休息時間が続くことで、過労死など最悪の事態にもなりかねない。このため、残業時間の規制とは別に、勤務間のインターバルに着目し一定の休息時間(導入済みのEUでは11時間)を付与するというのが、この制度の趣旨である。

しかし、制度の普及状況は極めて低調だ。厚生労働省の調査(2017年)によれば、導入企業割合は1.4%に過ぎない。法改正を受け、多くの企業が導入を検討することになるが、導入目的、休息時間などの具体的内容は、企業、産業ごとに異なる。新たなルールに戸惑う企業も少なくないだろう。国のガイドライン(予定)や先行事例を参考に、それぞれの職場の実態に即して、制度を設計していかなければならない。

勤務が変則的になりがちなシフト制の職場では、健康確保のためこのルール適用の意味は大きい。医師、看護師など医療従事者の中には、わずかな休息時間を挟んで夜勤から日勤に移行する勤務実態もあるという。こうした職場では、いち早く導入に向けた準備を進めるべきである。

 

 

2018.08.28