深刻な人手不足で外国人労働者の受け入れを拡大
人手不足が深刻だ。有効求人倍率(全国)は1.60(2018年5月)、全都道府県で求人件数と求職者数が均衡する水準「1」を超える。特に、インバウンド重要に沸く「宿泊・飲食サービス」、オリンピック開催を控える「建設業」、高齢社会を支える「介護・医療サービス」、「製造業」、「IT関連」などが厳しい状況にある。また、農業の担い手不足も深刻さを増す。
こうした中、国内の潜在労働力だけでは人手の確保が難しいとの見方が強まっている。倒産、休業も起きており、人手不足を最大の経営問題とする業界も少なくない。中小・零細事業者を中心に外国人労働者への期待は高まるばかりである。
6月に政府が策定した「骨太の方針」は、人手不足に対応するため、「一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく」との方針を掲げ、就労を目的とした新たな在留資格の創設を打ち出した。
外国人労働者の受け入れについては、専門的・技術的分野に限るのが原則だ。だが、技能実習や留学生のアルバイトなど、就労とは別の在留資格で、事実上単純労働・低技能労働を受け入れ、人手不足に対応してきた実態がある。それゆえに、人手不足を補う目的で正面から外国人材を受け入れるとの新たな方針は、外国人労働者政策を大きく転換させる可能性がある。
生活者としての外国人労働者への配慮が欠かせない
受け入れる外国人材は、一定の専門性・技能を有する人材を想定。単純労働ではない。また、既に受け入れ対象になっている専門的・技術的分野のレベルまでには至らない、いわば中間技能人材とでも言いうべき層だ。建設・介護・農業・宿泊・造船など人手不足が深刻な業種に限定する方針という。在留期限は5年、技能実習から移行すれば通算10年の在留が可能になる。
ただ、来年度の実施に向け課題も少なくない。例えば、中間技能を対象にした新在留資格が、事実上、単純労働の受け皿にならないとも限らない。対象業種の選定、技能試験の内容などに適正を期すとともに、監視体制の整備が重要になる。
また、生活者としての外国人労働者への配慮も大切だ。新たな受け入れにより、日本語、生活習慣に不慣れな外国人労働者が、多数、国内で長期間生活することになる。日本語教育のほか、多言語での行政サービス、生活情報(例えばゴミ出しルール)の提供など、基礎自治体による対応が不可欠である。
自治体だけではない。地域コミュニティの受け入れには、住民による多文化共生の取組みも重要だ。住民自身の自覚と行動が求められるのである。外国人が社会的に排除される事態は避けなければならない。