設立にあたって

現代地域社会は、高度産業化社会にあって、従来の枠組みに収まらない国際的広がりを持ち、農・工・商、各種先端産業などが密接な関係性を持つ複雑な産業形態と多様な価値観に基づくライフスタイルが混在する多元的状況となっています。

近年、特に農村地域は課題が山積みですが、解決の糸口として地域住民だけでなく都市部の住民も消費者の枠組みを越えて様々な形で交流し、地域の活動に参画し、その運営にかかわるようになっています。都市と地域との交流から広域的なコミュニティが展望されようとしつつあり、このことが地方地域の活性化を促すと共に、都市部の課題に対する解決の糸口にもなろうとしています。また3・11震災以後、防災、減災の観点を含めハードに頼らないソフト面での地域資源の適切な管理活用による環境保全や、コミュニティ、地域外とのネットワークの絆を見直す動きが活発になっています。

一方、これまでわが国においては、大学等の教育・研究活動の中で地域資源を対象に様々な高度専門職業人を育成してきました。その分野はバイオサイエンスから観光分野に至るまで多岐にわたっています。今後はこれらの能力を効果的に結び付け、地域創生に貢献する力として統合していく人材の育成が求められています。すなわち、専門分野間をつなぎ相乗効果を引き出す人材の必要性です。

さらに、地域の持つ潜在能力の活用を担う人材養成と、人・モノ・仕事が結び付いた生業・6次産業等の新たな地域ビジネスの期待が高まっています。

こうした状況下、日本がグローバル化される中で、日本独自の風土・文化に基づいた、地域内だけに限定されない社会貢献度の高い生業創出と人間性豊かな活力ある地域づくりが求められています。

大正大学地域構想研究所は、こうした社会的状況や現代的ニーズを真摯に受けとめ、本学の新たな使命として現代の日本における地域創生や地域課題解決のための基礎研究を行い、研究所が独自に政策を構想し、学術的な英知を集め、地域の連携(地域内連携、広域地域連携)を促し、地域創生のための新しい価値を「共創」することによって地域や社会に貢献したいと考えています。 また「日本と地域の希望と未来」を志向する研究活動と、地域を構想する高い能力を持つ人材の育成事業を実施し、社会や地域に大きく貢献していく機関として設立しました。

地構研の取り組み指針

計画策定、実践・事業化、持続的運営まで見据えた構想づくり

地域事情(課題・ニーズ)、価値・志向性、人材・地域資源、潜在能力(地域独自の叡智と技術、伝統)などに基づいた具現化策(計画策定、実践・事業化)と持続的運営体制までを見据えた「地域構想」を行います。

地域とともに考え、行動し、取り組む

地域社会の人々は、自分たちの運命を自分たちで決める潜在的な力をもっています。地域との教育・研究活動を通じて、地域自己決定の努力を支援し、潜在能力を引き出し、それに根ざした協同的実践を重視します。

地域概念の拡大による地域実践の可能性拡張

地縁的概念だけでなく、テーマ型、ネットワーク型の地域概念を導入することで、産官学民から地域参画の潜在的主体を積極的に掘り起こし、目標達成に向けた実践可能な枠組みを広げます。

インターローカリティによる地域イノベーション促進

各地域の実践を効果的につなぐことで、相互学習を深め、課題解決と新たな価値創出に向けた地域イノベーションを促進します。