一度きりで終わらない地域実習。「また来たい!」が溢れるまちへ。

著者
大正大学地域創生学科 生活指導員(阿南支局)
前田 あゆみ

はじめまして

大正大学地域構想研究所阿南支局の前田あゆみです。私は徳島県阿南市出身で、大阪や東京での生活を経て2023年10月に故郷へUターン。同時期に大正大学地域創生学部の地域実習が行われており、共通の知人を通じて阿南支局の鈴江支局長と出会い、生活指導員として実習サポートに関わることとなりました。当時27歳の私は、学生と年齢も近く、共に学び、悩み、楽しみながらの日々でした。2023年度の実習テーマは「富岡商店街の取材」で、InstagramやYouTubeを活用したショート動画制作を通じて商店街の魅力を発信するものでした。私は生活指導に加えて、情報発信やSNS運用の経験を生かし、動画編集のアドバイスや取材内容の整理などもサポートしました。東京からUターンを決意した時、「まちづくり」や「地方創生」の分野で活躍したいという思いがあり、鈴江支局長との出会いは大きな転機となりました。その後、実習指導をきっかけに、HP「阿南人」やSNSの情報発信、商店街活性化や若者人材育成など、阿南支局の各種事業に携わるようになりました。

今年度の地域実習

大正大学地域創生学部の今年の地域実習は26日間。12人の学生たちは小学校の授業参加、夕暮市場~ユウグレマーケット~ への出店、移住促進コーディーネーターの研修、農泊推進団体とのワークショップ、地域おこし協力隊との交流、農業体験や釣り、SUP(スタンドアップパドル)体験など、さまざまな体験を通じて阿南の”魅力”と”課題”を学びました。

移住促進コーディーネーターから学ぶ「移住についての勉強会」

吉井小学校の授業に参加。

これらの実習プログラムに加え、昨年度からは撮影した動画を編集し、若者視点から見た”阿南の魅力”として学生一人1本のショート動画を制作してもらっています。実習初日には「阿南で感じた魅力や思い出を全部を動画に撮っておいてね」と学生たちに語りかけるのが「阿南流」です。

ポタリング途中に足を止めて撮影する学生たち

映像として撮影、編集、発信する過程は、単なる思い出づくりではなく、自身の経験にきっと深く刻み込まれるはず。何気なく景色を眺めるのと、撮影し編集を行う時間とでは、思い出の定着に大きな違いが生まれます。そして完成した動画を見返すことで、綺麗な景色や人との出会い、その時の喜びや感謝、仲間との大切な時間が蘇る・・・形として残すことには、大きな意味があると感じています。「阿南人」のSNSを開けば、いつでも自分の動画が閲覧できて阿南との関わりを映像や音楽とともにいつでも思い出せます。初めは、「動画編集なんてやったことない」「完成できるか不安」と、乗り気ではない学生もいますが、動画が完成した時には嬉しそうな笑顔と達成感に溢れた自信たっぷりの表情で「動画を作って良かった!」と言ってくれます。最終日、名残惜しそうに涙を流す学生の姿もあり、阿南での経験が心に深く刻まれたことを実感しました。

冊子「阿南人 Ver. U I Jターン」の制作

実は、今年度実習の大きなテーマは冊子『阿南人 Ver. U I Jターン』の制作でした。13名の移住者の方々を取材し、「なぜ阿南を選んだのか?」「なぜ阿南へ帰ってきたのか?」という問いを通して、仕事や暮らしや価値観など、それぞれの人生に真剣に向き合いました。学生たちは、“未来の自分”と重ねながら様々な想いに耳を傾け、阿南で暮らす“移住者”のリアルな声を聞き取ったのです。この経験はきっと、これからの生き方や人生選択のヒントになるはずです。取材終了後に全員で内容を整理・分析すると見えてきたのは、移住者にも明確な“タイプの違い”が存在することでした。タイプ別マップを作成し、移住動機や価値観、ライフスタイルの傾向を分類・・・その結果、「ライフスタイル重視型(波乗りタイプ)」「地元愛・自己表現型」「異文化・事業創造型」など、多様な志向性が浮かび上がりました。一方、すべての移住者に共通していると感じたのは、「自分のペースで生きられる心地よさ」や「地域や人とのつながり」に価値を見出していることでした。阿南という地域は、単なる居住地ではなく、自らの生き方を主体的に選択できる環境であり、関係性の中で暮らしが成立する場所として選ばれていることがわかってきました。

完成した冊子「阿南人Ver.UIJターン」

取材終了後、座談会の様子

座談会から見えてきた「移住者タイプ別マップ」

また、冊子制作のほかにも学生一人ひとりが個人テーマを設定し、道の駅の活用、バリアフリー、行政広報、居場所づくり、農業、シビックプライドなど、多様な視点から調査研究を行いました。現場で得た気づきをもとに、取材やフィールドワークを重ね、時には仲間同士で意見交換を行いながら学びを深めていく姿も本年度実習の特徴でした。

個人テーマの取材で「阿南市社会福祉協議会」へ

「NPO法人自然スクールトエック」を見学

実習生が帰ってきた!

2026年2月、なんと、実習生全員が5泊6日のプライベート旅行で再び阿南に遊びにきてくれました。全員が帰ってくることは阿南支局創設以来、初めての出来事です。地域おこし協力隊の運営する宿泊施設に滞在しながら阿南の食事を楽しんだり、夕暮市場~ユウグレマーケット~を散策、フットサルをしたり、仲間の誕生日を祝ったり・・・地域を巡り、実習で育まれた「阿南ファン」としての関係が継続していることを嬉しく思います。そして、この絆がいつまでも続き、卒業後、社会人となり、行き詰まったときには阿南のことを思い出して、いつでも帰ってくる場所があることを忘れないでほしいです。

おかえりなさい!

夕暮市場~ユウグレマーケット~を散策!

徳島・阿南で働く魅力とは?

現在、私は「みなみ阿波」若者創生協議会の委員(阿南エリア担当)として、移住促進のためにSNSで県南部地域の暮らしや魅力を発信しています。このほど「徳島で働く魅力とは?」をテーマとした意見交換会で講演の機会をいただき、Uターン経験をもとに徳島で働く魅力をお話ししました。これまでの人生の流れや、Uターンを決意したきっかけ、そして地方で働く魅力、地方の若者がなぜ都心への憧れを抱くのか?など様々な切り口で私なりの講演をさせていただきました。都市部では役割や市場が固定化されている一方、地方にはまだ多くの可能性があります。未完成な部分、『余白』の部分が多いからこそ、自ら関わり、形にしていける余地があると私は思います。その”余白”を感じながら働けることが地方で働く魅力であり、またその余白を地域の人と一緒に考えていけることが阿南で働く魅力だと感じています。ワークショップには大学生、企業、地域おこし協力隊と様々な業種の方が集まり、移住理由や地域課題について意見交換を行い、多様な視点から議論を深めました。今後も、学生や地域の方々、移住者とのつながりを大切にしながら、阿南の魅力を内外に発信し、持続可能な地域づくりに貢献していきたいと考えています。

「徳島で働く魅力とは?」をテーマとした講演と意見交換会の様子

2026.03.02