最新レポート vol.1

著者
大正大学地域構想研究所 教授
北條 規

新型コロナウイルス感染拡大は地域経済に甚大な影響をもたらしている。国の成長戦略で地方創生の柱でもある観光業は、国内外の観光客の大幅な減少、伝統行事・イベントの中止や延期に伴う地域での観光消費の落ち込み、宿泊業、飲食業も休業などによって戦略の見直しが求められている。また、製造業においては従業員の休業による工場の操業停止をはじめ、製品の販路を開拓する国内外の展示会中止が相次ぎ、バイヤーとサプライヤーを繋げる新しいマッチングの機会損失によって、ビジネスチャンスを失った事業者が大半である。地域経済を支える中小企業・小規模企業者や一次産業生産者にとっては、事業存続にも関わる重大な事態となっており、実態経済への影響も深刻化している状況だ。

さて、昨秋に連携自治体に案内を出した「共同商品開発プロジェクト」だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で始動が遅れたものの、申請のあった事業者や自治体とのヒヤリングをzoomに切り替えるなどして対応し、ようやくプロジェクトに参加する事業者が出揃ってきた。開発期間が短くなったことから今年度はお断りせざるをえない申請案件もあったが、移動制限が解除となった7月から現地での打ち合わせ、専門家による協議会を開始する。全体のスケジュールが計画より遅れているが、今年度中には商品化と流通でのデビューに向けて動いていく。

2020年度の「共同商品開発プロジェクト」の公募をしてから、連携自治体からは開発分野、販路、アライアンスなど問い合わせや、自治体の産業支援政策や地域ブランドとの関係性、域内の座組みなどの相談も寄せられたほか、すがもで展開するアンテナショップ「座・ガモール」での取り扱いや開発プロセスの中での学生の関わり方などの相談もあった。新型コロナウィルス対策の中、対応していただいた関係した自治体担当者には心から感謝申し上げたい。

本学から事業者に直接アプローチしたものも含めて以下の事業者が参画することとなった。(検討・調整段階は除く)

水谷商店(連携自治体:静岡県静岡市)

大正十年創業、桜えび、しらす、削り節など伝統的な製法で丁寧に加工する老舗の水産加工品会社。

<開発予定商品>地域産品を活用した乾物、出汁商品

https://mizutani-s.jp/

TEA SEVEN協同組合(連携自治体:静岡県藤枝市)

静岡県藤枝 市で茶商6社と生産農家1社でチームを組み、 安心・安全・高品質なお茶やお菓子を製造・提供に取り組んでいるチーム。

<開発予定商品>無農薬・有機栽培の国産紅茶製品

https://www.facebook.com/pages/category/Food—Beverage/TEA-SEVEN-193547631505699/

株式会社コダマ(連携自治体:宮崎県日向市)

独自技術で精米した発芽玄米で知られ、地元の生産者と組んで、有機JAS認定製造者として安全と安心を消費者に提供している事業者。

<開発予定商品>新たなブレンドによる雑穀米

http://kodamaltd.com/

チーム和泉侃(連携自治体:兵庫県淡路市)

香りのアーティストとして知られる和泉侃氏監修の淡路島産ハーブ製品。「香りの島」淡路市のブランディングと連動した製品を開発する。

<開発予定商品>淡路島のハーブ生産者ら連携したハーブティー

http://izumi-kan.jp/

赤田刷毛工業株式会社(連携自治体:岐阜県中津川市)

1925年創業の刷毛メーカー。伝統技術と独自の機械化との融合を図りながら、幅広い用途の刷毛を製造。画家、建築職人等の匠をはじめプロが愛用している。

<開発予定商品>料理人が使う調理器具お手入れブラシ

http://www.akada-brush.com/

今後、7月27日の専門家協議会で改良点などアドバイスをいただき、来年の2月の展示会出展、商談会に向けて開発作業をすすめる。なお、進捗状況については地域構想研究所HPもしくは当メールマガジンにて共有する。

2020.07.01