社会実験としてのコミュニティカフェ

著者
大正大学地域構想研究所助教
髙瀨顕功

市ノ坪コミュニティカフェ

川崎市武蔵小杉地域では、近年、タワーマンションが林立し、日本社会のトレンドとは異なる人口増加を経験しています。一方、急激な人口の増加は、地域住民の交流に弊害をもたらすこともあります。私たち研究グループでは、地域自治会の協力の下、新たな地域住民参加の場を創出することをめざし、町会会館でコミュニティカフェを実験的に開催することにいたしました(開催経緯や地域課題についてはこちらを参照)。

「市ノ坪コミュニティカフェ」と名付けられたこのコミュニティカフェは、2018年10月6日、11月10日、12月8日の計3回開催されました。また、ワークショップには、地域住民のニーズを把握するため、〈レクチャー型〉〈共同作業型〉〈ものづくり型〉という異なるタイプの内容を企画しました。以下に、その成果をご報告させていただきます(詳細な報告は『地域構想』Vol.1をご参照ください)。

〈レクチャー型〉ワークショップ

10月6日(土)14:00~16:00、東京都長寿医療センター研究所の岡村毅氏(精神科医)を招いて、「この町で上手に歳を重ねるために」と題した、ミニレクチャーと茶話会を実施しました。

ミニレクチャーでは、認知症に関する様々な知識や予防方法のほか、最近の潮流として認知症になっても住み慣れた場所で暮らせる地域づくりが注目されていることなどをお話しいただき、その後、体験談や感じたことなどを自由に話せる茶話会を行いました。

参加者は、町会婦人部を中心に10名ほどでしたが、町内だけでなく隣接する地域からの参加もあり、町会の範囲を超えた地域住民が集う場となりました。また、参加者の年齢層も高く、当事者意識を持つ人、あるいは介護経験を有する人の参加が多く見られました。

〈レクチャー型〉ワークショップ
この町で上手に歳を重ねるために

〈共同作業型〉ワークショップ

11月10日(土)14:00~16:00、地域間、世代間交流をめざすワークショップとして「まわしよみ新聞」を実施しました。まわしよみ新聞とは、①新聞を読み、気になった記事を切り抜く、②切り抜いた記事を紹介し、選んだ理由を話す、③切り抜いた記事を再編集し壁新聞を作る、という3つの工程をグループで行うことで、自然とコミュニケーションが生まれるというものです。

当日の参加者は10名ほどで、地域外からの参加はありませんでしたが、大正大学の学生が参加したことで、参加者の年齢層の幅が広がり、多世代交流の場となりました。ワークショップ後には、「手軽なわりに話が盛り上がった」との感想があった一方、「新聞だと字が読みにくく、年寄りにはハードルが高い」という声もありました。

〈共同作業型〉ワークショップ
まわしよみ新聞

〈ものづくり型〉ワークショップ

12月8日(土)14:00~16:00、子ども向けの企画にすることで、子育て世代まで対象を拡大し、さらなる多世代交流を生み出すことをめざして「松ぼっくりでクリスマスツリーづくり」を実施しました。

これは、松かさ(松ぼっくり)を色塗りし、モールやビーズで飾りつけることで小さなクリスマスツリーを作成するというものですが、ツリーづくりが難しそうな子ども用に、雪だるまやサンタクロースなどの塗り絵も用意し、多くの子どもが参加できるよう工夫しました。

当日の参加者は14名ほどで、そのうち6名が子どもでした。参加者からは、「子どもと作ってみたいと思っていたので楽しく参加できた」「町内住民ではないが、こういう地域のイベントが好きなので楽しかった」「次もあればぜひ来たい」といった感想があり、継続して開催していく中でコミュニティカフェのニーズも感じられました。

〈ものづくり型〉ワークショップ
松ぼっくりでクリスマスツリーづくり

まとめ

各回で実施したアンケートから、第1回と第2回では、60歳から70歳の参加者が多数を占めていたのに対し、第3回目は若い親子の参加も見られたこと、参加者は総じて市ノ坪地域の方が中心だったが、苅宿、小田中、今井などの他地域の住民の参加もあったこと、また、女性が多数を占めていたことが明らかになりました。

参加経路については、市ノ坪では地域住民間でのネットワーク(連絡網、口コミによる紹介)を通しての参加が主な経路だった一方、他地域からは、市ノ坪上町内会の掲示板を通しての参加もみられました。

大正大学での実践(コミュニティカフェ実施報告(1)コミュニティカフェ実施報告(2))に比べ、参加者数は少なかったものの、テーマやイベントでの楽しみを共有することで、これまで接点のなかった住民同士が交流できる可能性も感じられました。

今回の社会実験を通じて、物理的、人的資源を持たない場所での「集いの場」創出には、地域住民や自治会・町内会などの理解と協力がいかに得られるかが重要であること、また、既存の組織が持つネットワークの強さは、地域福祉の資源としても援用可能であることがわかりました。ワークショップの内容とともに、地域住民を巻き込む仕掛けに関する重要な知見が得られたと思います。ご協力いただいた市ノ坪上町会の皆様、ありがとうございました。

2019.03.29