大正大学地域構想研究所は、コロナ禍の影響による地方移住や地方企業への関心の変化について把握するため、昨年11月に調査を実施した。本調査は、20代から40代の東京都在住者を対象にインターネット調査で実施し、1262人(男性630人、女性632人)から回答をいただいた。ここでは、調査結果の概要と主な結果を紹介したい。詳しい結果については、研究所のホームページをご参照いただきたい。
調査結果の概要
東京在住者を対象にコロナ禍前に比べ、地方移住に対する関心の度合いが高まった人の割合を調査したところ、全体の12.6%となった。男女別では、女性(12.8%)の方が男性(12.4%)より若干多く、年代別の傾向をみると、20代が18.0%と約5人に1人となり、30代(10.4%)、40代(9.4%)に比べ多かった。コロナ禍前より地方移住への関心が高まった人の関心が高まった理由をみると、「テレワークのような場所を問わない働き方が普及する中、働き方を変えたいと考えるようになったから」(40.3%)が多かった。
コロナ禍前より地方移住への関心が高まった人が、「地方移住に関心がある理由」のうち主な理由の1位に挙げたものをみると、「豊かな自然環境の下で暮らしたいから」(27.7%)と「通勤などが大変な都会の生活から離れてゆったりと暮らしたいから」(26.4%)が約4分の1ずつで多かった。また、コロナ禍前より地方移住への関心が高まった人の地方移住の実現希望時期は、「10年後」(23.3%)が最多で、次いで「5年後」(21.4%)、「定年を迎えたら」(20.8%)が多かった。
コロナ禍前より地方移住に関心が高まった人は、地方移住に関心がない人に比べ、地方訪問の機会や地方での経験が豊富であった。具体的には、コロナ禍前より地方移住に関心が高まった人と地方移住に関心がない人それぞれの回答割合は、「地方に毎年何回か帰省する」は29.6%、17.9%、「地方に毎年何回か出張する」は17.6%、6.3%、「地方に毎年何回か観光旅行に行く」は29.6%、13.7%、「出身地が地方である」は24.5%、15.7%となった。
コロナ禍前より地方企業への就職・転職への関心が高まった人の割合は全体の9.4%となった。男女別の傾向をみると、女性(9.5%)の方が男性(9.2%)より若干多く、年代別の傾向をみると、20代(12.7%)が、30代(7.3%)や40代(8.0%)に比べ多かった。コロナ禍前より地方企業への就職・転職への関心が高まった人の関心が高まった理由をみると、「テレワークのような場所を問わない働き方が普及する中、働き方を変えたいと考えるようになったから」(42.4%)が最多であった。
調査の主な結果
1.コロナ禍による地方移住への関心の変化
(1)コロナ禍と地方移住への関心
コロナ禍前に比べ、地方移住に対する関心の度合いが高まった人の割合は12.6%、コロナ禍にかかわらず地方移住に関心を持ち続けている人は30.8%、地方移住に関心がない人は56.6%であった。
男女別の傾向をみると、コロナ禍前に比べ、地方移住に対する関心の度合いが高まった人の割合は、女性(12.8%)の方が男性(12.4%)より若干多かったのに対し、コロナ禍にかかわらず関心を持ち続けている人の割合は男性(35.1%)の方が女性(26.6%)より多かった。
年代別の傾向をみると、コロナ禍前に比べ、地方移住に対する関心の度合いが高まった人の割合は、20代(18.0%)が、30代(10.4%)、40代(9.4%)に比べ多かった。
(2)コロナ禍前より地方移住への関心が高まった理由
コロナ禍前より地方移住への関心が高まった人の関心が高まった理由をみると、「テレワークのような場所を問わない働き方が普及する中、働き方を変えたいと考えるようになったから」が40.3%、「暮らし方を変えたいと考えるようになったから」が31.4%、「感染のリスクが少ない地域に移りたいと考えるようになったから」12.6%、「自らのこれからのキャリア設計を変えたから」10.7%、「故郷の人たちなど人とのつながりをもっと大事にしたいと考えるようになったから」が5.0%となった。
(3)地方移住に関心がある理由
「地方移住(二拠点居住を含む)に関心がある理由」のうち、主な理由の1位に挙げられたものをみると、コロナ禍前より地方移住への関心が高まった人は、「豊かな自然環境の下で暮らしたいから」(27.7%)と「通勤などが大変な都会の生活から離れてゆったりと暮らしたいから」(26.4%)を挙げた人が約4分の1ずつで多かった。それに対し、コロナ禍にかかわらず関心を持ち続けている人は、「豊かな自然環境の下で暮らしたいから」(28.3%)が最多で、「通勤などが大変な都会の生活から離れてゆったりと暮らしたいから」(19.8%)、「故郷に戻って暮らしたいから」(17.7%)が続き、「故郷に戻って暮らしたいから」を地方移住に関心がある理由の1位に挙げる人も少なくなかった。
(4)移住先の条件
「地方移住(二拠点居住を含む)するとした場合の移住先の条件」のうち、重視する条件の1位に挙げられたものをみると、コロナ禍前より地方移住への関心が高まった人は、「首都圏と簡単に行き来できる」(20.1%)が最も多く、「買い物等日常生活が便利」(18.9%)、「自分の出身地」(15.7%)が続いたのに対し、コロナ禍にかかわらず関心を持ち続けている人では、同じく「首都圏と簡単に行き来できる」(19.8%)が最多、次いで「自分の出身地」(19.0%)、「生活コストが安い」(14.7%)が多かった。
(5)地方移住の実現希望時期
「希望する地方移住(二拠点居住を含む)を実現するとしたら、いつ頃実現したいと思っていますか」との問いに対し、コロナ禍前より地方移住への関心が高まった人は、「10年後」(23.3%)が最多で、次いで「5年後」(21.4%)、「定年を迎えたら」(20.8%)が多かったのに対し、コロナ禍にかかわらず関心を持ち続けている人では、「定年を迎えたら」(23.9%)が最多で、次いで「10年後」(20.8%)、「5年後」(15.4%)が多かった。
「できるだけ速やかに」移住を実現したいと思っている人の割合は、コロナ禍前より地方移住への関心が高まった人(10.1%)よりもコロナ禍にかかわらず関心を持ち続けている人(14.1%)の方が多かったが、5年後までに地方移住を実現したいと思っている人の割合は、コロナ禍前より地方移住への関心が高まった人(45.3%)の方がコロナ禍にかかわらず関心を持ち続けている人(41.8%)よりも多かった。
(6)地方移住への関心と地方訪問や地方での経験
「地方訪問や地方での経験」について訊ねたところ、コロナ禍前より地方移住に関心が高まった人とコロナ禍にかかわらず関心を持ち続けている人は、地方移住に関心がない人に比べ、地方訪問の機会や地方での経験が豊富であった。具体的には、「地方訪問や地方での経験」に関する各設問についてのコロナ禍前より地方移住に関心が高まった人、コロナ禍にかかわらず関心を持ち続けている人、地方移住に関心がない人の回答割合は、「地方に毎年何回か帰省する」(各29.6%、32.6%、17.9%)、「地方に毎年何回か出張する」(各17.6%、16.7%、6.3%)、「地方に毎年何回か観光旅行に行く」(各29.6%、32.1%、13.7%)、「出身地が地方である」(各24.5%、28.3%、15.7%)、「地方の大学や専門学校に通った」(各10.7%、7.7%、5.9%)、「地方に転勤したことがある」(各3.8%、5.4%、3.8%)となった。逆に、地方訪問の機会や地方での経験について「あてはまるものはない」との回答の割合は、地方移住に関心がない人(61.3%)がコロナ禍前より地方移住に関心が高まった人(30.8%)とコロナ禍にかかわらず関心を持ち続けている人(30.3%)の約2倍となった。
2.コロナ禍による地方企業就職・転職への関心の変化
(1)コロナ禍と地方企業就職・転職への関心
コロナ禍前に比べ、地方企業への就職・転職に対する関心の度合いが高まった人の割合は9.4%、コロナ禍にかかわらず関心を持ち続けている人は28.8%、地方企業就職・転職に関心がない人は61.8%であった。
男女別の傾向をみると、コロナ禍前に比べ、地方企業への就職・転職に対する関心の度合いが高まった人の割合は、女性(9.5%)の方が男性(9.2%)より若干多かったのに対し、コロナ禍にかかわらず地方企業への就職・転職に関心を持ち続けている人の割合は男性(34.1%)の方が女性(23.6%)より多かった。
年代別の傾向をみると、コロナ禍前に比べ、地方企業への就職・転職に対する関心の度合いが高まった人の割合は、20代(12.7%)が、30代(7.3%)や40代(8.0%)に比べ多かった。
(2)コロナ禍前より地方企業就職・転職への関心が高まった理由
コロナ禍前より地方企業就職・転職への関心が高まった人の関心が高まった理由をみると、「テレワークのような場所を問わない働き方が普及する中、働き方を変えたいと考えるようになったから」が42.4%、「暮らし方を変えたいと考えるようになったから」が23.7%、「自らのこれからのキャリア設計を変えたから」16.1%、「感染のリスクが少ない地域に移りたいと考えるようになったから」10.2%、「故郷の人たちなど人とのつながりをもっと大事にしたいと考えるようになったから」が6.8%となった。