寺院における新型コロナウイルスによる影響とその対応に関する調査②

著者
大正大学地域構想研究所 研究員
小川有閑

前回のレポートで、BSR推進センターで実施したウェブ調査「寺院における新型コロナウイルスによる影響とその対応に関する調査」について、その背景、目的を述べさせていただいた。単純集計の結果は当研究所のホームページに掲載しているが、センターで発行している月刊『地域寺院』52号(9月号)・53号(10月号)にて、地域別等の分析を加えた報告をしたので、2回に分けて本レポートに転載したい。

儀礼簡素化は首都圏に顕著

「(1)葬儀についてどのような変化がありますか」では、517名中458名が「会葬者の人数が減った」という選択をした。これだけでも88.6%と高い割合だが、その他(自由記述)で、「期間中に葬儀を行っていない」という回答が24件ある。実際に葬儀を行ったのは493名と考えれば、92.9%にまであがり、全国的にいかに少人数化が起きているかが分かるだろう。

地域差が大きく見られたのは「一日葬など葬儀の簡素化」だ。全国では41.0%と過半数に達しないものの、東京では79.4%と高い割合を示している。ある程度、まとまった数字で地域差を比較するため、特定警戒都道府県に指定された首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉で128名)と関西圏(大阪、京都、兵庫で73名)で比較をしてみると、首都圏が73.4%、関西圏が23.3%と50%もの大差がつく。東京を筆頭に首都圏では一日葬などの簡素化が顕著な一方で、関西圏など多くの地域ではコロナ禍による簡素化は微増レベルだった。ちなみに、東京の回答者63名中、浄土宗が31名と半数近くを占めているため、浄土宗・非浄土宗の割合を出してみたが、そこに差は見られず、宗派は関係なく地域性によるものであることを付言しておく。

以前から、首都圏では、直葬や一日葬など葬送儀礼の簡素化が増えていることが指摘されていた。今回のコロナ禍がそれを加速させたという見方が成り立つものかもしれないが、要因としては僧侶側にあるというよりは、葬送業者や喪主家族の意向が大きく影響したものと考えられる。都内の火葬施設が葬儀業者に一日葬や無会食を勧奨したり、立ち合い人数を制限したりしたという話も聞く。愛媛で葬儀の場でクラスターが発生したというニュースやもし感染者が発生すれば2週間の営業停止というリスクを考えれば、葬送業界のそういった対応もやむを得なかったことと思われる。首都圏の感染者数を見て、喪主家族や会葬者が不安を抱くのも自然なことだ。これらの様々な要因が絡み合っての簡素化であるから、今後の推移を注視していきたい。

東西の法要文化の差か?

「(2)法事についてどのような変化がありますか」では、「法事自体の中止や延期」、「参列者の人数が減った」、「法事後の会食の減少」のいずれも高い割合を示した。全国と東京を比較してみても、やや東京で「中止や延期」が上回っているものの、ほぼ差は見られない。

特定警戒都道府県(北海道、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、石川、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡)とその他都道府県でも同様であったが、首都圏と関西圏では「参列者の人数が減った」で11%、「法事後の会食の減少」で32%の差が出ている。これは、寺で行うのか、月参りなど檀信徒宅で行うのかによっても、そもそもの人数が違うであろうし、月参りであれば基本的に会食はない。詳細が分からないので推測の域を出ないが、法要の行われ方の違いが影響していることが考えられる。

 
「(3)葬儀や法事の際に特別にとっている対応はありますか」でも、地域差が顕著な結果となった。まず、全国と東京の比較をすると、ほとんどの項目で東京の方が高い割合を示している。なかでも、「客間や本堂をこまめに喚起」、「間隔をあけて席を配置」、「玄関や本堂に消毒液を設置」、「法話の際に距離をとる」では10%以上も差があり、東京の寺院が感染対策に神経を使っている様子が伝わってくる。特定と非特定ではそれほどの差は見られなかったが、首都圏と関西圏では前項と同じく特徴的な違いが浮き上がる。

首都圏が10%以上の差をつけているのが、「客間や本堂をこまめに換気」、「間隔をあけて席を配置」、「玄関や本堂に消毒液を設置」、「参加者にマスク持参・着用の勧奨」、「法話の際に距離をとる」の5項目、逆に関西圏が10%以上高いのは、「マスクを着用しての勤修」、「法話をなくすなど時間の短縮」の2項目だ。これも、本堂で法要を行うことがほとんどの首都圏と月参りが盛んな関西圏との違いが表れている可能性が高い。

コロナ禍における月参りの強さ

「(4)現在、以下の檀務・法務・定例行事をどのように行っていますか」でも月参りの特徴を垣間見ることができる。全国的に、「定期的に行う行事」、「毎年行うイベント」は90%以上が影響を受けているのだが、「月参り」で影響を受けているのは、全国で40%にとどまっている。影響の中身も、「月参り」以外の2項目は「見合わせている」が「形を変えて行っている」より断然高い割合なのだが、「月参り」は両者が拮抗した数字となっている。つまり、新型コロナウイルスの流行を受けても、月参りの60%は通常通りの形、影響を受けている内の約半数もなんらかの形で実施をしているのだ。

人を集める葬儀や法要と違い、檀信徒宅でごく少人数で行う月参りは、ある程度の感染対策をすることで、継続が可能となるのだろう。外出自粛のなかで、月参りでの僧侶との会話を楽しみにしていた高齢者もいるだろう。減少が危惧される月参りだが、伝統的な親密なコミュニケーションの根強さを再確認できるのではないだろうか。

2020.10.15