ICT×ローカル人材育成:2年目を迎えた「藤枝市未来型人材育成プロジェクト」はどんなプログラムで進んでいるのか?

著者
大正大学地域構想研究所 地域支局研究員
天野 浩史

著者
大正大学地域構想研究所 地域支局研究員
天野浩史

地域構想研究所藤枝支局では、昨年度に続いて「藤枝市未来型人材育成プロジェクト」に今年度も関わり、今年は「学びのナビゲーター」として企画段階から参画しています。昨年度の様子は【藤枝発、ICTと地方創生】というシリーズで2回に分けてレポートしてきましたので、ぜひそちらもご笑覧ください。今回のレポートでは、今年度にリニューアルした本事業について、少しご紹介したいと思います。

⇒【藤枝発、ICTと地方創生】
(1)学び合いコミュニティを通じて人材育成と企業とのマッチングを進める「藤枝未来型人材育成プロジェクト」
(2)「意味を共につくる」思考で地域をつくる−藤枝市未来型働き方セミナーの講演から

今年度は、昨年度の課題でもあった「カリキュラム設計」について見直しを行い、「未来型ワークゼミ」という名称で、「スキル&キャリアアップコース」、「ワーキングママコース」、「学生コース」の3コースに分けて修了要件や科目設定をリニューアル。夏前に募集を開始し、8月20日から9月3日の間に複数日にかけて開講式を実施し、3コース合わせて31名のゼミ生が入講してくださいました。

 

昨年は「なんとなく学び始める」という状況になってしまった方も多かったので、今年の開講式では「これまで私は何を学び、何を経験してきたのか?」「私はどんな人なのか?」「なぜ、私は学びたいと思ったのか?」という問いをお渡しし、自分自身の学びの目的を言語化し、ゼミ生同士で共有していただきました。その後、個別のオンデマンド動画を順次受講していき、合間に演習を行うのが、今年の大きな改良点です。

 

専用のSNS上で学び、気づきを共有し合うのが未来型ワークゼミの特徴。また、私も「プロジェクトマネジメント論」と「未来型働き方概論」を担当しております。こういった動画を見ながら、受講生は好きな時間に何度も学びを深めていきます。

 

開講式から約1ヶ月後の中間演習では、コース混合で集まり、基礎編の学びを対話しながら整理していきました。学生や専業主婦の方、そして働いている方も住まいも業種もバラバラな多様性の中での学びは、日頃とは異なる刺激と気づきがあったようです。

 

秋から冬にかけてはそれぞれのコースの応用編の講座が始まり、現在再び個々で学びを深めている真最中です。私が主に担当となった「ワーキングママコース」「学生コース」では、藤枝市内の自動車販売会社から販売・ブランディングに関する実際の事業課題をいただき、そちらの課題に対してゼミ生がプランニングと提案を行うことをゼミの修了課題にしています。来週から修了課題へのチャレンジ(修了演習)が始まっていきますが、どんなプランがゼミ生から出てくるのか、とても楽しみですし、マーケティングやプランニングの需要が高い地方企業にとっては貴重な機会でもあります。「学び」を通じて双方にメリットのある形にしていくことも、重要な設計上の課題です。

DX・デジタルに大きく舵を切り、テクノロジーとのよき向き合い方やスキルが益々求められてきていますが、能力開発・学習の機会は社会的に、特に地方では未だ十分ではないと感じています。コロナ禍で「場所を選ばない働き方」の文化が芽生え始める中、ICTやマーケティングなどを知識だけではなく実践的な学びができるこういった人材育成機会の需要は、地方にこそ高まっていくのではないでしょうか。来年2月には修了式とリフレクション(振り返り)が行われますが、無事に全員に修了証をお渡しできるよう、引き続き支局としても学びの促進に取り組んでいきたいと思います。こちらをご覧いただいています各自治体の皆様も、それぞれの自治体にてICT、テクノロジーとローカル人材育成の機会づくりに、今だからこそぜひチャレンジを。藤枝の事例が参考になれば、幸いです。

2021.12.01