援助希求を発見する「集いの場」づくり

著者
大正大学地域構想研究所助教
髙瀨顕功

都市型コミュニティの課題

社会学者の広井良典は、都市型コミュニティを、「個人の独立性が強く、またそのつながりのあり方は共通の規範やルールに基づくもので、言語による部分の比重が大きく、個人間の一定の異質性を前提とした関係性」といいます。都市型の社会は、住民の流動性の高さ、地縁組織の弱体化、高度な匿名性などをはらみ、前述のような私的空間の独立性が高まるにつれ、個々人の生活がより見えづらくなる傾向にあります。
こうした地域社会の見えない場所に存在する精神面・身体面・社会面の複合した生活課題は、行政機関や医療・福祉の支援機関などのいわゆる公的機関のみでは把握して対応することが難しく、また、部署ごと高度に業務が分かれた行政組織の中では、制度の狭間に落ちて必要な支援が届かないケースもしばしば生じます。

厚生労働省は、2016年7月、「地域共生社会」という新しい地域福祉の概念を公表し、大臣直轄でその実現に向けた検討をスタートしました。地域共生社会は、「高齢者・障害者・子どもなど全ての人々が、一人ひとりの暮らしと生きがいを、ともに創り、高め合う社会」と定義されています。理想的なあり方のように思えますが、個々人の生活がより見えづらくなった都市型のコミュニティにおいて、「ともに創り、高め合う社会」をいかに構築するのかという根本的な課題は棚上げされたまま、理念だけがひとり歩きしている感もあります。
そこで、都市型コミュニティでは、まずは多様な人々が顔を合わせ、互いを知る時間、空間の創出が必要ではないかと、大学施設を地域に開放し、コミュニティカフェを開催することになりました。
いわば、見えにくくなった援助希求を発見する「集いの場」を社会実験的に運営しようというわけです。なお、この社会実験は、本学の講義(サービスラーニングⅠ-C)、および国立研究開発法人科学技術振興機構・社会技術開発センター(RISTEX)「都市における援助希求の多様性に対応する公私連携ケアモデルの研究開発」の一部として実施されています(研究テーマ「公私の間における潜在的社会資源の発掘とみまもりモデルの構築」)。

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コミュニティカフェ実施報告

5月12日から隔週で全4回開催されるコミュニティカフェは、開催日が土曜日ということもあり、「どようびカフェ」と命名。たんに地域に開くだけでなく、多くの方の参加をうながすため、各回で異なるワークショップを学生とともに企画し、実施することになりました。各回のワークショップテーマは以下の通りです。

第1弾(5月12日) ガラスタイルでコースターづくり!

第2弾(5月26日) 化学にふれよう!スライムをつくろう!

第3弾(6月9日) 本が読みたくなる!楽しいしおりづくり!

第4弾(6月23日) おもしろマラカスづくり!みんなでシャカシャカ♪

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どうようびカフェのポスター

いずれも工作系の内容となっており、家族で参加できる企画です。これまでに2回(5月12日、5月26日)開催されていますが、各回80名前後の来場者を数えています。
ガラスタイルコースターづくりは、ガラスタイルを並べ目地材で仕上げるもので、大人から子どもまで、楽しんでデザインを行っていました。スライムづくりは、洗濯のりとホウ砂を用い、化学の実験感覚で実施したところ、子どもだけでなく、「懐かしい」という声とともに年配の方も楽しんでいました。カフェ全体の来場者の顔ぶれを見てみますと、小学生、未就学児を連れた親御さんの参加が多く、なかには友達同士参加する子ども達もいました。また、近隣に住む一人暮らしの高齢者も数名ですが来場くださり、まさに、多世代が集う場となっています。

私たちがコミュニティカフェを通じ目指すのは、多様な人々が顔を合わせ、互いを知る「集いの場」の創出です。これまで、「多様な人々が顔を合わせる場」という最初の課題はクリアしつつありますが、次の課題は「互いを知る場」の創出です。来た人同士のコミュニケーションを生み出す仕掛けを考え、この課題にトライしたいと思います。

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2018.06.07