様々なつながりや縁で結ばれている東京圏在住者と地方

著者
大正大学地域構想研究所 教授
塚崎 裕子

大正大学地域構想研究所は、昨年12月、東京圏在住者の東京圏以外の地域とのつながりや縁について把握するため、調査を実施した。本調査は、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)に住む人を対象にインターネット調査で実施し、943人(男性592人、女性351人)から回答をいただいた。ここでは、その主な結果を紹介したい。詳しい結果については、研究所のホームページをご参照いただきたい。

調査の背景

2019年12月に策定された第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は、「地方とのつながりの構築」という基本目標を達成するため、関係人口の創出・拡大を今後の施策の方向性として打ち出した。「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々と位置付けられている(図1)。総合戦略では、地域への関心や地域との関わりを深める中で築いた地域との縁(関係)が地方移住を決めるきっかけとなることが多いことから、地方移住の裾野拡大等に向けて、特定の地域に継続的に多様な形で関わる関係人口の創出・拡大を目指すこととしている。

本調査の目的は、東京圏への一極集中が指摘される中、東京圏に住む人が、関係人口の創出・拡大をもたらし得る、地方とのつながり・縁をどのくらい有しているのか把握することである。そのため、本調査では、出身地、転勤先、頻繁に(年1回以上)訪れる場所、特産物購入先といった、つながりや縁について、東京圏在住者に対して質問を行った。

 

出身地

東京圏に住む人に「出身地(中学校卒業時の居住地)はどちらですか」と尋ねたところ、東京都が306人と最多で、神奈川県(159人)、埼玉県(116人)、千葉県(114人)が続き、東京圏の都県が上位を占めた。東京圏以外では、静岡県(19人)、大阪府(17人)、北海道(16人)が多かった(図2)。出身地を東京圏、東京圏以外、海外と分けて割合をみると、東京圏は73.7%、東京圏以外は26.1%、海外は0.2%であった(図3)。

(出典)大正大学地域構想研究所「東京圏に住む人々の地方とのつながり・縁についてのアンケート調査」(2020年)(以下同じ)

転勤で居住した場所

東京圏に住む人に「転勤で3ヶ月以上居住した場所がありますか」と尋ねたところ、「はい」と回答した人の割合が28.5%であった。「はい」と回答した人にその場所を聞いたところ、東京都が64人で最も多く、次いで神奈川県(51人)、埼玉県(42人)、大阪府(39人)、千葉県(39人)、海外(31人)、愛知県(29人)が続き、東京圏内の移動が多いことがわかった(図4)。複数の場所に転勤により居住した人も多く、「はい」と回答した人の転勤で居住した場所の数の平均は2.1であった。回答があった転勤した場所を東京圏、東京圏以外、海外に分けて割合をみると、東京圏が35.3%、東京圏以外が59.1%、海外が5.6%であった(図5)。

頻繁に訪れる場所

親戚訪問、出張など仕事のつながり、観光、スポーツ大会などイベント、ボランティア活動、その他の理由それぞれについて、東京圏に住む人に「あなたには頻繁に(年に1回以上)訪れる場所がありますか」と聞いたところ、親戚訪問で訪れる場所がある人が40.2%で最も多く、次いで観光(23.6%)、出張など仕事のつながり(12.2%)が続いた(図6)。頻繁に訪れる理由それぞれについて、訪れる場所を聞き、その結果を都道府県別に合計したところ、東京都を挙げた人が169人で最も多く、次いで神奈川県(138人)、千葉県(97人)、埼玉県(70人)と東京圏の都県が続いた。東京圏の都県に次いで、静岡県(66人)、大阪府(54人)、長野県(46人)、北海道(45人)が多かった。訪問の理由をみると、東京圏の都県では、いずれも親戚訪問が最多となっている。上位10位に入った、東京圏以外の道府県では、大阪府のみが出張など仕事のつながりで訪れる人が最も多いが、その他の道府県はいずれも観光を理由として訪れる人が最多となっている(図7)。

 

訪問の理由ごとに、回答があった頻繁に訪れる場所を東京圏、東京圏以外、海外で分けて割合をみると、それぞれ親戚訪問は東京圏が44.4%、東京圏以外が54.9%、海外が0.6%、観光は東京圏が26.2%、東京圏以外が71.9%、海外が1.9%、出張など仕事のつながりは東京圏が20.9%、東京圏以外が74.0%、海外が5.1%、スポーツ大会などイベントは東京圏が68.8%、東京圏以外が29.9%、海外が1.3%であった(図8~11)。

特産物を購入している地域

東京圏に住む人に「毎年特産物を購入している地域がありますか」と尋ねたところ、「はい」と回答した人の割合が11.8%であった。「はい」と回答した人にその場所を聞いたところ、北海道が17人で最も多く、次いで長野県(11人)、山梨県(8人)、千葉県(8人)、山形県(8人)が続いた(図12)。特産物としては、果物や海産物が多かった。回答があった毎年特産物を購入している地域を東京圏、東京圏以外、海外に分けて割合をみると、東京圏が8.9%、東京圏以外が91.1%、海外が0%であった(図13)

東京圏在住者の東京圏以外の地域とのつながり・縁

本調査で取り上げた、出身地、転勤先、頻繁に(年1回以上)訪れる場所、特産物購入先、大学等進学先、二拠点居住地、別荘地(注)といったつながり・縁のいずれかを東京圏以外の地域との間で持っている東京圏在住者の割合を調べたところ、60.2%となった(図14)。男女別にみたところ、男性は65.5%、女性は51.3%が東京圏以外の地域と本調査で取り上げたつながり・縁があることがわかった(図15)。年代別にこの割合をみたところ、65歳以上で77.3%と最も多く、55歳~64歳では63.3%、25歳~54歳の年代ではいずれも50%台であった(図16)。

本調査の結果から、東京圏に住む人の約6割が東京圏以外の地域と様々なつながり・縁を有していることが確認できた。人口流出が続く地方にとって、東京圏に住む人とのつながりや縁は、大きな可能性を秘めている。また、東京圏に住む人にとっても、地方とのつながりや縁は、将来のライフキャリアの選択肢を広げることにつながり得る。今後、東京圏に住む人々の地方との様々なつながり・縁を地域活性化につなげるための研究や取組をさらに進めて参りたい。

注)大学等進学先、二拠点移住地、別荘地についての結果は、研究所ホームページに掲載している。誌面の関係上、ここでは記載していない。

 

2020.09.01