著者
大正大学地域創生学部 専任講師
米崎 克彦
本稿では、大正大学地域創生学部で行っている地域実習について新たなコンセプトを紹介し、また現時点での簡単な報告をおこなう。
地域創生学部の地域実習は、この2年間、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」と称す)の影響もあり、オンラインを中心とした実習を行ってきた(多くの地域の関係者の皆様のおかげで、想像以上の成果を出せたと考えている)。
様々な対策が進んだこともあり(いまだに新型コロナのリスクはあるが)、本年度からは、本格的な地域における実習活動を再開している。それに伴い、学部創設時からの実習の在り方について再検討を行い、新しい枠組みでの再スタートをきった。そもそも実習の在り方についての検討は、新型コロナが蔓延する前から検討されていたが、ここ2年はそれらを実行に移す状況ではなく、本年度も影響が完全になくなったわけではないが、大学としてできる対策をおこなったうえでの試行となっている。
旧来は、1年生と3年生が地方地域で実習をおこない、2年生では東京で地方と東京の関係を考える実習を行ってきた。対して、本年度からは、1年生は教員別に設定されたテーマ別の実習を首都圏で行い、2・3年生は、様々な地域での実習を行う形となっている。
この変更の第1点目の狙いとしては、4年次に作成する卒業研究・卒業論文にどのようにつなげていくのか、という点である。1年次からの流れを再考し、個々人のテーマ設定をどのように積み上げていくのかということを念頭に置いている。1年次は設定されたテーマの下で活動し、個人研究を実施するための基礎を実習経験から身につけることを目標としている。2年次では、グループ別に様々な地域における課題を経験し、その中で個々人のテーマ作りに結びつけることを目標としている。中には既に個人でのテーマを見つけている場合もあり、その場合、自分のテーマとその地域での関係性を調査する自主活動もおこなう。そして、3年次では、自分のテーマを設定し実習を行う地域・期間を自分で計画して活動する。
2点目としては、1点目とおおいにかかわってくるが、学生が自分で選ぶ・判断する機会を大幅に増やしている。3年生は、実習地および実習計画のすべてを指導教員と相談の下、自分で考えることが基本となっている。1年生の首都圏プログラムにおいても、人数調整の問題もありすべてではないが、希望をとりどのような活動を行うのか自分で決めている。
ここからは、私の1・2年生対象の首都圏プログラムと、3年生のゼミ生の実習について紹介する。
[実習全体としては詳しくは本学部ブログおよびインスタグラムを参照してください。]
学科ブログ:
https://www.tais.ac.jp/faculty/department/regional_creation/blog/20221010/78626/
学科インスタグラム:
https://www.instagram.com/taisho22.chiikikouhou/?hl=ja
本年度からは、多くの教員は、実習期間を通して巣鴨において、1年生と2年生のうち首都圏を活動地域とした学生のためのプログラムの担当と、ゼミに所属する3年生とデジタルプレイスなどのオンラインのツールを利用した実習に取り組んでいる(ここに卒業論文を抱えた4年生も…)。
首都圏のプログラムは、実習期間を前半・後半と分け、それぞれにテーマ別のプログラムが動いている。
前半戦の2週間は、「フードロスと経営問題」をキーワードとして活動した。特に“フードロスとは”ということを、様々な視点から調べ、議論することによって学生達なりの考えを深め、「定義」することを徹底的におこなった。学生にとっても、当たり前に聞くワードではあるが、説明しようとすると意外と難しい言葉でもある。日本におけるフードロス(食品ロス)と海外でのFood loss およびFood wasteの違いの発見、調べる過程や議論を進めることなど、短い期間で繰り返しやった経験は今後にもいきると考えている。
また、本学部の高柳先生を中心として学生達が商品開発から販売まで行っているガモール堂に参加している先輩達から話を聞き、さらにガモール堂がフードロスに取り組むにあたり重要なパートナーである東京中央卸売市場・豊島市場で食品ロスの話を聞き、現実の一端を見学し、学生自身で想定していたこととのギャップを感じることができた。現場を見るという重要性を感じてくれたのではないかと考えている。
経営という視点からは、ガモールの先輩の話だけでなく巣鴨地蔵通り商店街にあるマルジさんの工藤社長さんからも貴重な話を聞いた。
後半戦は、「東京一極集中はいいのか/悪いのか… – 通説を批判的に考えてみる -」をテーマにプロジェクトに取り組んだ。前半戦同様、当たり前…と思いがちのことを改めて考える。まずは「東京一極集中とは、○○である。」と定義するところから始め、どのような現象であるのか、そもそもいつからおこっているのか…グループで議論してみると、なかなか統一見解を生み出すところまではいかない。様々な文献を探しに、Webの世界、大学の図書館、そして国立国会図書館へ。最終的には、“何が問題なのか”を自分達なりに考え、そこから自分の視点/切り口において是か非か、しっかり理由もつけて述べられるように取り組んていた。
また、私の3年生のゼミ生は、主に“まちづくり”に関係したことを調査するために、京都市と越前市(福井県)などに滞在した。
京都市では、生活空間に注目し、その向上を念頭に置いたまちづくりを調査した。特に空き家(主に町屋)の活用方法について、市役所・事業者・住民・研究者など多くの方にご協力していただき貴重な話を聞くことができた。
【京都】
越前市においては、越前市のまちづくりにおける現状と課題について、市役所や多くの住民の方からお話を聞き、コンパクトシティというキーワードを深く考える機会をいただけた。合併や新たにできる新幹線駅の影響、街のグランドデザインや公共交通の取り組み等現場の工夫や苦労などかかわった人でなければわからない貴重なお話を聞くことができた。これらの貴重な経験を、次年度の卒業研究に行かしていけるように、こちらも指導をしっかりとやっていきたい。
【越前】
本稿では、本年度から再スタートを切った本学部の地域実習の一部を紹介した。多くの方にご協力いただきき、 うまく再スタートをきれたと考えている。来年度以降も様々な自治体、関係者の皆様にご協力のお願いをさせていただくと思います。その節は、何卒よろしくお願いします。