最新レポートVol.3

著者
大正大学地域構想研究所 研究員
小野寺正博

今年度に新たに開始した「2020年度共同商品開発プロジェクト」もコロナ感染症拡大の影響により、思うように進めることが出来ていなかったが、前回のレポートで報告したとおり7月末に第1回目の共同商品開発プロジェクト協議会を開催することができた。そして、県をまたぐ出張の自粛も徐々に緩和された9月より、順次、現地に出向き打合せを行ってきた。自粛期間には各自事業者とオンラインミーティングによる検討を重ねてきた。その準備段階を経て、今回の現地訪問で直接お会いして行った意見交換は、オンラインミーティングで蓄積した情報量もあり、内容が濃く質の高い話し合いができたと実感した。ここで各プロジェクトの進捗状況を報告する。

① 水谷商店(連携自治体:静岡県静岡市)

大正十年創業、桜えび、しらす、削り節など伝統的な製法で丁寧に加工する老舗の水産加工品会社。

■開発商品:地域産品を活用した乾物、出汁商品
・協議会委員である㈱コープニュース 田中陽子氏の協力を得て、静岡市由比港ならでの素材を活かし、からだに優しい出汁の配合、試作開発を行っている。現地では自治体の方と一緒に由比漁港の見学も行ってきた。

② TEA SEVEN協同組合(連携自治体:静岡県藤枝市)

静岡県藤枝市で茶商6社と生産農家1社でチームを組み、 安心・安全・高品質なお茶やお菓子を製造・提供に取り組んでいるチーム。

■開発商品:無農薬・有機栽培の国産紅茶製品
・現時点では本プロジェクトが一番進んでいる。商品コンセプト、バリエーション展開等が概ねかたまった。現在はパッケージデザインの製作及び、内容量や価格設定の最終的な調整している段階である。ここでは、協議会委員でもある㈱ビーワイオー ⾷品セレクトショップ「日本のご馳走えん」マネージャーの有馬毅氏より、店舗の棚で訴求力あるパッケージングや消費者が買いやすい価格設定などのアドバイスをいただきながら進めている。

③ 株式会社コダマ(連携自治体:宮崎県日向市)

独自技術で精米した発芽玄米で知られ、地元の生産者と組んで、有機JAS認定製造者として安全と安心を消費者に提供している事業者。

■開発商品:新たなブレンドによる雑穀米
このプロジェクトも協議会委員である㈱コープニュース 田中陽子氏の協力を得て推進している。オンラインミーティングでは概略の話しで終始することが多かったが、現地での打合せでは、どのような消費者をターゲットとした商品にするのか等、事業者のこれまでの経験と研究所のリサーチ結果の意見交換をし活発な議論をすることができた。意見交換から得られた情報をもとに最終的な商品仕様を検討中である。

④ チーム和泉侃(連携自治体:兵庫県淡路市)

香りのアーティストとして知られる和泉侃氏監修の淡路島産ハーブ製品。「香りの島」淡路市のブランディングと連動した製品を開発する。

■開発商品:淡路島のハーブ生産者と連携したハーブティー
現地訪問では、和泉侃氏と共に本プロジェクトで商品化するハーブティーに使用する有機JAS認証の生産者、自然農法を実践する生産者を訪問させていただいた。生産者の熱意や苦労話し、また愉しさを聴くことができた。畑も見学させていただき、化学肥料、農薬不使用のハーブのその場で食べさせてもらい香りや食味の良さを肌と舌で感じることができた。もうすぐ収穫シーズンを迎え、和泉侃氏による最終的なブレンド、商品仕様を固める段階に入っている。

⑤ 赤田刷毛工業株式会社(連携自治体:岐阜県中津川市)

1925年創業の刷毛メーカー。伝統技術と独自の機械化との融合を図りながら、幅広い用途の刷毛を製造。画家、建築職人等の匠をはじめプロが愛用している。

■開発商品:刷毛伝統技術を活かしたキッチンブラシブラシ
本プロジェクトは事前に数回のオンラインミーティングを実施し、試作開発品のやり取りも行っていた。

試作開発品は、協議会委員である料理研究家の橋本加名子氏にモニターとなっていただき、料理教室や書籍撮影調理の現場、プライベート等で1ヶ月間使用していただいた。現地訪問打合せでは、橋本加名子氏のモニタリングのフィードバック、また、今後の市場動向について意見交換、話し合いをした結果、新たな方向性の商品展開に舵を切ることを事業者が決断した。本記事を執筆している今日、その試作品が出来上がった報告を受け、送られてくる試作品を見るのが楽しみである。とともに、受取次第、使用感などのマーケット調査を実施する。

今回の現地訪問で直接お会いし事業者と私たちのお互いの意見を交わしあったことでプロジェクトの進捗が一気に進んだ感触が得られた。生産現場を見学させていただき、その技術力やノウハウのレベルの高さを実感し、また、商品開発のアイデアにも繋げられたことは収穫であった。各プロジェクトの今後の展開が愉しみである。なお、鋭意開発中であることから商品の詳細を申し上げられない点はご容赦いただきたい。次のレポートでは完成品の紹介もできるのではないかと思っている。

2020.11.02