五年毎に改定される政府の少子化社会対策大綱が新たに発表された。
2019年の子供の出生数は、とうとう90万人を切り、86万人台へと突入した。これは政府予測より二年早く、合計特殊出生率は、1.42と前年より0.01ポイント下がった。このままのスピードで少子化が進めば、現在20歳の若者が65歳となる2065年に日本の人口はおよそ8800万人台となる。
人口減少は国防、社会保障など国の根幹制度を揺るがす。人口は国家を構成する重要な要素である。しかし、人口減少のサークルに入った国はなかなかそこから脱することはできず、人口減少のデフレ状態になっていく。人口減少をいかに緩やかにし、過疎で苦しむ地域やすでに財政を圧迫している社会保障制度を支えていくのか。今回の大綱では、少子化の最大の原因は「未婚化」であるとの認識の下、若者の雇用の安定が謳われている。正社員と非正規社員の婚姻率は、反比例の関係にあることから、若者の雇用の安定は少子化に資する。コロナ後の社会において、景気が低迷すればそれだけ非正規が増え、そのことが少子化対策にも大きな影響を及ぼす可能性に対して、政府は強い警戒感を持ち、少子化対策として時限的措置として、「誕生祝い金100万円」といったような思い切った政策も必要となってくるだろう。
新たな項目として、不妊治療の保険適用に向けた検討といった文言が入ったことは注目に値する。
2005年には29歳以下で出産する女性よりも30歳以上で出産する女性数が多くなり、現在までその傾向は変わらない。30歳以上での出産が当たり前となりつつある中、1985年に40代で出産する女性は、およそ8400人にすぎなかったが、現在、その数は、5万2000人を超えている。そして、16人に1人、およそ5万人は体外受精児であり、不妊治療は45万件に迫る勢いだ。不妊治療に対して、国からの補助はあるものの、高額な自由診療であることで、不妊治療を途中で断念したカップルも多いだろう。これだけ多くの人々が不妊治療をしている中、保険適用の検討について大綱に記載されたのは今回、初めてである。今後の5年の間に、効果的な治療についての保険適用の実現に向けて、政府は取り組みを加速してもらいたい。
さらに、高等学校等における妊娠した生徒への配慮という項目もまた初めて明記された。近年の人工妊娠中絶件数は16万件程度であり、そのうち、25歳未満は5万件を超える。望まない妊娠を防ぐ取り組みとともに、スウェーデンのように学生でも育児休業給付金が給付されるなどの支援も今後考え得る具体策の一つとなっていくだろう。