インバウンドをターゲットにした仏教イベント
少し前の話になりますが、2023年11月11日に大正大学南門広場で、第2回種子地蔵縁日が開催されました。大正大学が接している旧中山道は、江戸時代に種子屋街道と呼ばれ、種苗問屋や販売店が多く並んでいました(詳細はこちら(https://chikouken.org/report/report_cat04/14005/)をご覧ください)。2021年12月に開催されたプレイベントとしての「種子屋街道さんぽ市」、2022年11月の第1回種子地蔵縁日に続いて実施された第2回は、観光庁の実施する「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」の採択事業として、主に外国人観光客をターゲットに様々なコンテンツを準備しました。
今回もこれまでと同様に「すがもプロジェクト」という地域活動を展開している学生が中心になってコンテンツを企画。学内の農園で育ててきた伝統野菜を通して、“農と食と歴史”を感じるマーケットやワークショップ、キャンパス農園ガイド付きツアーなどが展開されました。また、学生が制作したスポット紹介の観光コンテンツが、この縁日で公開されました。本稿では、その様子を紹介します。
鴨台観音さざえ堂がある南門広場で開催
“農と食と歴史”のコンテンツ
今回の縁日でおこなわれたコンテンツは下記の通りでした。
① 種子地蔵クイズ
② 御朱印
③ さざえ堂参拝ツアー
④ キャンパス農園ツアー&芋堀り
⑤ 足湯
⑥ 銭湯スタンプラリー
⑦ すがもプロジェクトパネル展示
⑧ 写経体験
⑨ 飲食販売 (江戸東京野菜/りんご飴/大学芋/滝野川焼きそば/野菜スープ/ポップコーン)
⑩ 江戸東京野菜の種の配布(株式会社日本農林社 協賛)
⑪ 種子地蔵「一粒万倍シール」の配布
⑫ 観光用スマホガイド「くノ一(くのいち)戦隊 ~巣鴨の街を取り戻せ~」紹介
⑬ 第11回鴨台祭・第13回鴨台盆踊り合同報告会
多くのコンテンツで外国人が参加できるように英語表記の案内を準備するなど、インバウンド向けの対応をおこないました。その中でも⑫の観光用スマホガイドでは、実際に外国人の学生と共に大学周辺の観光地域を巡りました。
観光用スマホガイドを企画したのは、すがもプロジェクトの「観光班」。春から集まった学生たちは、「おばあちゃんの原宿」と呼ばれる巣鴨がコロナ禍以降、にぎわいを失っていることを大きな課題として捉えました。そして、2022年末頃から大幅に増加している外国人観光客をターゲットにして、外国人でも楽しめる巣鴨観光をテーマに観光用スマホガイドを作成しました。
作成にあたっては、位置情報と連動して自動的にその場に応じた音声や音楽が流れるLocatoneというサウンドARコンテンツを用いました。その上でくのいち戦隊というキャラたちが、ストーリー仕立てで随所随所の観光名所や特産品売り場などで案内をしてくれるというものです。
日本語版の他、英語版も準備され、モニターツアーが展開。モニターツアーには、大正大学の学生だけでなく、神田外語大学の留学生や今回の採択事業の企画で連携している大阪・追手門学院大学の学生が参加しました。学生らは、巣鴨地蔵通り商店街から庚申塚商栄会にいたる旧中山道の歴史を観光用スマホガイドで理解しながら、そこでしか食べられない美味しいものを堪能しました。
スマホ片手に観光名所を巡る
「巣鴨は大学のキャンパス、大学は巣鴨の観光地」
モニターツアーを終えた学生たちは縁日を楽しんだのちに、⑬の第11回鴨台祭・第13回鴨台盆踊り合同報告会に参加しました。大正大学の二大イベントとなっている鴨台祭と鴨台盆踊りの報告を初めて合同でおこなうものでしたが、参加した他の大学の学生や外国人留学生から様々な意見をもらうことで、さらなる改善を図っていこうという目的で開催されました。
そこで出た言葉が「巣鴨は大学のキャンパス、大学は巣鴨の観光地」でした。2026年の大正大学創立百周年に向けて大学は、巣鴨や大学周辺のまち全体がキャンパスであることを打ち出しました。一方で、今回報告された鴨台祭や鴨台盆踊りなどの大イベントや、今回のような縁日で大学にたくさんの人が遊びにきています。しかも国籍を問わず、です。昨年の鴨台盆踊りでは多くの外国人の方が踊っていたのも印象的でした。この様子は、大学はすがもの観光地、そしてコミュニティを構築する空間の一つとなっていることを表しています。
種子地蔵縁日は、大学周辺の地域の歴史や伝統を掘り起こして新たに開催されました。それは、この地域しかもっていない価値を魅力化したということです。今後も大正大学だからこそ、大正大学の学生だからこそ可能な活動を展開していきたいと思います。
報告会での学生間交流