離島の高校生56名と大正大学生6名が「島革命」を企てる!

著者
総合学修支援機構DAC 特命教授
山本 繁

2025年1月26日、大正大学と公益財団法人日本離島センターが共同主催する「アイランダー高校生サミット2024」がオンラインで開催されました。このサミットは、日本の離島に住む高校生たちに、地域の課題や可能性を多角的に理解・分析し、創造的な問題解決能力とリーダーシップスキルを養う機会を提供することを目的としています。

開催の背景

日本の離島地域は、固有の文化的遺産や豊かな自然環境を有する一方で、人口減少、高齢化、経済衰退といった深刻な課題に直面しています。これらの課題を解決するためには、次世代を担う子ども・若者たちの視点と創造的な発想が不可欠です。本サミットは、離島の高校生が地域の未来について考え、広域的な協力体制の形成を促進する場として企画されました。また、参加者同士が地域の枠を超えて交流し、多様な意見を交換することで、全国の離島が直面する共通の課題に対する理解を深めることができる貴重な機会となることを期待しました。

実行委員会の活動

サミットの企画・運営は、離島在住の高校生9名と大正大学地域創生学部の学生4名が参加する実行委員会が主体を担い、約7か月間にわたる準備が行われました。高校生と大学生が協働し、世代を超えた学びの場を創出しました。実行委員会メンバーは、プログラムの企画立案から当日の運営まで、主体的に取り組みました。この過程でメンバーたちは実践的なプロジェクトマネジメントスキルを磨き、リーダーシップの本質を体験的に学んだものと思われます。特に、オンライン環境でのサミット運営は独特の難しさがあり、ファシリテーションやコミュニケーション能力の向上にも寄与しました。

サミットの概要

テーマ:「合縁島縁(あいえんとうえん)~つなげよう、つながろう、私たちの離島~」
日時:2025年1月26日(日)10:00~16:00
形式:オンライン(Zoom)
参加者:高校生47名、実行委員など15名(高校生9名、大学生6名)

参加者は、全国の離島に住む高校生たちが集まり、それぞれの地域が抱える独自の課題や可能性を共有し合いました。サミットのプログラムは、参加者同士の相互理解を深めることを意図し、参加型学習と協調学習を基本に設計されました。

【プログラム構成】
オープニングセッション:サミットの理念の共有と参加者間の関係性構築
アイスブレイクセッション:多様性の認識と相互理解の促進
グループワーク:テーマ別の課題分析と解決策の立案
プロジェクト発表会:7つのテーマに基づく提案とフィードバック
振り返りと閉会セッション:学習成果の統合と今後の展望の共有

各セッションは、参加者が主体的に学び合い、グループでの議論や発表を通じて、地域課題の解決に向けた具体的な提案を行いました。また、地域の実情に即したアイデアが次々に発表され、その内容に対しては専門家からのフィードバックも行われました。

主な成果

参加者たちは7つのテーマに基づいて、地域課題を解決するための具体的なプロジェクトを立案しました。以下はその概要です:

島の教育革命:離島間での遠隔教育システムを構築し、教育の質の向上を目指す
島の広報革命:SNSを活用して、若者目線で島の魅力を発信するプロジェクト
島の観光革命:エコツーリズムを推進し、環境保全と観光振興の両立を図る
島のスポーツ革命:離島の特性を活かしたユニークなスポーツイベントを企画・発信する
島の環境問題革命:海洋プラスチック問題に取り組む島民参加型リサイクルシステムの提案
島の文化・伝統革命:地域の伝統文化を現代的な視点で再発見し、地域資源として活用する
島おこし革命:地域資源を最大限に活用した持続可能な地域振興計画

これらの提案は、情報テクノロジーやSNS、地域資源を活用した独自の解決策が含まれており、高校生ならでは自由な発想と実現可能性(地域密着型の具体的な提案)の観点から高い評価を受けました。特に、教育分野や環境問題へのアプローチが注目され、離島特有の問題に対する理解が深まるとともに、具体的な解決策の提示が行われました。

参加者の多様性と地域的広がり

本サミットの特徴的な点は、その地理的な多様性にあります。参加者は、北は奥尻島から、南は石垣島まで、日本全国の離島から集まりました。各地の高校生たちは、地域が抱える独自の課題や可能性を共有し、他の地域の成功事例や取り組みから学びました。また、今回の交流を通じて、単なる情報交換を超えて、離島という共通の背景を持つ若者たちの絆・連帯感が醸成されました。地域を超えたネットワーキングが新たな協力の可能性を生み、離島間の継続的な交流の礎が築かれた瞬間でした。

山内洋大正大学副学長と運営委員長田中晴樹さん(地域創生学部4年)

今後の展望

サミット参加者からは、地域間比較を通じて問題意識が深まり、協働的な問題解決のプロセスを学んだとの報告がありました。また、自己効力感の向上や地域貢献への意欲が喚起され、離島間ネットワークの構築を通じた新たな協力関係の萌芽が見られました。実行委員として参加した大学生たちは、リーダーシップスキルや企画運営能力が向上したと実感しており、本サミットは次世代リーダー育成の場として機能していました。(もちろんそれもサミットを若者たちによる実行委員会形式で開催する狙いの一つです。)

アイランダー高校生サミットは、離島が直面する複合的な課題に対し、次世代の若者たちが創造的な視点と行動力を結集する重要な場です。本サミットで育まれた問題意識とパートナーシップは、離島地域の持続可能な発展に向けた新たなパラダイムの萌芽を示します。今後も進化を続け、離島の未来を担う若者たちの可能性を引き出し、社会にその声を届ける重要なプラットフォームとして成長していきます。

大正大学と日本離島センターは、今後もこのような取り組みを通じて、離島地域の持続可能な発展と人材育成に貢献していく所存です。特に全国の離島在住の皆様には、引き続きご支援を賜りたくお願い申し上げます。

2025.02.17